ついに米国防総省が墓穴を掘った。今年モロッコで生じた墜落事故(乗員2名死亡、2名重賞)の原因解明に取り組んできた米国防総省は昨日(15日)調査結果を日本に伝えてきた。私は昨日のブログ『緊急告発‼ オスプレイ事故件数を公表した米国防総省の打算と欺瞞』の中で読売新聞の記事を引用しながら、こう書いた。
読売新聞は8月5日の朝刊2面の記事「オスプレイ 米、安全性に自信」という見出しの中で、今年に入ってから生じた二つの事故について、米政府はいずれも機体の欠陥が原因ではないと見ていると書いている。
では事故の原因は何か。機体の欠陥でなければ人的ミスということになる。つまり天才的な操縦能力の持ち主でなければオスプレイを操縦できないと言っているに過ぎない。ということはやはりオスプレイはまだ未完成な飛行機だということを意味する。
しかも事故の大きさについて米国防総省はA・B・Cの3クラスに分けていながら、Aクラスの事故件数(10万時間飛行したときの平均事故件数)について、海兵隊所有の9機種の事故件数2.45件に対して、オスプレイの場合は1.93件にすぎないと発表し、あたかも他の飛行機に比べて安全度が相当高いかのごとき主張をしてきた。
しかし、NHKが7月26日の『ニュース7』で米国防総省や海兵隊幹部がひた隠しに隠してきたA・B・C 3クラスの、オスプレイと他の飛行機の「飛行時間10万時間での平均事故件数」をスクープ報道してしまった。すでに前回のブログで書いたが、NHKがスクープした事故件数は以下のとおりである。
Aクラス オスプレイ:1.93件 他の飛行機:2.45件
Bクラス オスプレイ:2.8件 他の飛行機:2.07件
Cクラス オスプレイ:10.46件 他の飛行機:4.58件
その数値が、それまで国防総省がひた隠しにしてきた数値とびったし合っていた。現在岩国基地に搬入されているオスプレイの最終配備地は普天間飛行場が予定されている。日本側の協力を得るためにはオスプレイの安全性を証明しなければならない。そのためにはNHKにすっぱ抜かれた事故件数を認めA・B・Cクラスに分類した基準も明らかにし、オスプレイの安全性をさらに強調しようというバカげた行為に出たのだ。
そのクラス分けの基準がいかにアンフェアなものであるかは、すでに前回のブログで詳述したので、改めて繰り返しはしない。ただ、自動車事故についてはどのように分析・究明されているかだけを、この機会に述べておこう。このことはモロッコ事故の原因究明を行った米国防総省の調査結果の、あきれるばかりのインチキさを証明するためにどうしても必要となる作業だと思うからだ。
自動車事故については基本的に3つの視点から分析・究明される。
①運転手に事故の原因を期すべきケース……例えば飲酒運転・居眠り運転・ブレーキとアクセルの踏み間違い・ハンドルの操作ミス・スピ-ドの出しすぎなど。
②自動車の整備が不十分だったケース……例えばタイヤのすり減り(タイヤの溝がほとんどなくなるほどすり減っていたら、路面の状態にもよるが、急ハンドル、急ブレーキでスリップすることが多い)。また雪道や路面が凍結した道路をチェーンなしやスタッドレスタイヤを装着せずに走行することで生じるスリップ事故。タイヤの空気圧が正常でなかったことによる操縦ミスなど。
③自動車そのものの欠陥によるケース……これはほとんどリコールの対象になり、部品の交換などの対策を行うことになる。
さて米国防省が行ったモロッコ事故の調査結果だが、調査が終わる前(8月5日付の読売新聞によればすでに米政府が、フロリダ事故も含め「二つの事故はいずれも機体の欠陥が原因ではない」という結論をすでに出していたことをうかがわせる記事を書いている。つまり「まず結論ありき」の調査だったのである。
