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嵐が静まった翌日、碧空には大鳥がゆったりと飛び回り、新たに広がった森、いままでの森を、森の女神とさやかを乗せて具に観察していました。花盛りの森では傷ついた樹々は少しもありませんでした。ところが、姫神の森、山の神の森にはあちこちに傷ついた樹木がありました。大鳥はくわーっと鳴きました。
「さやか、行ってくれるかい ?」
「ええ、承知しました、お母さま。では、大鳥様、分身の術をお願いいたします。傷ついた樹々を私が癒してきます」
「くわー、くわー、くわー・・・」
何度も大鳥が鳴きました。すると、さやかは無数の女の子に分身しました。そして、花びらがひらひら散るように森に舞い降りて行きました。すると天上から無数の光が差してすべてのさやかたちを照らしました。「マーガレット様、ありがとうございます」。さやかたちは絶対神からエネルギーを貰って、光り輝きました。すべてのさやかたちは傷ついた樹々に舞い降りると、その樹々を愛撫しました。
「私の力を吸い取ってくださいね」
そう言うと、幹から芽が吹きだしてきました。その芽は見る見るうちに大きな枝になりました。
「大きくなりました。今にきっと花が咲きます」
天空では女神を乗せた大鳥が嬉しそうに翼をゆったり動かしていました。その緩やかな動きは森全体に暖かい酸素と適度の炭酸ガスを供給して、生長を促進させていました。
「近い将来きっと多数の人間が元の地球に帰り、滅びた人たちの跡を継いでくれることでしょう」
さやかはそう呟きました。
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さやかの一人が姫神の森の桜の森に入り込みました。何かを探していました。
「電信柱、いや、さくらさんの樹はたしかこの辺り・・・。ああ、ありました。うおー、立派な花木。満開の桜。花神の霊力の源はここから出ているはず」
「しかし、この樹も千切れている枝がある」
さやかはその桜の樹にも飛び降りて、折れた枝の跡を両手で撫でました。すると、枝が伸びだしてきて、たちまち大きな枝になり、他の樹よりも早く花をつけました。それを確認すると、枝のてっぺんに上りました。すると山の麓の風景がよく見えました。かつて電信柱が立っていた辺りは以前と変わりはありませんでした。さやかと母親が住んでいた家も元のままでした。
さやかは思い立ちました。この桜の分身を以前の電信柱の位置近くに移そう。
「六地蔵さーん、手伝ってください。貴方の霊力で桜の分身をそちらに移して貰えませんか ?
「何、桜を移す ?」
「ええ」
「はははっ、どうしてだ ?」
「電信柱さんがいなくなって、寂しくなったし、その家には誰もいないし・・・」
「はははっ、さやか、その心配はいらない」
「ええっ、どういうことですか ?」
「この前の嵐で、桜の枝がここに飛んできた。きっと故郷が恋しくなったに違いない。それからだ、それから枝が根を下ろしてずんずん大きくなった。ははっ、大木じゃ」
「ええっ、見えないですけれど・・・」
「ははっ、私が隠している。見えないようにしている」
「ど、どうしてですか ?」
「お前たちがいなくなってから間もなく、親子が移り住んだんじゃ。母親と小さな娘じゃ」
「母親と娘 ?」
「そうじゃ、その娘がいつも寂しそうに窓から外を眺めている。ははっ、その娘を驚かしたいんじゃ」
「驚かす ?」
「そうじゃ、突然、満開の桜の樹が姿を現す・・・。驚くぞー」
「六地蔵様、その女の子たちはどこから・・・?」
「ちっとも分からん」
「私も見当がつきません」
「まっ、いいじゃないか。さやか、とにかく私に任せてくれ」
「え、ええ、承知しました」
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