以前「曲亭の家」西條奈加作を読みました。曲亭馬琴の家に嫁いだお路が主役の小説でした。今回読んだ「秘密の花園」朝井まかて作は曲亭馬琴が主役の小説です。武士の家に生まれついた滝沢馬琴が戯作者になっても武士としての心得がいつも心の中心にあり、芯は通っているのですが生きずらかっただろうなと思います。「南総里見八犬伝」を完成させるまでには人とのつながり、裏切りいろいろありました。挿画を葛飾北斎が担当したりその当時の有名人が沢山出てきて、このようなつながりがあったのかと「へぇ~!」と感心しました。
大作「南総里見八犬伝」を最後まで読んだ暁には
- 主客ー主人公と脇役
- 伏線ー後に出す趣向を数回以前に些か墨打ちしておくこと
- 襯染(しんせん)-眼目たる妙趣向を出そうとする時、数回前よりその事柄の基本来歴を仕込んでおく。
- 照応ー作者が意図的に前の趣向に対を取るもの
- 反対ー同じ人物の行動、その情態光景を太(いた)く変えて読者に見せること
- 省筆ー長い説明の必要な事柄を再び言わねばならぬ場合、たとえば他の者に立ち聞きさせて筆を省き、あるいは地の文章ではなく、その人物の口中より説き出す方法を取れば冗長にならず、読者もまた退屈しない。
- 隠微ー筆外の深意、秘したる真意
このような法則があることに気づくらしいです。曲亭馬琴が考え抜いて書いた大作であることがわかります。題名の「秘密の花園」とは息子の宗伯と共に世話した庭の花たち、庭の花園と小説の中にもちりばめられているものだと思いました。
「驕り高ぶって治める世は長続きしたことがない。これは宇宙の法則、理となる。満つれば虧く(かく)。だがわしはそれを賢(さか)しらに書いて警告などしない。筆の真意は、行間に咲く花に秘するもの」
と書いてあります。本当の秘密の花園は長い長い小説の中の行間にちりばめられていたのですね。難しい漢字が出てきました。それでも最後まで読んで曲亭馬琴の生きざまに感動しました。
2024-11-22(金) 図書館資料 請求番号:913/アサ