案の定、米国防省はモロッコ事故について「パイロットの操縦ミス」という調査結果を日本に伝えた。この「操縦ミス」について米国防総省の最終報告書は「旋回中追い風を受けた際、パイロットが回転翼を前方に傾けすぎたため機体がバランスを崩し墜落した。パイロットが操縦の際『制限している行為』を行ったのが事故の原因」と結論付けている。つまり私が既述した自動車事故の原因究明の3つの視点は、オスプレイ事故の原因究明にはまったく行われていなかったのだ。政府の「機体の欠陥が原因ではない」という調査結論がすでに出されている以上、そしてあくまでオスプレイを普天間基地に配備するという米国防総省の方針が確定している以上、いまさら「実は機体にこういう欠陥がありました」とは口が裂けても言えなかったのだ。
だが、この結論公表で米国防総省は墓穴を掘ることになる。まず「パイロットに制限している行為」が存在していること自体が、オスプレイが飛行機として未完成であることを意味していると言っていい。
JR西日本が起こした福知山線の「尼崎脱線事故」は急カーブの事故現場には本来設置していなければならなかったATS(緊急停止装置)を設置していなかったことと運転手の運転ミス(運転手は手前の伊丹駅で80メートルもオーバーランしており、そのミスによる電車の遅れを取り戻そうとしてスピードを出しすぎたとされている)が重なった複合事故だった。
そのことを考えると、オスプレイに事故の原因の一つとしてパイロットが「制限している行為」を行おうとした時、その行為をさせないような制御機能(電車のATSにあたる)がオスプレイには載っていなかったという飛行機としての致命的欠陥があったことを証明している。私が前回のブログで米政府の「機体の欠陥が(事故の)原因ではない」との見方について「では事故の原因は何か。機体の欠陥でなければ人的ミスということになる。つまり天才的な操縦能力の持ち主でなければオスプレイは制御できないと言っているに過ぎない。ということはやはりオスプレイは未完成の飛行機だということを意味する」と断定した私の主張を図らずも米国防総省の報告書が裏付けてくれたことになる。
問題はまだある。私ごときものがこの報告書を入手すべもないが、報告書には「パイロットが制限した行為を行った」と記載されているようだが、いったい「制限した行為」とはどういう行為なのか、それを明らかにしない限りオスプレイが安全な飛行機と認めるわけにはいかないのである。たとえばATS装置が不備だった福知山線の事故現場はかなりの急カーブで、運転手には制限速度を守ることが義務付けられていた。その制限速度自体、安全を重視する立場からかなり厳しく設定されていて、事故を起こした運転手ほどではなかったにしても大半の運転手は制限速度を超えた運転をしていたという。それは過密ダイヤを守るためのやむにやまれぬ行為だったという。はたして米国防総省はどの程度のアロアンスを「制限」に持たせていたのか。それは事故検証にとって絶対欠くべからざる重大事項である。それを軍事機密として公表を拒んだりしたら、日本国民(特に岩国基地や普天間基地周辺の住民)の不信感は募る一方になるだけでなく、米海兵隊のパイロットたちの間にもオスプレイへの乗務を拒否するケースが生じかねない。そしてそういう動きが表面化した途端「反乱」に近いオスプレイ乗務拒否運動が燎原之火のごとく燃え広がるのは必至である。
結局米国防総省にとっては逃げ場のない袋小路に追い込まれてしまったと言っていい。もともと事故の重大性の分類基準を乗員が受けた被害度にしたこと自体が常識では考えられないアンフェアな行為だった。そのようなアンフェアな分類基準にしたのは、米国防総省がオスプレイの危険性(というより未完成度)を覆い隠し、何が何でも海兵隊の主力機種の一つとして位置づけ、一日も早く重要基地に配備して活用したいという独りよがりの思惑からだった。
しかしその思惑を打ち砕くような事故(特に墜落事故)が毎年続発している状況がありながら、あくまで機体の欠陥に目をつむり「墜落原因はパイロットの操縦ミス」と言い張れば張るほど、肝心の米海兵隊のパイロットたちの不信感をあおる結果となり、世界各地のどの基地に配備できたとしても大半は「宝の持ち腐れ」になることは間違いないだろう。つまり、米国防総省のモロッコ事故の「調査結果報告書」は図らずも、米国防総省の目論見を破たんに導くことになることが必至である。
