8月9日(アメリカ時間)米国防総省は突然、重大情報を発表した。
普天間基地に配備予定(現在は岩国基地に仮配備中)のオスプレイMV22の事故件数を。初めてA・B・Cの3クラスに分けた数値を公表した。これまで公表してきたのは重大事故(具体的には10万時間飛行したときの死者を出すなどの事故)を意味する「Aクラス」だけで、海兵隊が運用する他の9機種の平均事故件数の2.45件に対しMV22オスプレイは1.93件として、オスプレイの安全性を強調してきた。
だがNHKが7月26日に放送した『ニュース7』で、米国防総省がひた隠しに隠してきた3クラスに分類した事故件数(その重大情報をどうやって入手したかは不明)を明らかにしていた。結果から言うとNHKが入手し、報道した3クラスに分類した事故件数を米国防総省が「追認」したことになる。改めて米国防総省が公表した事故件数をこのブログで記載し、さらに同省の「公表」に隠された計算と欺瞞性を暴いてみたい。あらかじめ言っておくが、こうした視点で米国防総省の計算と欺瞞性を指摘したマスコミは皆無である。日本のジャーナリストたちがいかに無能であるかを結果的には明らかにしてしまうことになるが……。
まず米国防総省が公表した内容を明らかにしておく。
「Aクラス」(死者や200万ドル以上の損害を出したケース)
オスプレイ:1.93件 海兵隊平均(オスプレイを除く9機種):2.45件
「Bクラス」(負傷者に重い後遺症があるか損害額50~299万ドルの損害を出したケース)
オスプレイ:2.8件 海兵隊平均:2.07件
「Cクラス」(軽傷者が出るか損害額5~50万ドルの損害を出したケース)
オスプレイ:10.46件 海兵隊平均:4.58件
実は昨夜読売新聞の読者センターの方に(これから述べる)私の考えを申し上げたところ、担当者は「うーん。……おっしゃる通りだと思います」とお答えになったので、「読売さんの記者はまだ誰も米国防総省の計算と欺瞞性にお気づきではないようですね」と言いつのった。「そのようですね」と誠に正直にお答えになったので「つまり記者としては失格だということですね」とまで挑発してみたが、返ってきた答えは「その通りだと思います」だった。そこで私が米国防総省の欺瞞性を暴いてみることにしたというわけである。
まず最初になぜ米国防総省は重大事故の「Aクラス」の事故件数(10万時間飛行した場合の平均値)だけを公表したのか、という問題を考えてみよう。この「Aクラス」の事故というのは死者を出すか200万ドル以上の損害(金額的損害基準については当初は公表していなかった)を出したケースである。損害額については私にはまったくわからないので、以降問題にしない。人的被害の基準についてのみ追及していきたい。というわけで死者を出すような飛行機事故とはどういうケースなのだろうか、をまず考えてみた
①墜落した場合 ②飛行中に、例えば燃料が漏れて引火し空中爆発したような場合の二つが主要因だろう。
民間機と違いテロリストによる爆破は軍用機の場合、考慮に入れる必要はないだろう。
ではオスプレイの場合、墜落してもなぜ乗員の死亡者率がさいのか。これはユーチューブでオスプレイの飛行状態の動画を見ていただきたいが、翼の構造とプロベラが設置されている場所が、ヘリコプターとも普通の飛行機(プロペラ機、いまどきプロペラ機なんか軍用機としては使用されていないと思うが)とも違うのである。オスプレイは上昇するときにはヘリコプターと同様プロペラが上を向いて回転する。ただしヘリコプターのプロペラが操縦席のほぼ真上に設置されているのに対し、オスプレイの場合は2基の小さめのプロペラが翼の左右の先端に設置されている。上昇中の動画では翼の構造が分かりにくいが、上昇を終えて飛行状態に入るときにオスプレイの翼の独特な構造がよくわかる。つまり翼が3体構造になっていて主翼の両端にそれぞれ副翼がついていて、上昇時には主翼と一体化していた(つまり地面に対して水平であること)2枚の副翼が、飛行状態に入るとき前方方向に90度傾いていくのだ(つまり地面に対して垂直になること)。そしてオスプレイのプロペラはこの両端の副翼に固定されているため副翼と一緒に向きを飛行方向に変えていくのである。だから墜落が免れないという状況に至ったときは急きょプロペラを上向きにすることによってヘリコプターの不時着と同様の着地が可能になったのである。墜落しても死亡者が少ないのはそのためなのだ。
