歌庭 -utaniwa-

“ハナウタのように:ささやかで、もっと身近な・気楽な庭を。” ~『野口造園』の、徒然日記。

ばななの王国

2010年03月05日 | 読書 -books-
よしもとばななの『王国』三部作を読みました。

これ、
ばななさんの「ライフワーク長編」だそうです。

1作目は、なんと8年前。
それが、満を持して、3作同時に文庫化したばかり。

一気に読みました。



元々、学生時分から よしもとばななの小説は
だいたいは、好きで、
だいたいは、欠かさず読んできていると思います。

ただし、
いつも文庫化待ち。文庫になってから。

ちなみに エッセイのほうは、読みません。




ばななさんの小説は、

どっちかっていうと、スピリチュアル系に属すると思われます。後になるにつれ。

それに、物語の語り口も登場人物も 平易なんだけど、ちょっと変わってるので、
好き嫌いもあるだろうし、
当たり外れもあります。
全部が全部良い!って思うわけじゃありません。これはノグチの意見ね。


また、

ばななさんの小説は、どういうわけか、
読み終わってしまうと、話の内容をすっかり忘れてしまいます。
誰がどうしたこうした、っていう、話の中身:シチュエーションや、展開が、
すぽっ、と消えるんです。
登場人物の名前とかも。

読みながら頭で描き 見えていたはずのシーンも、
後になると、ほぼまったく憶い出せない。不思議と。


だけど、

読み終わった直後の

「読んで、よかった。」あるいは「うーん、違った。」

という
単純な“想い”だけが、残るのです。「読後感」というものでしょうか。


ただし、
これは、自分だけのことかもしれません。

そもそも自分の場合、本というものは、だいたい、
一回しか、通して読みません。二度三度と、同じ物を読みなおすことは滅多に無い。

そして、
ばななさんの作品は よりにもよって、
時間をかけずに さらーっと一気に読めてしまうように出来ているので、

物語の世界に浸る時間も、そのぶん、短くなるのです。

長篇の大作などを、何日もかけて、とぎれとぎれで読んでいると、
読み終わるまでの間は、しばらく、囚われますよね?
「ああ、この後どうなっちゃうんだろう、、続きが気になる、、」って。
それで、
現実生活でも なんとなくぼーっとしちゃって、浮き足立つくらい、
その世界に浸り切ってしまう。特に自分は、そう。


ばななさんの場合は、だから、
その「溜め期間」がほとんど無いわけので、
だからかもしれない、
すっぽり忘れてしまうのは。


でも、だからって、
ダメってわけじゃないんですよ。

だいたい、「よかった。」が、残るんです。

そして
「うーーん、違った。」も、たまにあるけど。




で、
今回、新しく出た、『王国』三部作。

上述の通り、延々と”文庫化待ち”をしていたので、
第一部の単行本が世に出た 平成14年から、
第二部、第三部と出ているのを尻目に、
全然、読んでなかった。

「なんで『王国』だけ、いつまで経っても文庫にならないんだろう、、」と、
待たされ待たされ、

ここまで来て、

忘れた頃に、

やっと 出逢えたわけでした。

それもまあ、
ものの2日で、一気読み。
(合計すると、12時間にも満たないんじゃないだろうか。)



それで、
さっき僭越ながら「当たり外れがある」って申しましたが、


この『王国』は、


大当たりでした!


野口的には、ですが。

そして今回は珍しく、かなり内容もちゃんと覚えてます!登場人物の名前も。
長編だったせいもあると思うけど。読み上がり直後だからってのもあるけど。


ちょっとだけざっくり、話のさわりだけを言うと、

山で 魔女的なおばあちゃんと暮らしていた雫石(しずくいし)っていう女子が(変すぎる名前です)
あるきっかけで 都会に降りて来るんですが。


山での生活の感覚とか

自然との付き合いかたとか

モノとの付き合い方とか

あと
現代の都会の生活で「ん?」って首を傾げる点だとか

随所に出て来る スピリチュアルっぽい台詞なども

結構 高確率で「あー、わかる!」っていう感じで、
入って来たんです。

このブログでも書いているような想いと 合致するようなことがあったりして。

今までのばなな作品の中で、一番自分に近づいてくれたものだった気がします。
(なんか、上から目線的な言い方ですが)


例えば、
一応 “恋愛関係”を軸に語られたフレーズでありながら、
でもそうじゃない、仕事の関係、あるいは友人関係とかにも 当てはまるような
ハッとする名言があったりとかで、

とにかく、

“今の自分”に すんなりフィットするキーフレーズだらけだったのです。
(この、“今の自分”っていうのが、たぶん重要。8年前じゃ、まだまだだったはず。)

それで、
読みながらもう、
「これは、私のための物語だ。」なんて、何度も、うっかり、思い込めたほど。
「ばななさん、よくやった。」って、なんでか上から目線。


なんせね、
「庭」や「山」や「都市への違和感」なんかが出て来るんですもの!





