ひろい かわの きしべ
八木倫明 文
葉 祥明 絵
国土社
今日は絵本を1冊ご紹介します。スコットランドの民謡「THE WATER IS WIDE」の詩を、ケーナ奏者の八木倫明さんが日本語に訳し、葉祥明さんが絵を描かれています。数年前に放送された連続テレビ小説「花子とアン」の中で、カナダ人宣教師のスコット先生が歌った歌で、これをきっかけに日本でも良く知られる歌となりました。八木倫明さんはもっと前からこの歌を日本語に訳し、ご自身のコンサートでもよく演奏されていたそうです。私も大好きな曲で、オカリナでも良く演奏します。葉祥明さんの静かで美しいパステル調の絵と一緒に、原文と日本語訳の詩を楽しんでみてください。、
「スラムにひびくバイオリン」
ゴミを楽器に変えたリサイクルオーケストラ
スーザン・フッド 作
サリー・ワーン・コンポート 絵
中家多恵子 訳
汐文社
パラグアイのカテウラという街のスラム街にすむ子どもたちに、楽器を教え、それがオーケストラへと発展していく様子をわかりやすい言葉と絵で表した絵本です。子どもたちが演奏しているのは、ゴミを材料にして作った楽器ですが、動画などで聴いてみると、なかなか良い音がするようです。缶とフォークと木枠の箱の板で作ったバイオリン、雨樋でできたサックス、水道管のフルートなど、高価な楽器でなくても音楽はできるんだということを、私たちに思い出させてくれます。
子どもたちがトラブルに巻き込まれないように、との思いからはじまった音楽教室は、やがて大きなオーケストラへと発展し、子どもたちが自分に自信を持って生きるという力へと繋がっていきます。音楽って素晴らしい!
「羊と鋼の森」
宮下奈都
文藝春秋
もう読んだ方もいらっしゃるかもしれませんが、2016年の本屋大賞も受賞した小説をご紹介します。ピアノの生徒さんが「おもしろくて一気に読んでしまった!」と言われていたとおりに、興味が停滞することなく最後まで自然に読んでしまいました。
高校の体育館でピアノの調律をしているのを見て(聴いて)、ピアノの調律に魅せられた高校生が調律師になり、調律師として、また人間として成長していく姿が描かれています。あっと驚くようなエピソードや意外な展開などはないのですが、登場人物の誰もが本当に存在していそうな人たちばかりで、本当にあった話しを読んでいるような感じでした。調律師さんが書かれた本も何冊か読んだことがありますが、それらの本と通じるところがあったような気がします。
調律師の話しが、なぜ「羊と鋼の森」という題名なのかは読んだらすぐにわかりますよ。
終わらない夏
小澤征良
集英社
今、読み終えたばかりの本をご紹介します。著者の小澤征良さんは、世界的指揮者である小澤征爾さんの長女です。小澤征爾さんがボストン交響楽団の指揮者をしていた頃、夏は毎年タングルウッド音楽祭のため、家族でタングルウッドの家で過ごされていたそうです。征良さんが小さい頃から大人になるまで毎夏を過ごした、タングルウッドでのきらめくような思い出の日々を綴ったエッセイです。子どもにしか感じることができないであろう数々の感情、子どもの目からみた普通のパパとしての小澤征爾さん、タングルウッドで出会ったたくさんの楽しい人々、大人になってからみつめるタングルウッドへの思い、それらがピュアな感性で綴られていて、読みながら胸がいっぱいになってしまいました。
エッセイなので、気軽に読むことができると思います。市立図書館にもありますので、ぜひ読んでみてくださいね。