米国防総省はオスプレイにこうした構造を採用することによって、墜落時の乗員の安全性を向上させたのである。現に今年起きた2件の墜落事故で乗員がどのような損傷を受けたかを検証してみよう。
①4月11日、モロッコの南方沖海上で訓練飛行していたオスプレイが、強襲揚陸艦イオー・ジマから離艦し、モロッコの演習所に海兵隊員を下したあと帰艦する際艦上に墜落し、全乗員4人のうち2人が死亡、2人が重傷を負ったケース(Aクラスの事故)。
②6月18日米フロリダ州で訓練中のオスプレイが墜落、乗員5人が負傷したケース(Cクラスの事故)。
海兵隊が所有するオスプレイを除く9機種のうち何機種がジェット機かはわからないが、7~8機種がジェット機と考えられる(ヘリコプターなどジェット機以外の飛行機も所有しているため)。ジェット機の場合、墜落したらまず乗員全員が死亡する、命が助かるケースは乗員が機体を放置してパラシュートで脱出する以外あり得ない。もちろん何らかの理由で空中爆発した場合はオスプレイも含め全機種の乗員全員、命は助からない。それなのに米国防省は乗員が死亡したケースのみをAクラスに算入し、②のように全員が負傷(重症の場合はこういう表現は使わない)で済んだケースはCクラスにカウントされてしているのだ。
ではなぜ事故の重大性についてこのようなアンフェアなクラス分けをしたかというと、米国内でも「オスプレイはまだ未完成だ」「極めて危険な飛行機だ」といった批判が後を絶たず、オスプレイの「安全性」を強調するため、あえて乗員の死亡件数を他の飛行体と比較して、乗員の死亡件数、事実上の死亡率(あくまで乗員であって、例えば市街地に墜落して一般市民に多くの死傷者を出しても、乗員さえ無事ならばAクラスに算入されない)だけをカウントするという姑息な手段をとったのだ。そうした姑息なやり方に蓋をするため、BクラスとCクラスの事故件数を極秘扱いにしてきたのである。
ところが、NHKがこの極秘情報を入手し、すでに述べたように7月26日の『ニュース7』で暴露してしまった。つまりオスプレイと他の飛行体の事故件数をA、B、Cの3クラスに分けてカウントしてきた米国防総省の秘密情報を暴いてしまったのである。ただそれぞれのクラスの事故の基準までは情報を入手できなかったようで、それぞれ「大規模」「中規模」「小規模」といった意味づけでアナウンスした。
このNHKの大スクープで頭を抱えてしまったのが米国防総省。NHKがスクープした数字が海兵隊か国防総省の内部(しかも幹部級しか知りえない極秘情報)から流出したとしか考えられず、(NHKが報道した内容が完全に正確なものだっただけに)米国防総省はやむを得ずB、Cクラスの事故件数も公表せざるを得なくなったというわけだ。が、そのことによって米国防総省の欺瞞性が一気に明らかになってしまった。
読売新聞は8月5日の朝刊2面の記事「オスプレイ 米、安全性に自信」という見出しの記事の中で、今年に入ってから生じた二つに事故(既述)について、米政府はいずれも機体の欠陥が原因ではないと見ていると書いている。
では事故の原因は何か。機体の欠陥でなければ人的ミスということになる。つまり天才的な操縦能力の持ち主でなければオスプレイを制御できないと言っているに過ぎない。ということはやはりオスプレイはまだ未完成の飛行機だということを意味する。
さらに事故のクラス分けを乗員の「死亡」「重い後遺症が出た負傷」「軽傷」の三つにしたこと自体、オスプレイの未完成度を証明していると言っていいだろう。本来機体の安全性をフェアな方法で確認するには、事故の内容を基準にすべきで、乗員が事故によって受けた身体的ダメージの大きさを基準にするべきではないのは当然だ。
