母親として・・・③
小磯良平(1903~88)「日本髪の娘」
小磯良平を言う時どうしてもこの作品を挙げねばならない。それほど端正な作品で完成度が非常に高い。色彩のバランスも素晴らしく、緊張感が溢れていて、これぞ小磯だという感じがする。
中村さんは私たちとは初対面にもかかわらず、すっかり心を許して話していて、私は郁子さんに対する責任をひしひしと感じていました。
・・・ああ、そうでした。・・・お願いがあるんです。
どういう・・・、と私。
何も難しいことではありません。・・・郁子は今の仕事に生きがいを感じています。みなさんの活動に望みを繋いでいます。過去にあの子もいろいろありました。でも、すっかり元気を取り戻しました。ですから、今の仕事が続くように・・・、いや、こんなことを私が言うのはおかしいですね、ですから、絶えずとは申しません、遠くから見守ってやっていただきたいのです。
分かりました、お母さん。私は素直な気持ちでそう返事しました。長柄さんも、ご心配はいりません、努めて・・・、と答えました。
ありがとうございます。冴子さんや京子さんが近くにいらしゃるので不安はないのですが、気が強いのでこれから何をしでかすか分かりません。何か不都合なことをすれば厳しく叱ってやってほしいのです。
え、心がけます。私はそう言いながら胸が熱くなっていました。郁子さんが娘のように思えてきました。
私にできることが何かありませんでしようか。改まった調子で中村さんは言いました。私はどう答えていいかとまどっていました。すると、突然長柄さんが言いました。
お母さん、絵を描いていただけませんか。
絵ですか、どういう・・・。
貴女の舞台姿です。
ええっ、・・・突然で答えにくいのですが・・・、私も仕事に加わらせていただくという意味を込めて、・・・そうですね、少し時間をいただければ・・・。
そりゃありがたいです。長柄さんがぱっと明るい表情になりました。
私も嬉しいです、ぜひ・・・。私もお願いしました。
ええ承知しました。
ありがとうございます。
も一つ最後にお願いがございます。・・・今日お話ししましたことは、ぜひ内密に・・・。中村さんは、そう言うと、ほっとしたような和らいだ表情になりました。
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小磯良平(1903~88)「日本髪の娘」
小磯良平を言う時どうしてもこの作品を挙げねばならない。それほど端正な作品で完成度が非常に高い。色彩のバランスも素晴らしく、緊張感が溢れていて、これぞ小磯だという感じがする。
中村さんは私たちとは初対面にもかかわらず、すっかり心を許して話していて、私は郁子さんに対する責任をひしひしと感じていました。
・・・ああ、そうでした。・・・お願いがあるんです。
どういう・・・、と私。
何も難しいことではありません。・・・郁子は今の仕事に生きがいを感じています。みなさんの活動に望みを繋いでいます。過去にあの子もいろいろありました。でも、すっかり元気を取り戻しました。ですから、今の仕事が続くように・・・、いや、こんなことを私が言うのはおかしいですね、ですから、絶えずとは申しません、遠くから見守ってやっていただきたいのです。
分かりました、お母さん。私は素直な気持ちでそう返事しました。長柄さんも、ご心配はいりません、努めて・・・、と答えました。
ありがとうございます。冴子さんや京子さんが近くにいらしゃるので不安はないのですが、気が強いのでこれから何をしでかすか分かりません。何か不都合なことをすれば厳しく叱ってやってほしいのです。
え、心がけます。私はそう言いながら胸が熱くなっていました。郁子さんが娘のように思えてきました。
私にできることが何かありませんでしようか。改まった調子で中村さんは言いました。私はどう答えていいかとまどっていました。すると、突然長柄さんが言いました。
お母さん、絵を描いていただけませんか。
絵ですか、どういう・・・。
貴女の舞台姿です。
ええっ、・・・突然で答えにくいのですが・・・、私も仕事に加わらせていただくという意味を込めて、・・・そうですね、少し時間をいただければ・・・。
そりゃありがたいです。長柄さんがぱっと明るい表情になりました。
私も嬉しいです、ぜひ・・・。私もお願いしました。
ええ承知しました。
ありがとうございます。
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