ローカル線の旅の話。第七回。今回は北海道てす。無くなる時に人はそれを祭にする。そんな話。
私はある年のゴールデンウィーク、札幌から旭川行き特急スーパーホワイトアローに乗り砂川で降りた。ここで函館本線から函館本線に乗り換える。これから乗る路線には特定の線名が付いていないので、そういう表現になる。
特定の名前が付いていないために函館本線の一部とされ、これまで廃止を免れてきた。だがJRとしても、さすがに利用者の少ない支線を放置しておく訳にもいかず、ついに廃止となるのだ。地元の人は「上砂川線」と呼んでいるそうだ。それにしても、特急の停まったホームはそれなりに立派だったが上砂川線のホームが見当たらない。
よく見ると木造の古びた跨線橋が雑草の茂る空き地の先に延びていて、そこの端にホームらしきものがある。白っぽい跨線橋は昔の蒸気機関車の煤で黒っぽくなったまま建っている。空き地は炭鉱で採れた石炭を積む貨車を置いていた貨物用の線路があった名残だろう。このあたりは昔は炭鉱で栄えた地域である。
上砂川線のホームは屋根もなく空き地のはずれにひっそりと存在していた。空はだんだん雲が厚くなり、陽は傾き始めている。白いディーゼルカーが一両でやってきた。ホームには人はまばらだったけれど、車内は結構人がいる。その乗客のほとんどが鉄道ファンなのは、皆が一眼レフを待っている事でわかる。
私は進行方向左側に座った。隣の席では鉄道ファンが地元の人と上砂川線の話をしている。地元の人も残念だと言いながらも表情はサバサバしているように見える。廃止されるべくしてされる線なのかもしれない。列車は砂川の市街地をすぐ抜けて平野から緩い丘陵に入っていく。左側に川が寄り添い、並行して走る道路沿いにも家はまばら。
上砂川線はそれほど長い路線ではないので30分くらいで終点の上砂川に着いた。駅は思っていたより立派な駅で、小さいながらも駅舎があり待合室もある。そして女性駅員もいた。小さな駅前広場に出ると人が大勢いる。車で記念撮影に来ている人もいる。というか、列車で来ている人よりも車で来ている人が多い。廃止になるという事でいろんな人が駆けつけてきているのだ。
振り向いて駅舎を見ると駅名標が上砂川駅ではなく悲別(かなしべつ)駅となっている。以前テレビドラマの舞台になり、この駅が悲別駅として使われたらしい。待合室にはロケ中の写真が飾ってある。上砂川線は廃止されればレールは消えるけれど、きっと上砂川駅、いや悲別駅は観光名所として残るのだろう。
悲別という名前とは皮肉に、駅の周りは悲しい別れという雰囲気ではなく、ちょっとした祭りな光景になっている。帰りの砂川行きは満員となり、ホームには大勢の人が見送りに出た、その中に色白で美人な駅員さんも手を振っている。廃止を目前に控えた上砂川線最後のゴールデンウィークは、去るものへの祭りで賑わう。その姿には哀愁めいたものは無いように思えた。手を振る人たちを見ていると不思議なもので、どこか感傷的な気分はなくなっていく。祭りの範囲気がそうさせたのだろう。
行きと同じ風景を眺め、日が落ちてきた砂川に着く。先ほどと同じように空き地の中の寂しいホームが現れる。ここには祭りはない。ようやく現実に戻り、私は跨線橋を上った。
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