人との出会いが一期一会であるように
『本との出会いも一期一会』と言いますが。

ほんとに、そうですね。

その瞬間だからこそ出逢えた ということに、
すでに意味がある。


たまたまその日、ちょっとお金もあって、
気持ちも、新しいことを求めて、上昇気味で、
でもたしか本当は、全然別の本を探しに 本屋に入ったはずだったんだけど、

向こう(本)も たまたま
新しく刊行されたばかりで 店先に広くどどーんと並んでたから、


運良く、ばったり 出逢えた。

「今の自分にぴったりだ、これ!」
っていう、絶妙なタイミングで。

たぶん
このタイミングを逃すと、どんな良作でもしっくり来ないっていう、
残念な出会いに終わってしまう場合もあるから、


まったく、ラッキーでした。
すれちがいにならなくて、よかった。


何か 答えが欲しいときは

外の世界に ちゃんと体を向けて
「自分はこういうものを望んでいる」という意思の目を光らせて、
能動的に 動けば動くほど、

ちゃんと答えは、返って来たりするもんだ。

スピリチュアルだね。





そして素敵なポイントがもう一点。

この『王国』の三部作は、全部足しても、1、048円!
良心的!


そういえばこのところ、とかく売り払う方、捨て去る方に
専念してた気がするけれど、

久しぶりに、ちゃんと“お買い求め”した本でした。

そして、良い出会いだった。
大事にしようと思います。




自然との付き合い方とか

人との付き合い方とか

仕事との付き合い方とか

都会、街との付き合い方とか

そういうものに ひとつ明るい道筋が欲しい人は、
読んでみて、損は無いと思います。下手なハウツー本とかより良い。
安いし!
野口は、おすすめします。


もちろん、趣味の違いとかあるから、私個人の意見ですが。

でも、「物語」というかたちで産み落とされたものは、
色んな普遍的なキーワードが含まれているから、

こちらにその意思さえあれば、何かを感じ取ることは出来るし、しやすいと思います。

よほどの駄作でない限り。(←辛口)





ネットで調べると あらすじとかも うっかり目に入って来てしまうので、
できれば、
本屋さんに行って、裏表紙の概要も見ないで、おそらく並んでるであろう三冊、
ぱぱっと重ねて、
一気にレジに行く事をおすすめします。



『王国 その1:アンドロメダ・ハイツ』




『王国 その2:痛み、失われたものの影、そして魔法』




『王国 その3:ひみつの花園』





そうそう、

今日は20度まで行くあたたかさでした。

突然あたたかすぎて、沈丁花だの、排気ガスだの 工事のけむりだの、
ペンキの香りだの、洗剤の芳香剤のにおいだの、
ファーストフードだの、

いろんなにおいがごっちゃになって、おかしな濃度になってた。


でも、
あたたかくって、よかった。





金色のライブ(本編)

2010年03月05日 | 遊興 -pleasure-
ずいぶん時間が経ってしまった気がします;

忘れた頃に、書きますよ。満を持して。

 *

先日。
下北沢の音楽食堂:"mona records"の とあるライブイベントに行きました。

先日、というか、、
「書く。」と宣言した予告編から、、えー、

なななんと、
2週間も経ってました!、、、時の流れ速すぎ!

いよいよ本編です。





下北沢の駅に ほど近い、
カフェとインディーズのレコードショップが付いてる ライブハウス。





今回お誘いしてくれたのは、

壱零base(イチゼロベース)こと、、十兵衛さん。

折しも、
まさにひと月後の、4月4日。

十兵衛さん主催のライブイベント:“ludens" にて、
不肖野口造園、
「庭的空間演出」をすることになってまして。
(詳しくは、右の→【NEWS】の→ “ludens” をクリックしてみてね。)



この前も、会場の曼荼羅で、打合せして来たところです。

とてもドキドキ。
なんせ、「歌庭:野口造園」のやりたい道・ど真ん中のことを、やらせて頂けるので。
十兵衛さんのメーリングリスト配信のたびに、どんどんハードルが上げられていて、ヒヤヒヤしていますが;
いや、とにかくやるしかないね!
喜びと、緊張と、冷静と、情熱のあいだ、的な気持ちで。

よかったら、4月最初の日曜の夜、ぜひ来てみてね!

お力添え役、頑張ります。


以上、告知。




さて、話は2週間前に戻りまして。


壱零baseさんは、
一説には「弁慶」と呼ばれる、まさに武士(サムライ)のような物腰の方ですが

その正体は:
「ハンマード・ダルシマー」という、
変わった楽器の、演奏家さんです。可愛いお子さんもいらっしゃる。
ちなみにそれ以外のデータは ほぼ謎。


このハンマードダルシマーっていう楽器、ピアノの祖先だそうですが、
チェンバロのような。琴のような。
これまた変わったバチではじいて、奏でます。

これがまた、
綺麗な音なんです!

