HIROの のはらうた

2012/7/31からブログを始めました。

17/17/12 「蜩ノ記」葉室麟

2017-01-12 | 本・映画・能楽・美術館など
幽閉先での家譜編纂と十年後の切腹を命じられた男。命を区切られた男の気高く凄絶な覚悟とは…

「ひとのことは、あれこれ言うもんじゃなかろうが。…」

「疑いは、疑う心があって生じるものだ。弁明しても心を変えることはできぬ。心を変えることができるのは、心をもってだけだ」

(この家族には疑うという気持ちをもった者がいない。だから、家の中に清々しい気が満ちているのかもしれない)

遠くで鳥のさえずりが聞こえて、心が伸びやかになるような日和だった。

「…縁で結ばれるとは、生きていくうえの支えになるということかと思います」

ひとは心の目指すところに向かって生きているのだ、…
 
不意に蜩が一斉に鳴き始めた。


切腹の儀が取り止めになるようにと、祈るような気持ちで読み進みましたが…
涙がこぼれました。