たとえば同じ墜落事故でも原因はいろいろある。御巣鷹山で生じた日航ジャンボ機の事故を「墜落」と理解している人が大多数だが、事実は違うと私は考えている。すでに金属疲労を生じていた隔壁に亀裂が走り、客室の空気圧(ジャンボ機は空気が薄いかなりの高度を飛行するため、客室内の空気圧を高くしている)の圧力に耐え切れず隔壁が破壊し、機体のコントロールがまったくできない状態になってしまった。そういう状況の中で操縦士は冷静さを失わず、必死に不時着できる場所(平地)を探して操縦を続けたのである。しかし隔壁が破壊するというトラブル(これが事故の原因)によって通常の操縦が不可能になり、操縦士はついに山中への不時着を試みる。そして、結果的には4人の命を救うという操縦士の鏡ともいうべき手腕を発揮したのである。私はこの操縦士の命がけの操縦技術を高く評価しているし、日航はあまり公にはできないにしても後輩にあたる操縦士たちに彼がとった冷静な行動と操縦士魂を学ばせるべきだと考えている。
話がややそれたが、Aクラスの事故件数では他の海兵隊の飛行機より少ないのは当たり前で(現にオスプレイの場合墜落しても乗員の生存率が高いことはすでに検証した)、問題はBクラス、Cクラスになると事故件数が一気に増大しているという事実である。もし人的被害の大小で事故の重大性を区分したりせず、フロリダでの墜落事故も、乗員が全員負傷しただけだったとしても、墜落そのものが飛行機にとってはあってはならないことなので、機体にどういうトラブルが生じたかを事故分析の基準にすべきである。そのようにB、Cクラスに分類された事故件数のほうに算入されている墜落事故をカウントすれば、とうてい日本としては受け入れがたいという結論が出るはずだ。
森本のような論理的判断力を欠いた防衛相がたった一度オスプレイに試乗したくらいでオスプレイの安全性or危険性がわかるわけがない。防衛相として森本が米国防総省に迫るべきは、乗員の人的被害度で事故の重大性を分類した米国防総省のデータを一切認めず、3クラスすべてひっくるめて墜落事故はいったい何件生じたのか、その墜落率を海兵隊の他の飛行機と比べたデータを出させるべきである。そしてすべての墜落事故の詳細な原因解明のデータの公開を求めるのが日本の防衛相としての義務であり責任であり、さらに言えば米国防総省に真実のデータ提出を要求する権利を行使すべきではないのか、
もちろん墜落だけが事故ではない。機体のコントロールが不可能になったケースの件数とその原因の解明結果も公開を迫るべきである。それが日本の防衛相としての最低の任務であり義務であろう。
普天間基地に配備予定(現在は岩国基地に仮配備中)のオスプレイMV22の事故件数を。初めてA・B・Cの3クラスに分けた数値を公表した。これまで公表してきたのは重大事故(具体的には10万時間飛行したときの死者を出すなどの事故)を意味する「Aクラス」だけで、海兵隊が運用する他の9機種の平均事故件数の2.45件に対しMV22オスプレイは1.93件として、オスプレイの安全性を強調してきた。
だがNHKが7月26日に放送した『ニュース7』で、米国防総省がひた隠しに隠してきた3クラスに分類した事故件数(その重大情報をどうやって入手したかは不明)を明らかにしていた。結果から言うとNHKが入手し、報道した3クラスに分類した事故件数を米国防総省が「追認」したことになる。改めて米国防総省が公表した事故件数をこのブログで記載し、さらに同省の「公表」に隠された計算と欺瞞性を暴いてみたい。あらかじめ言っておくが、こうした視点で米国防総省の計算と欺瞞性を指摘したマスコミは皆無である。日本のジャーナリストたちがいかに無能であるかを結果的には明らかにしてしまうことになるが……。
まず米国防総省が公表した内容を明らかにしておく。
「Aクラス」(死者や200万ドル以上の損害を出したケース)
オスプレイ:1.93件 海兵隊平均(オスプレイを除く9機種):2.45件
「Bクラス」(負傷者に重い後遺症があるか損害額50~299万ドルの損害を出したケース)
オスプレイ:2.8件 海兵隊平均:2.07件
「Cクラス」(軽傷者が出るか損害額5~50万ドルの損害を出したケース)
オスプレイ:10.46件 海兵隊平均:4.58件
実は昨夜読売新聞の読者センターの方に(これから述べる)私の考えを申し上げたところ、担当者は「うーん。……おっしゃる通りだと思います」とお答えになったので、「読売さんの記者はまだ誰も米国防総省の計算と欺瞞性にお気づきではないようですね」と言いつのった。「そのようですね」と誠に正直にお答えになったので「つまり記者としては失格だということですね」とまで挑発してみたが、返ってきた答えは「その通りだと思います」だった。そこで私が米国防総省の欺瞞性を暴いてみることにしたというわけである。
