輝く女性たちの群像
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ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 「黄金時代」(1862)
黄金時代。それは穏やかな温もりに満ちた常春の世界。一切の悪とは無縁の秩序ある理想郷。はるか昔に失われ、もう二度と還ることもできない、見果てぬ夢のようなユートピアです。
この至福の時代を支配した神々の王サトゥルヌスとその妃神オプスの祭壇が画面中央に描かれています。その周囲では、少年の吹き鳴らす笛の音に合わせて美しい6人の乙女が輪舞を踊り、豊饒をもたらす二神の力を讃えています(花冠を戴いた着衣の3人を季節の女神ホーラたち、裸体の3人を三美神と見なす説もあります)。
画面右側には、それぞれ思い思いの姿でくつろぎながら談笑する人間たちの群れが描かれ、蝶の羽をつけた西風の神ゼフュロスが彼らの頭上に祝福の花をまき散らしています。
画面左側では白衣に身を包んだ正義の女神アストライアが熱心に教えを説き、彼女を崇め敬う人々が敬虔な態度でその言葉に聴き入っています。黄金時代にしか見られなかった美しい光景です。(以上「テオポリス」http://www.h6.dion.ne.jp/~em-em/index.htmlから引用)・・・私はこの絵を見ていて改めて気づいた。演劇の一場面を見るような感じがするのである。西洋画、特に宗教画などは連続するあるドラマの一瞬間をストップモーションで描いている。緊迫感が表れているのである。だから絵の場面の前と後をすぐに連想してしまう。言わば動画の世界である。そのように出来ていると思われる。日本の絵は歴史的に静止画である。背景に物語がある場合があるが、ある場面を二次元の世界に封じ込めてしまっている。だから物語がそのために紙芝居のようになってしまう。いや、これはこれで意味があると思う。・・・これは私の独断と偏見かもしれないが。
古賀所長から聞いた話を頭の中で反芻しながら、その後、私はずっとそのことを考えていました。千恵子に聞いてみよう。妻にそう私は言いました。すると妻はすでに千恵子の気持ちは確かめていて、千恵子は乗り気みたい、と言いました。ええっ、本当か。で、京都に行くのか。いえ、いずれ出雲に本部が移設されるからそのことは必要ないみたい。そうか、しかし、家族ごと里見家の家族に・・・、寂しいじゃないか。私はそんなに寂しくないですね。どうしてだ。女はどこへでも嫁いでいきます、覚悟は出来ています。しかし、もう嫁いでいるし・・・。千恵子の体のためにもいいじゃないですか。どうして。新しい仕事が出来たみたいです。どういうことだ。今までもしてましたけど、新しい劇団のトレ-ナーとして採用される予定だそうです。そうか。お父さん、いつまでも子どもじゃありません、親がとやかく言うのは止めましょう。しかし、・・・。しかし、何ですか。三朗にとっては大きな重荷だ。あの人、貴方のような小心者じゃないですよ。小心者。そうです、貴方は深く考えすぎです。・・・そんな夫婦の会話をしている時に電話がありました。三朗からでした。
ああ、お義父さんですか。いろいろとお話ししたくて・・・。
お前、大丈夫なのか。
ええ、そんなに深刻になっていません。むしろ夢が膨らんでいくような気持ちがしています。
夢、・・・。
そうです。影絵のような世界を光を発する世界に出来るんではと思っています。光源に出雲がなる。その拠点はメイン劇場です。里見オーナーはその完成を見届けることが出来ないかもしれません。
なにもお前が荷物を背負うことはない。
荷物ですか、ははっ、お義父さん、荷物ではないですよ。舞台芸術は荷物じゃありません。
だから、そうじゃなくて、劇団を動かしていかなくてはならない・・・。
セッティングすればひとりでに動き出します。もう、オーナーがほとんどやってくれています。私は引き継いでいくだけです。
お前は本当に楽天家だよ。呆れるほど。
お義父さん、組織は一人で動かすことは出来ません。引き算から足し算になり、続いて掛け算になります。エネルギーはそこから生まれます。私は実は演出家になりたかったのです。だからいろいろな舞台劇を見せていただきました。女性だけの劇団、男女が協力して仕上げる劇団、ミュージカル、歌舞伎、アングラ劇団。たくさん見ました。残念なことがあります。舞台劇が最近曲がり角にきていることです。多様なメディアが出現して舞台が危ういのです。私見ですが、それを救うのは女性の軍団です。女性が純粋に輝く劇団が登場すれば大きく挽回できます。新阿国座はいずれエポックを築くことができます。
おいおい、ご縁市場関係には絵もあるし、陶芸も、美術館も、農産物市場もある。演劇だけじゃない。
ああそうでした。分かってます。多種多様なほど掛け算の積は増大します。
また掛け算か。もっと具体的に言ってくれ。
それぞれの事業で、そこで働いている人が生きがいを感じていれば、それが大きな光となります。
ああ、分かった、分かった。もう止めよう。
お義父さん、家族を犠牲にすることは決してありません。私を信じてください。
いや、別に疑っているわけじゃない。
ありがとうございます。
ところで、私の「母」はどう言っているんだ。
ええ、そのことですが、オーナーとは密に連絡をとりあっていらっしゃいますので、すべてご存知だと思います。
おい、またとんでもない予言をすることはないだろうな。
いや、そういうことは今のところ伺っていません。
もし、窮地に追い込まれるようなことがあれば、助けてくれるだろうな。
それは分かりません。しかし、出雲の新しい神話を作り出す原動力にはなっていただけると思います。・・・もう出来始めていますから。・・・この度のオーナーの構想もあの方の援助があったから成り立ったと思います。
ということはまたオオトリが出てくるということ・・・。
いや、そこまで私は見通せません。
