森鴎外の歴史小説。
良かったです。
…平安や江戸の昔を描く中で、時代を超えて変わらぬ人間のありようを浮かび上がらせてくれます。一方でまた、過去の時代の価値観の中に生きる人々の姿を描くことで、人間の生き方には、現代人が通常思い描くのとは異なる形がありうるのだ、ということも示してくれます。
解説
最後の一句…いちの「献身」の思いを。
山椒大夫…安寿の「決意」と「知恵」を。
高瀬舟…安楽死は殺人か、罪なのかという疑問。…遠島刑が、極貧の生活しか知らず居場所もなかった喜助には、むしろ喜びであるという逆転。
実家に帰ったときにタクシーの運転手さんが、町の中にある小さな刑務所の前を走りながら「この刑務所に入りたくて罪を犯す人が多くて困っているみたいですよ…」と言われていたのを思い出しました。
江戸時代後半のお話ですが、今も同じです。