とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

意外な展開

2012-08-05 22:02:32 | 日記
意外な展開




 聖林寺十一面観世音菩薩立像(奈良)


 私は今までたくさんの仏像をじかに見てきた。意外性から言うと、阿部の文殊院の文殊菩薩である。驚いた。巨大な獅子の上にこれまた大きな文殊菩薩が乗っかっていた。愛嬌から言うと、秋篠寺の伎芸天である。残念ながら興福寺の阿修羅像の実物を拝観する機会には恵まれなかった。
 仏像の完成度、崇高性から言うと、聖林寺の十一面観世音菩薩立像が一番である。実物を見たときにはその発せられるパワーにしばらく言葉が出なかった。こんな仏像が日本にあったのかと思った。木心乾漆十一面観音立像は代表的な天平彫刻で、国宝に指定されている。大神神社(おおみわじんじゃ)の神宮寺であった大御輪寺に祀られていたが、慶応四年(1868)に寺の廃絶とともに移された。フェノロサ、岡倉天心らによって開扉されて以来、その美しい姿は多くの人を魅了している。私はこの仏像の写真を買い求めて今も大切に保管し、時々出して拝んでいる。


 冴子さんから夜突然の電話がありました。

 ああ、こんな時間にすみません。私、ほんとにびっくりしたのですぐさま電話しました。

 かまいません。な、何でしょうか。

 あのですね。あの、陶芸の小室さん、観音さんを作るんですって。

 あ、そうですか。焼き物ですね。新境地ですね。

 ええ、そうなんですが、大きな像です。しかも廃校になった小学校の校庭です。あちこちの許可は取ってるみたいです。300のブロックを組み立てるそうです。いつでも壊してどこかへ運べるように作るとか・・・。

 へえー、最後の大仕事という訳ですか。

 畝本さん、のんきですねえ。

 ど、どうしてですか。

 校舎の外の担当は小室さん、内側には壁画を描くことになっていて、京子さん夫婦、それに佐山先生の奥さん、あの絵本作家も加わることになっています。それに・・・。

 なんでしょう。

 うちの主人が観音像の下図を描くことになっています。

 へえー、すごい企画ですね。誰がプロデュースしたのですか。

 それがですね。佐山先生です。

 えっ、佐山先生 !!

 ・・・私はその話を聞いて、この前の佐山医師の話を思い出し、行動力のすごさとともにそのプロジェクトの目的を考えました。・・・もやもやの解決への大きな一歩を進めようとしている佐山医師。すごいお方だ。

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