メロディ云々以前に、ポン(というか、ビュィン、)と弾かれた瞬間に 立ちあらわれる
その“音”自体が、もはや、
耳慣れない不思議な感じで、でもなんか、すっと入って来る親しみ易さがあって。

その一瞬で、持ってかれます。心を。
それは、楽器本体の力なのか。
いくら説明してもわからないと思うので、ぜひ聴いてみてほしい。





最初に耳にしたのが、
"秋田 森のテラス"のオープニング祭でした。

出番前に、5月の春の、池のほとりで、
カエルの合唱と共に弾いていた、その音。
あまりにもしっくり 池の中、風の中に しゅーっと融けていくその音に、
とてもビックリして、
その時ばかりは しばし、立ち止まってしまったのを覚えています。


その時お世話になって以来、ちょこちょこどこかしらでお会いする機会が重なり。

森のライブで再会したりとか。

そして、

、、今に至る。

、、っていう、ご縁でございます。




十兵衛さんのブログにもあるように、


すとんと 容赦なく真っ暗になって、

ライブは始まりました。




背景に映し出された 空。

そこに、端から

ふら~~っと現れた ローマ字。


ふらふらと、浮遊する 文字。


(何だろう、何だろう、、、*)って、
この時一番ドキドキした。


 . . . t r  i  b e  w h  o   p .. .


謎のホイッスルや オルゴールや
ロケット発射の合図の声や
謎のプチテレビや
謎の電子機器も多用して

不思議な音空間が くるくる展開されていく。

舞台は 暗黒と ほのかな金色の 明滅を 繰り返す。



暗黒と。




明滅を、繰り返す。


外の闇より真っ黒い 四角い線に切り取られた闇。

赤い玉。

昼の空のはずだけど 不思議と翳りがあるように感じる、蒼い空を、背景に。




音は
壱零baseのHP、あるいはその周辺で試聴できるはずなので、これはぜひ聴いてもらいたいのですが


私はいつも、
「風だ。」と想うんです。
池のほとりの第一印象が、影響してるかもしれないけれど。


金色の風が、
キラキラした静かな水色の上を すーっと通り抜ける感じが、
いつも、見える気がするのです。


ああそうだ、
カリンバ。あれに近い。

指で弾いて鳴らす、小さな鉄琴ピアノみたいな、アジアっぽい楽器。
カリンバに、似てるかもしれない。










音楽は




目に見えないし

撮る事も出来ない

掴む事も出来ない

けれど

確実に
何かが心に残る。

それは、

「風」と同じ。


ハンマードダルシマーの音は、
まさにそれ。
「風そのものを体現している、音」。そんな感じ。




なんていうか

とにかく いま ここにあるこの音に 純粋に シンプルに浸れさえすれば
もう完璧だ。と思えた。


「とりあえず 全身 この音に委ねてしまえばいいじゃない。」と

「説明する言葉も別にいらないし、見なくても、いいじゃない。」

って、思ったので、


眼鏡をはずして、ふうー、と ひとつ呼吸して、

眼を瞑ってみた。






そしたら 

やっぱり 心地好かった。

ただシンプルに、ストレートに。
音に心身をゆだねられたら、良い。

色々な御託は、別に要らない。


そういう、
シンプルな気持ちになった。


まさに
池のほとりに 静かになびく風に吹かれて、

さわさわそよぐ初々しい緑を、ただ、とろんとした目で、眺めているような。

そんな心地に。



そしたら、

なんか、目からウロコがはらはら剥がれ落ちて行くような感覚があった。


ここら辺の心中に起こったことの連関については、うまく説明できないけれど、
みるみるうちに、色んな事のつじつまが符合して行く感じがあった。

あえてあんまりわからないかもしれないけれど 率直なその時の感じを言い表すと、

「あーー!わかった!」っていう感じ。




「自分は『歌庭』をつくるんだ。」

っていう、
いまさらながらの、再認識の瞬間でした。





それで、
何か、未来への道筋の標識を見つけたような
知恵のかけらみたいなものを手にしたときのような
その「悟り」に近い瞬間特有の、
ものすごい ほっとしたような、幸せな気持ちに浸りつつ


いよいよ、
次回のライブは四月四日で。、、ってことになります。


この夜のMCで、これまただいぶ、ハードル持ち上げて下さいまして、

もうどうしようか、ほんとに、本気で、凄い事しなければ、やばい;
正直、ひえー;って、想うけども。

いやしかし、
目標の到達地点が高ければ、そのぶん背伸びしよう、ジャンプしようと頑張れるから、
有り難いっス。レベルアップのチャンスでもあります。
頑張りますっス。


ということなので、
良かったら、いったいどういうことになるか、見届けに来て下さい。


「野口造園」がいったい何をCREATEしたいのか、
「歌庭」って何なのか、
っていうのが、お目にかけられることと思います!



、、って、
自分でもハッパかけてみる。


ほんとは半分わかったようで、半分わかってないんだけど、きっと。





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