読売新聞は8月5日の朝刊2面の記事「オスプレイ 米、安全性に自信」という見出しの中で、今年に入ってから生じた二つの事故について、米政府はいずれも機体の欠陥が原因ではないと見ていると書いている。
では事故の原因は何か。機体の欠陥でなければ人的ミスということになる。つまり天才的な操縦能力の持ち主でなければオスプレイを操縦できないと言っているに過ぎない。ということはやはりオスプレイはまだ未完成な飛行機だということを意味する。
しかも事故の大きさについて米国防総省はA・B・Cの3クラスに分けていながら、Aクラスの事故件数(10万時間飛行したときの平均事故件数)について、海兵隊所有の9機種の事故件数2.45件に対して、オスプレイの場合は1.93件にすぎないと発表し、あたかも他の飛行機に比べて安全度が相当高いかのごとき主張をしてきた。
しかし、NHKが7月26日の『ニュース7』で米国防総省や海兵隊幹部がひた隠しに隠してきたA・B・C 3クラスの、オスプレイと他の飛行機の「飛行時間10万時間での平均事故件数」をスクープ報道してしまった。すでに前回のブログで書いたが、NHKがスクープした事故件数は以下のとおりである。
Aクラス オスプレイ:1.93件 他の飛行機:2.45件
Bクラス オスプレイ:2.8件 他の飛行機:2.07件
Cクラス オスプレイ:10.46件 他の飛行機:4.58件
その数値が、それまで国防総省がひた隠しにしてきた数値とびったし合っていた。現在岩国基地に搬入されているオスプレイの最終配備地は普天間飛行場が予定されている。日本側の協力を得るためにはオスプレイの安全性を証明しなければならない。そのためにはNHKにすっぱ抜かれた事故件数を認めA・B・Cクラスに分類した基準も明らかにし、オスプレイの安全性をさらに強調しようというバカげた行為に出たのだ。
そのクラス分けの基準がいかにアンフェアなものであるかは、すでに前回のブログで詳述したので、改めて繰り返しはしない。ただ、自動車事故についてはどのように分析・究明されているかだけを、この機会に述べておこう。このことはモロッコ事故の原因究明を行った米国防総省の調査結果の、あきれるばかりのインチキさを証明するためにどうしても必要となる作業だと思うからだ。
自動車事故については基本的に3つの視点から分析・究明される。
①運転手に事故の原因を期すべきケース……例えば飲酒運転・居眠り運転・ブレーキとアクセルの踏み間違い・ハンドルの操作ミス・スピ-ドの出しすぎなど。
②自動車の整備が不十分だったケース……例えばタイヤのすり減り(タイヤの溝がほとんどなくなるほどすり減っていたら、路面の状態にもよるが、急ハンドル、急ブレーキでスリップすることが多い)。また雪道や路面が凍結した道路をチェーンなしやスタッドレスタイヤを装着せずに走行することで生じるスリップ事故。タイヤの空気圧が正常でなかったことによる操縦ミスなど。
③自動車そのものの欠陥によるケース……これはほとんどリコールの対象になり、部品の交換などの対策を行うことになる。
さて米国防省が行ったモロッコ事故の調査結果だが、調査が終わる前(8月5日付の読売新聞によればすでに米政府が、フロリダ事故も含め「二つの事故はいずれも機体の欠陥が原因ではない」という結論をすでに出していたことをうかがわせる記事を書いている。つまり「まず結論ありき」の調査だったのである。
案の定、米国防省はモロッコ事故について「パイロットの操縦ミス」という調査結果を日本に伝えた。この「操縦ミス」について米国防総省の最終報告書は「旋回中追い風を受けた際、パイロットが回転翼を前方に傾けすぎたため機体がバランスを崩し墜落した。パイロットが操縦の際『制限している行為』を行ったのが事故の原因」と結論付けている。つまり私が既述した自動車事故の原因究明の3つの視点は、オスプレイ事故の原因究明にはまったく行われていなかったのだ。政府の「機体の欠陥が原因ではない」という調査結論がすでに出されている以上、そしてあくまでオスプレイを普天間基地に配備するという米国防総省の方針が確定している以上、いまさら「実は機体にこういう欠陥がありました」とは口が裂けても言えなかったのだ。
