さんたろう日記

95歳、会津坂下町に住む「山太郎」さんたろうです。コンデジで楽しみながら残りの日々静かに生きようと思っています。

取りあげ峠の尾根筋でエリーが姿を消しちゃって

2013-12-24 | 日記


 高寺山(401m)への登山道の取りあげ峠から尾根筋を登って旧スキー場へ抜け糸桜里の湯におりる山の道はシュンランやアズマイチゲなどの春の花、秋の紅葉などを楽しめる40分(老体の今は120分)ほどの楽しい山の散策の道です。

 エリーも生後1年6ヶ月、もうしっかりした若犬です。この道を一緒して見ることにしました。山の道は初めてですし、それに取りあげ峠までは高寺山の登山道ですから人に会う可能性があるのできちんとリードをつけて登って行きました。山には野ウサギもリスもそれにこの山ではテンもすんでおります。エリーは山の道に興味津々の様子でした。

 取りあげ峠から旧スキー場への道は人に会う心配はありません。急な坂を登り切ったところでひと休みしました。そしてエリーに「遊んできな」といってリードをはずしてやりました。初めはなんか不安そうでしたけどやがてなれて嬉しそうに森の中に姿を消しました。でも私は平気でした、里では犬笛を吹けばとんでくるエリーでしたから大丈夫と思っていたのです。

 しばらく休んで10分、さて出かけようと犬笛を吹きました。でもエリーは帰って来ません。

20分、エリーは帰って来ません。不安になりました。立ち上がって犬笛を何度も吹きましたけど帰ってきません。

 30分しても帰ってきません。野ウサギの匂いを追って遠くへいってしまったみたい。どうしょう胸が動悸してあちこち走りまわって犬笛を吹き続けました。

 40分、シベリアンハスキー犬のエリーは山の自然で野生に目覚めオオカミになったのかも知れない頭が混乱して自分が自分でなくなりました。

 50分、帰って来てくれエリー、不安・悲しみ・胸の動悸、山の坂道の辛さなど少しも感じません走り廻って犬笛を吹きました。でも森は静かでした。私の世界が真っ暗になりました。

 1時間10分、疲れ切った私は山の道に座って泣いていました。

 1時間30分、仕方がない、山を下りて車で待っていよう、必ず帰って来るだろうし、もし帰って来なくてエリーがオオカミになったんならそれはそれでエリーは幸せかも知れない。そんなことを考えながら呆然として私は山を下りました。

 そして5分・・ふとうしろになにか気配を感じて振り向くと、なんとエリーが猛烈な勢いで走ってくるのです。おいて行かれては大変と思ったんでしょうね。

 私の心の世界が開けて喜びに輝きました。「おりこちゃん、おりこちゃん」と繰り返し叫んでエリーを抱きしめました。そしてエリーは一心に涙顔の私をなめてくれました。わたしはそのときエリーとほんとに心がつながったんだと思いました。

 それからのエリーは山の道でリードをはずしても私から離れずに散歩するようになりましたし、犬笛を吹けばとんで来るようになりました。

 若かった頃の私はゲレンデスキーに夢中でした。でもエリーと一緒するようになってからはゲレンデスキーをやめて歩くスキーを履いて雪の里山をエリーと楽しむようになりました。 ハスキー犬は橇をひく犬です。エリーは雪原をあまりぬからない走ることができるのです。あるときエリーは野ウサギの匂いを感じて雪の藪から追い出しました。雪の上の野ウサギ身軽です、エリーが全力で追いかけても軽々逃げて姿が見えなくなりました。それを追いかけてエリーも姿が見えなくなりました。でも私は平気でした。犬笛を吹けば1分もすれば山の尾根筋から必死にエリーが走ってくることを知っているからです。心臓を破裂するほどにとどろかせて帰って来たエリーを私は笑って見ていました。