まず最初になぜ米国防総省は重大事故の「Aクラス」の事故件数(10万時間飛行した場合の平均値)だけを公表したのか、という問題を考えてみよう。この「Aクラス」の事故というのは死者を出すか200万ドル以上の損害(金額的損害基準については当初は公表していなかった)を出したケースである。損害額については私にはまったくわからないので、以降問題にしない。人的被害の基準についてのみ追及していきたい。というわけで死者を出すような飛行機事故とはどういうケースなのだろうか、をまず考えてみた
①墜落した場合 ②飛行中に、例えば燃料が漏れて引火し空中爆発したような場合の二つが主要因だろう。
民間機と違いテロリストによる爆破は軍用機の場合、考慮に入れる必要はないだろう。
ではオスプレイの場合、墜落してもなぜ乗員の死亡者率がさいのか。これはユーチューブでオスプレイの飛行状態の動画を見ていただきたいが、翼の構造とプロベラが設置されている場所が、ヘリコプターとも普通の飛行機(プロペラ機、いまどきプロペラ機なんか軍用機としては使用されていないと思うが)とも違うのである。オスプレイは上昇するときにはヘリコプターと同様プロペラが上を向いて回転する。ただしヘリコプターのプロペラが操縦席のほぼ真上に設置されているのに対し、オスプレイの場合は2基の小さめのプロペラが翼の左右の先端に設置されている。上昇中の動画では翼の構造が分かりにくいが、上昇を終えて飛行状態に入るときにオスプレイの翼の独特な構造がよくわかる。つまり翼が3体構造になっていて主翼の両端にそれぞれ副翼がついていて、上昇時には主翼と一体化していた(つまり地面に対して水平であること)2枚の副翼が、飛行状態に入るとき前方方向に90度傾いていくのだ(つまり地面に対して垂直になること)。そしてオスプレイのプロペラはこの両端の副翼に固定されているため副翼と一緒に向きを飛行方向に変えていくのである。だから墜落が免れないという状況に至ったときは急きょプロペラを上向きにすることによってヘリコプターの不時着と同様の着地が可能になったのである。墜落しても死亡者が少ないのはそのためなのだ。
米国防総省はオスプレイにこうした構造を採用することによって、墜落時の乗員の安全性を向上させたのである。現に今年起きた2件の墜落事故で乗員がどのような損傷を受けたかを検証してみよう。
①4月11日、モロッコの南方沖海上で訓練飛行していたオスプレイが、強襲揚陸艦イオー・ジマから離艦し、モロッコの演習所に海兵隊員を下したあと帰艦する際艦上に墜落し、全乗員4人のうち2人が死亡、2人が重傷を負ったケース(Aクラスの事故)。
②6月18日米フロリダ州で訓練中のオスプレイが墜落、乗員5人が負傷したケース(Cクラスの事故)。
海兵隊が所有するオスプレイを除く9機種のうち何機種がジェット機かはわからないが、7~8機種がジェット機と考えられる(ヘリコプターなどジェット機以外の飛行機も所有しているため)。ジェット機の場合、墜落したらまず乗員全員が死亡する、命が助かるケースは乗員が機体を放置してパラシュートで脱出する以外あり得ない。もちろん何らかの理由で空中爆発した場合はオスプレイも含め全機種の乗員全員、命は助からない。それなのに米国防省は乗員が死亡したケースのみをAクラスに算入し、②のように全員が負傷(重症の場合はこういう表現は使わない)で済んだケースはCクラスにカウントされてしているのだ。
ではなぜ事故の重大性についてこのようなアンフェアなクラス分けをしたかというと、米国内でも「オスプレイはまだ未完成だ」「極めて危険な飛行機だ」といった批判が後を絶たず、オスプレイの「安全性」を強調するため、あえて乗員の死亡件数を他の飛行体と比較して、乗員の死亡件数、事実上の死亡率(あくまで乗員であって、例えば市街地に墜落して一般市民に多くの死傷者を出しても、乗員さえ無事ならばAクラスに算入されない)だけをカウントするという姑息な手段をとったのだ。そうした姑息なやり方に蓋をするため、BクラスとCクラスの事故件数を極秘扱いにしてきたのである。
