ローカル線の旅の話。第八回目。今回は福島県から新潟県。
ある年の七月、青春18きっぷを使って鈍行を乗り継ぎ、福島県の郡山に着いた。郡山は東北で二番目の商業都市というだけあって駅前は賑わっている。郡山から磐越西線(ばんえつさいせん)に乗って磐梯高原を抜け、大きな猪苗代湖のほとりを望み、会津若松で乗り換え喜多方に着いた。盆地特有のうだるような暑さが町を包む。夏真っ盛りだ。
ラーメン屋に入ろうと駅前を歩くと、名物だけあって、店がいくつも並んでいる。都会にあるような専門店風情な店構えではなく、ラーメン屋というよりも食堂といった店構えの店が目立ち、それがまた良い感じに思える。中には店内に芸能人の写真が飾られているような店もあるが、「学生割引あり」と書かれた路地裏食堂みたいな構えの店に入る。学生、つまり地元の人を相手に商売している店だから味に外れはなさそうに思えた。
運ばれてきたラーメンは鶏ガラのだしが香ばしい、期待通りの素朴な味わいの美味いラーメンだった。
気分良く駅前の土産屋で冷えた地酒を買って磐越西線に乗り込む。喜多方からは乗客も少なくなり、車両も電車からディーゼルカーになり本数も少なくなる。
景色は盆地から山間に変わっていき、小さな集落の駅が続く。それにあわせて、少しずつ車内は閑散としてくる。列車は新潟県に入り日出谷(びでや)という駅に停まった。屋根のない一本のホームを二本の線路が挟む無人駅。あたりは小さな盆地で家が少し集まっている。そんな普通の田舎の駅で駅弁が売っているのだという。
時刻表には駅弁が売られている事を示すマークがある。半信半疑なところに、飲み物とお菓子と駅弁の入った籠をぶら下げた青年が現れた。駅弁を売っていると言っても列車は特別扱いはせず他の駅と同じように30秒くらいの停車時間で発車する。売れたのは飲み物とお菓子だけなようだ。立ち去る青年の背中が寂しげだ。
日出谷はかつて会津若松方面の山間に向けて機関車の付け替えをしていた駅だそうで、その時間を利用して駅弁を買う人が結構いたのだろう。しかし、現在はローカル線でも一分でも早く目的地に着きたい人が増えた。時代の波から取り残されたままな無人駅の駅舎は、今は農協と同居している。
緩い下り道を歩いていくと阿賀野川が現れた。山の麓なのに結構川幅が広い。斜面に木々が茂り良い眺めなので、しばらくのんびりする。
駅に戻ると、まだ新潟方面の列車まで時間がある。喜多方方面に一駅戻ってみることにした。列車の到着時間が近づくと再び青年が現れたので、青年から駅弁を買って列車を待つ。やってきた喜多方行きの乗客からは飲み物しか売れずに発車。
一駅隣の豊実駅は福島県との県境に近い小さな集落にある小さな駅だった。西日を浴びながら散歩をすると時間がゆったり感じられる。山の麓の農村の眺めは夕日の色に染まり、空気は山の冷気を含んで涼しげ。こういう観光地ではないけれど景色が良い無人駅は落ち着く。空が大きい。
豊実から新潟行きに乗り再び日出谷を通る。この列車も、飲み物とお菓子しか売れなったように見えた。青年は走り去る列車に一礼する。私はそれをなんともいえない気持ちで見つめた。
日出谷駅が見えなくなってから私はシンプルなデザインの駅弁の包み紙を開いた。中は素朴な盛り付けの鳥そぼろめしだ。ご飯も、だしの利いたそぼろも美味い。これぞ正調な田舎のご飯だと思った。夕日に照らされた山々を眺めながら食べるのに、これ以上ない弁当だと。
※日出谷駅は現在は駅弁販売終了しています。
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原幹恵さんや渋谷飛鳥さんも新潟なんですか!知らなかったです!渋谷さんは割と好きなタレントさんですね。
新潟というと今だと、以前に何度かこのブログでも取り上げていますが、NegiccoとかRYUTistといった現場も活動も新潟に特化し、平和な空間を作っているアイドルのいる地域と言えますね。