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ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 「黄金時代」(1862)
黄金時代。それは穏やかな温もりに満ちた常春の世界。一切の悪とは無縁の秩序ある理想郷。はるか昔に失われ、もう二度と還ることもできない、見果てぬ夢のようなユートピアです。
この至福の時代を支配した神々の王サトゥルヌスとその妃神オプスの祭壇が画面中央に描かれています。その周囲では、少年の吹き鳴らす笛の音に合わせて美しい6人の乙女が輪舞を踊り、豊饒をもたらす二神の力を讃えています(花冠を戴いた着衣の3人を季節の女神ホーラたち、裸体の3人を三美神と見なす説もあります)。
画面右側には、それぞれ思い思いの姿でくつろぎながら談笑する人間たちの群れが描かれ、蝶の羽をつけた西風の神ゼフュロスが彼らの頭上に祝福の花をまき散らしています。
画面左側では白衣に身を包んだ正義の女神アストライアが熱心に教えを説き、彼女を崇め敬う人々が敬虔な態度でその言葉に聴き入っています。黄金時代にしか見られなかった美しい光景です。(以上「テオポリス」http://www.h6.dion.ne.jp/~em-em/index.htmlから引用)・・・私はこの絵を見ていて改めて気づいた。演劇の一場面を見るような感じがするのである。西洋画、特に宗教画などは連続するあるドラマの一瞬間をストップモーションで描いている。緊迫感が表れているのである。だから絵の場面の前と後をすぐに連想してしまう。言わば動画の世界である。そのように出来ていると思われる。日本の絵は歴史的に静止画である。背景に物語がある場合があるが、ある場面を二次元の世界に封じ込めてしまっている。だから物語がそのために紙芝居のようになってしまう。いや、これはこれで意味があると思う。・・・これは私の独断と偏見かもしれないが。
古賀所長から聞いた話を頭の中で反芻しながら、その後、私はずっとそのことを考えていました。千恵子に聞いてみよう。妻にそう私は言いました。すると妻はすでに千恵子の気持ちは確かめていて、千恵子は乗り気みたい、と言いました。ええっ、本当か。で、京都に行くのか。いえ、いずれ出雲に本部が移設されるからそのことは必要ないみたい。そうか、しかし、家族ごと里見家の家族に・・・、寂しいじゃないか。私はそんなに寂しくないですね。どうしてだ。女はどこへでも嫁いでいきます、覚悟は出来ています。しかし、もう嫁いでいるし・・・。千恵子の体のためにもいいじゃないですか。どうして。新しい仕事が出来たみたいです。どういうことだ。今までもしてましたけど、新しい劇団のトレ-ナーとして採用される予定だそうです。そうか。お父さん、いつまでも子どもじゃありません、親がとやかく言うのは止めましょう。しかし、・・・。しかし、何ですか。三朗にとっては大きな重荷だ。あの人、貴方のような小心者じゃないですよ。小心者。そうです、貴方は深く考えすぎです。・・・そんな夫婦の会話をしている時に電話がありました。三朗からでした。
ああ、お義父さんですか。いろいろとお話ししたくて・・・。
お前、大丈夫なのか。
ええ、そんなに深刻になっていません。むしろ夢が膨らんでいくような気持ちがしています。
夢、・・・。
そうです。影絵のような世界を光を発する世界に出来るんではと思っています。光源に出雲がなる。その拠点はメイン劇場です。里見オーナーはその完成を見届けることが出来ないかもしれません。
なにもお前が荷物を背負うことはない。
荷物ですか、ははっ、お義父さん、荷物ではないですよ。舞台芸術は荷物じゃありません。
だから、そうじゃなくて、劇団を動かしていかなくてはならない・・・。
セッティングすればひとりでに動き出します。もう、オーナーがほとんどやってくれています。私は引き継いでいくだけです。
お前は本当に楽天家だよ。呆れるほど。
お義父さん、組織は一人で動かすことは出来ません。引き算から足し算になり、続いて掛け算になります。エネルギーはそこから生まれます。私は実は演出家になりたかったのです。だからいろいろな舞台劇を見せていただきました。女性だけの劇団、男女が協力して仕上げる劇団、ミュージカル、歌舞伎、アングラ劇団。たくさん見ました。残念なことがあります。舞台劇が最近曲がり角にきていることです。多様なメディアが出現して舞台が危ういのです。私見ですが、それを救うのは女性の軍団です。女性が純粋に輝く劇団が登場すれば大きく挽回できます。新阿国座はいずれエポックを築くことができます。
おいおい、ご縁市場関係には絵もあるし、陶芸も、美術館も、農産物市場もある。演劇だけじゃない。
ああそうでした。分かってます。多種多様なほど掛け算の積は増大します。
また掛け算か。もっと具体的に言ってくれ。
それぞれの事業で、そこで働いている人が生きがいを感じていれば、それが大きな光となります。
ああ、分かった、分かった。もう止めよう。
お義父さん、家族を犠牲にすることは決してありません。私を信じてください。
いや、別に疑っているわけじゃない。
ありがとうございます。
ところで、私の「母」はどう言っているんだ。
ええ、そのことですが、オーナーとは密に連絡をとりあっていらっしゃいますので、すべてご存知だと思います。
おい、またとんでもない予言をすることはないだろうな。
いや、そういうことは今のところ伺っていません。
もし、窮地に追い込まれるようなことがあれば、助けてくれるだろうな。
それは分かりません。しかし、出雲の新しい神話を作り出す原動力にはなっていただけると思います。・・・もう出来始めていますから。・・・この度のオーナーの構想もあの方の援助があったから成り立ったと思います。
ということはまたオオトリが出てくるということ・・・。
いや、そこまで私は見通せません。
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