ところが、NHKがこの極秘情報を入手し、すでに述べたように7月26日の『ニュース7』で暴露してしまった。つまりオスプレイと他の飛行体の事故件数をA、B、Cの3クラスに分けてカウントしてきた米国防総省の秘密情報を暴いてしまったのである。ただそれぞれのクラスの事故の基準までは情報を入手できなかったようで、それぞれ「大規模」「中規模」「小規模」といった意味づけでアナウンスした。
このNHKの大スクープで頭を抱えてしまったのが米国防総省。NHKがスクープした数字が海兵隊か国防総省の内部(しかも幹部級しか知りえない極秘情報)から流出したとしか考えられず、(NHKが報道した内容が完全に正確なものだっただけに)米国防総省はやむを得ずB、Cクラスの事故件数も公表せざるを得なくなったというわけだ。が、そのことによって米国防総省の欺瞞性が一気に明らかになってしまった。
読売新聞は8月5日の朝刊2面の記事「オスプレイ 米、安全性に自信」という見出しの記事の中で、今年に入ってから生じた二つに事故(既述)について、米政府はいずれも機体の欠陥が原因ではないと見ていると書いている。
では事故の原因は何か。機体の欠陥でなければ人的ミスということになる。つまり天才的な操縦能力の持ち主でなければオスプレイを制御できないと言っているに過ぎない。ということはやはりオスプレイはまだ未完成の飛行機だということを意味する。
さらに事故のクラス分けを乗員の「死亡」「重い後遺症が出た負傷」「軽傷」の三つにしたこと自体、オスプレイの未完成度を証明していると言っていいだろう。本来機体の安全性をフェアな方法で確認するには、事故の内容を基準にすべきで、乗員が事故によって受けた身体的ダメージの大きさを基準にするべきではないのは当然だ。
たとえば同じ墜落事故でも原因はいろいろある。御巣鷹山で生じた日航ジャンボ機の事故を「墜落」と理解している人が大多数だが、事実は違うと私は考えている。すでに金属疲労を生じていた隔壁に亀裂が走り、客室の空気圧(ジャンボ機は空気が薄いかなりの高度を飛行するため、客室内の空気圧を高くしている)の圧力に耐え切れず隔壁が破壊し、機体のコントロールがまったくできない状態になってしまった。そういう状況の中で操縦士は冷静さを失わず、必死に不時着できる場所(平地)を探して操縦を続けたのである。しかし隔壁が破壊するというトラブル(これが事故の原因)によって通常の操縦が不可能になり、操縦士はついに山中への不時着を試みる。そして、結果的には4人の命を救うという操縦士の鏡ともいうべき手腕を発揮したのである。私はこの操縦士の命がけの操縦技術を高く評価しているし、日航はあまり公にはできないにしても後輩にあたる操縦士たちに彼がとった冷静な行動と操縦士魂を学ばせるべきだと考えている。
話がややそれたが、Aクラスの事故件数では他の海兵隊の飛行機より少ないのは当たり前で(現にオスプレイの場合墜落しても乗員の生存率が高いことはすでに検証した)、問題はBクラス、Cクラスになると事故件数が一気に増大しているという事実である。もし人的被害の大小で事故の重大性を区分したりせず、フロリダでの墜落事故も、乗員が全員負傷しただけだったとしても、墜落そのものが飛行機にとってはあってはならないことなので、機体にどういうトラブルが生じたかを事故分析の基準にすべきである。そのようにB、Cクラスに分類された事故件数のほうに算入されている墜落事故をカウントすれば、とうてい日本としては受け入れがたいという結論が出るはずだ。
森本のような論理的判断力を欠いた防衛相がたった一度オスプレイに試乗したくらいでオスプレイの安全性or危険性がわかるわけがない。防衛相として森本が米国防総省に迫るべきは、乗員の人的被害度で事故の重大性を分類した米国防総省のデータを一切認めず、3クラスすべてひっくるめて墜落事故はいったい何件生じたのか、その墜落率を海兵隊の他の飛行機と比べたデータを出させるべきである。そしてすべての墜落事故の詳細な原因解明のデータの公開を求めるのが日本の防衛相としての義務であり責任であり、さらに言えば米国防総省に真実のデータ提出を要求する権利を行使すべきではないのか、
もちろん墜落だけが事故ではない。機体のコントロールが不可能になったケースの件数とその原因の解明結果も公開を迫るべきである。それが日本の防衛相としての最低の任務であり義務であろう。