だが、この結論公表で米国防総省は墓穴を掘ることになる。まず「パイロットに制限している行為」が存在していること自体が、オスプレイが飛行機として未完成であることを意味していると言っていい。
JR西日本が起こした福知山線の「尼崎脱線事故」は急カーブの事故現場には本来設置していなければならなかったATS(緊急停止装置)を設置していなかったことと運転手の運転ミス(運転手は手前の伊丹駅で80メートルもオーバーランしており、そのミスによる電車の遅れを取り戻そうとしてスピードを出しすぎたとされている)が重なった複合事故だった。
そのことを考えると、オスプレイに事故の原因の一つとしてパイロットが「制限している行為」を行おうとした時、その行為をさせないような制御機能(電車のATSにあたる)がオスプレイには載っていなかったという飛行機としての致命的欠陥があったことを証明している。私が前回のブログで米政府の「機体の欠陥が(事故の)原因ではない」との見方について「では事故の原因は何か。機体の欠陥でなければ人的ミスということになる。つまり天才的な操縦能力の持ち主でなければオスプレイは制御できないと言っているに過ぎない。ということはやはりオスプレイは未完成の飛行機だということを意味する」と断定した私の主張を図らずも米国防総省の報告書が裏付けてくれたことになる。
問題はまだある。私ごときものがこの報告書を入手すべもないが、報告書には「パイロットが制限した行為を行った」と記載されているようだが、いったい「制限した行為」とはどういう行為なのか、それを明らかにしない限りオスプレイが安全な飛行機と認めるわけにはいかないのである。たとえばATS装置が不備だった福知山線の事故現場はかなりの急カーブで、運転手には制限速度を守ることが義務付けられていた。その制限速度自体、安全を重視する立場からかなり厳しく設定されていて、事故を起こした運転手ほどではなかったにしても大半の運転手は制限速度を超えた運転をしていたという。それは過密ダイヤを守るためのやむにやまれぬ行為だったという。はたして米国防総省はどの程度のアロアンスを「制限」に持たせていたのか。それは事故検証にとって絶対欠くべからざる重大事項である。それを軍事機密として公表を拒んだりしたら、日本国民(特に岩国基地や普天間基地周辺の住民)の不信感は募る一方になるだけでなく、米海兵隊のパイロットたちの間にもオスプレイへの乗務を拒否するケースが生じかねない。そしてそういう動きが表面化した途端「反乱」に近いオスプレイ乗務拒否運動が燎原之火のごとく燃え広がるのは必至である。
結局米国防総省にとっては逃げ場のない袋小路に追い込まれてしまったと言っていい。もともと事故の重大性の分類基準を乗員が受けた被害度にしたこと自体が常識では考えられないアンフェアな行為だった。そのようなアンフェアな分類基準にしたのは、米国防総省がオスプレイの危険性(というより未完成度)を覆い隠し、何が何でも海兵隊の主力機種の一つとして位置づけ、一日も早く重要基地に配備して活用したいという独りよがりの思惑からだった。
しかしその思惑を打ち砕くような事故(特に墜落事故)が毎年続発している状況がありながら、あくまで機体の欠陥に目をつむり「墜落原因はパイロットの操縦ミス」と言い張れば張るほど、肝心の米海兵隊のパイロットたちの不信感をあおる結果となり、世界各地のどの基地に配備できたとしても大半は「宝の持ち腐れ」になることは間違いないだろう。つまり、米国防総省のモロッコ事故の「調査結果報告書」は図らずも、米国防総省の目論見を破たんに導くことになることが必至である。