私たちが日頃なにげなく使っている言葉で、雅楽用語からきた言葉が結構たくさんあるそうです。「ほぅ、なるほど」と思うような言葉があっておもしろかったので、少しご紹介します。いずれも「雅楽ー僕の好奇心」(東儀秀樹 著 集英社新書)より引用させていただきます。
打ち合わせ
平安時代から江戸時代まで京都、奈良、大阪(四天王寺)には、楽人のための「楽所(がくそ)」があり、それらの総称を「三方楽所(さんぽうがくそ)」とよんだ。三方の楽人たちが宮中に召されて演奏する際に、微妙な演奏法の違いを調整するために、前もって打楽器から約束ごとを取り決めた。つまり、太鼓類などの打ち方を合わせることから「打ち合わせ」という言葉ができたという説がある。
また、楽人たちがリハーサルを行うときに、管楽器、絃楽器の順にあわせていき、最後に打楽器(打ち物)を合わせるということからできた言葉だという説もある。この最後の全員が揃う、打ち物も加わったリハーサルのことを、「打ち合わせ」というのである。
オツ
渋くてカッコイイことを「オツだねぇ」といったるする。雅楽では高めの音を「甲音」と呼ぶ。たとえば、朗詠の「二ノ句」の歌い出しの高い音は甲音で表記される。この甲音に対して、低めの音を「乙音」と呼んでいる。音が低い、声が低いということは「渋い」という意味にも使われていたらしく、「おっ、渋いねぇ」が、「オツだねぇ」という表現に転化したらしい。
頭取
銀行の頭取という名称も、雅楽用語が語源となっている。管絃の演奏の各パートのリーダー(主奏者)を「音頭(おんどう)」というのだが、(リーダーとなって)音頭(おんど)を取るといういい方はそこからきたものだ。頭取は、その音頭取りからきている。
左ぎっちょ
雅楽に「打球楽」という曲がある。平安時代に、ゴルフのように棒で球を打つ貴族の遊びがあったのだが、それが様式化されて「打球楽」という舞になったのである。本当にゴルフのドライバーのような形をしたばちを持って舞うのだが、そのばちのことをギッチョウ(毬杖、球杖などと書く)と呼ぶ。右手に持って舞う決まりになっているギッチョウを、ある日、舞人のひとりが左手に持って舞ってしまった。「おまえ、それは左手にギッチョウじゃないか」とみんなに指摘され、以来、左利きを「左ぎっちょう」ー「左ぎっちょ」と呼ぶようになったといわれている。
他のもまだまだたくさんあるようですが、興味のある方は本を読んでみてくださいね