時計の針は8時を回った。残業をしているのは私と主任の二人だけ。突然主任は立ち上がり「えりか君、ちょっと弁当買ってくるよ」と告げて出ていった。主任は二人きりになると私を下の名前で呼ぶ。恥ずかしいけれどちょっと嬉しい。
主任の机のノートパソコンが開いたままになっている。さっきまで何か熱心に打っていた。少し気になったので覗いてみる事にした。
画面はワードでもエクセルでもパワーポイントでもない画面だった。よく見るとインターネットの画面で、ブログの作成画面らしい。私は画面をスクロールさせて上にカーソルを持ってきて、主任が書いた記事を読み始めた。早くしないと主任は帰ってくる。ドキドキしながら読み始める。
エントリー(記事)のタイトルは「真野恵里菜に想いを重ねて」とある。真野恵里菜って誰だろう?なんか聞いた事がある名前だ。AKBではなかったような気がする。
「真野恵里菜に想いを重ねて」
吉川友が遂にソロデビューする。しかも強力な売り出し方で。ハロプロヲタとしては明るいニュースを喜ぶべきなんだろうが、俺はマノフレとして複雑な気持ちでいっぱいだ。ハロプロに新たなソロアイドルが生まれる。真野ちゃんはどうなってしまうんだろうか?
真野ちゃんだって今まで散々推されて良い思いをしてきただろうと言うヲタもいるだろう。自分の推しメンがなかなかソロ活動させてもらえなかったりするような場合は、確かに今までの真野ちゃんは嫉妬の対象だっただろう。だけど今後は違う。
俺は真野ちゃんの顔が好みであるのは確かだが、それ以上に彼女の仕事に対する前向きな姿勢が好きだ。仕事に真面目な子が好きなんだ。
エッグからステップアップしてデビューを飾った真野ちゃんを見て、俺も地道に頑張らなきゃと思えるんだ。俺は大した学校出てないし仕事もバリバリこなしている訳ではないけど、不器用なりに日々を生きてるのさ。恋愛だってそうだ。彼女はいないけどヤケにならず、人に誠実でありたいと思っている。
そういう気持ちになるのも、真野ちゃんの頑張りに自分の姿を重ねているんだと思う。だからこそ、これからの真野ちゃんが不安だ。例えるなら今回の件は、ずっと片想いをしてきた子を、一緒に頑張ってきた同僚に取られたような気持ちだ。吉川は嫌いじゃないが、これからの真野ちゃんが心配。
主任ってアイドルオタクなんだ?読み終わった私は軽く動揺している。主任はもうオッサンな年齢。確かに独身だけど、まさかアイドルオタクだとは。
ところどころ、意味不明な単語もあったけど、主任が真野恵里菜ってアイドルを大好きなのはわかった。いいなあ、主任にこんなに好きだと思われて。真野ちゃんって子はどんな顔をしているんだろう?
そういえば会社の飲み会で主任と好みの顔について話をした事があったなあ。主任は「えりか君はコアラ顔だね」と私に言ってくれたっけ。
その時だったドアの向こうに足音が聞こえてきた。私は慌てて自分の席に戻った。
主任はオリジン弁当の袋と一緒にCDショップの袋を持っていた。そのCDショップの袋を慌てて鞄にしまい席に着いた。
席に着いた主任はノートパソコンを開いたまま出かけた事に気づいて、「しまった」という顔をしている。その瞬間私もしまったという顔になる。画面を慌ててスクロールさせて、また上に上げたまま席を離れた事に気づいたのだ。
何とも言えない沈黙が流れる。何故か私の頭の中では「メイビー、メイビー、言い訳メイビー」というフレーズがリフレインされていた。
主任の机のノートパソコンが開いたままになっている。さっきまで何か熱心に打っていた。少し気になったので覗いてみる事にした。
画面はワードでもエクセルでもパワーポイントでもない画面だった。よく見るとインターネットの画面で、ブログの作成画面らしい。私は画面をスクロールさせて上にカーソルを持ってきて、主任が書いた記事を読み始めた。早くしないと主任は帰ってくる。ドキドキしながら読み始める。
エントリー(記事)のタイトルは「真野恵里菜に想いを重ねて」とある。真野恵里菜って誰だろう?なんか聞いた事がある名前だ。AKBではなかったような気がする。
「真野恵里菜に想いを重ねて」
吉川友が遂にソロデビューする。しかも強力な売り出し方で。ハロプロヲタとしては明るいニュースを喜ぶべきなんだろうが、俺はマノフレとして複雑な気持ちでいっぱいだ。ハロプロに新たなソロアイドルが生まれる。真野ちゃんはどうなってしまうんだろうか?
真野ちゃんだって今まで散々推されて良い思いをしてきただろうと言うヲタもいるだろう。自分の推しメンがなかなかソロ活動させてもらえなかったりするような場合は、確かに今までの真野ちゃんは嫉妬の対象だっただろう。だけど今後は違う。
俺は真野ちゃんの顔が好みであるのは確かだが、それ以上に彼女の仕事に対する前向きな姿勢が好きだ。仕事に真面目な子が好きなんだ。
エッグからステップアップしてデビューを飾った真野ちゃんを見て、俺も地道に頑張らなきゃと思えるんだ。俺は大した学校出てないし仕事もバリバリこなしている訳ではないけど、不器用なりに日々を生きてるのさ。恋愛だってそうだ。彼女はいないけどヤケにならず、人に誠実でありたいと思っている。
そういう気持ちになるのも、真野ちゃんの頑張りに自分の姿を重ねているんだと思う。だからこそ、これからの真野ちゃんが不安だ。例えるなら今回の件は、ずっと片想いをしてきた子を、一緒に頑張ってきた同僚に取られたような気持ちだ。吉川は嫌いじゃないが、これからの真野ちゃんが心配。
主任ってアイドルオタクなんだ?読み終わった私は軽く動揺している。主任はもうオッサンな年齢。確かに独身だけど、まさかアイドルオタクだとは。
ところどころ、意味不明な単語もあったけど、主任が真野恵里菜ってアイドルを大好きなのはわかった。いいなあ、主任にこんなに好きだと思われて。真野ちゃんって子はどんな顔をしているんだろう?
そういえば会社の飲み会で主任と好みの顔について話をした事があったなあ。主任は「えりか君はコアラ顔だね」と私に言ってくれたっけ。
その時だったドアの向こうに足音が聞こえてきた。私は慌てて自分の席に戻った。
主任はオリジン弁当の袋と一緒にCDショップの袋を持っていた。そのCDショップの袋を慌てて鞄にしまい席に着いた。
席に着いた主任はノートパソコンを開いたまま出かけた事に気づいて、「しまった」という顔をしている。その瞬間私もしまったという顔になる。画面を慌ててスクロールさせて、また上に上げたまま席を離れた事に気づいたのだ。
何とも言えない沈黙が流れる。何故か私の頭の中では「メイビー、メイビー、言い訳メイビー」というフレーズがリフレインされていた。