高田郁作「あきない世傳金と銀3,4,5,6」を読みました。4冊まとめてのアップです。「あきない世傳金と銀1,2」はこちらです。9才で大阪天満の呉服商「五鈴屋」に奉公に出された「幸」は五鈴屋4代目徳兵衛に嫁ぎましたが、夫が亡くなり5代目徳兵衛(二男惣次)に「日本一の五鈴屋」にするので一緒に力を貸してほしいと望まれて再婚しました。最初は良かったのですが、自分が課した「日本一の五鈴屋」という重責から焦りも加わり失敗しました。惣次は行方不明になります。あとは三男智蔵に五鈴屋も幸をも託しました。幸は3度結婚しました。後に同じ呉服商の桔梗屋さんが
「自分よりも秀でた女房を持つ、というのも善し悪しや。ともに生きる不幸よりも、離れて生きる不幸を、惣次はんは選ばはった」と言いました。
それにしてもだんだん良い旦那様に代わったのは良かったなと思います。しかし良かったのも束の間で、6代目徳兵衛智藏も亡くなります。その頃は女性の地位が低くて女の人は店主にはなれない決まりがありました。いろいろな苦労の末に2年間臨時の店主になって腕を振るいます。店の者全員で力を合わせ、江戸に店を持ち「日本一の五鈴屋」という夢に向かって必死で知恵をしぼり働きました。次から次へと難題があるものだなと感心しますが、一人一人の人生もこのようなドラマがあるのだろうなとも思います。ほっとするのは悲しい時も嬉しい時も鳥の鳴き声がして、しばらくはのんびりとそちらへ耳を澄まし心持が穏やかになる時です。こんな風に鳥の鳴き声が聞こえるのかなぁと思いました。
ひーよ ひーよ 「ひよどり」
前栽の楓の枝に「山雀」が留まり、つつぴー つつぴーと陽気に歌っている。
きょきょきょ きょきょきょ 甲高い鳴き声「嫁起こし」の異名をもつ「夜鷹」
ちりり ちりり 渡りの途中の黄連雀
ぴぃちく、ぴぃちく ぴゅるる、ぴゅるる 「雲雀」が歌う
一筆啓上、仕り候 一筆啓上、仕り候 「頬白」 楓の枝に止まりさえずりを披露
長兵衛、忠兵衛、長忠兵衛 とまるで人の名前を呼ぶような「めじろ」の囀りが聞える
ツーピー、ツツピー ツーピー、ツツピー 「四十雀」
つくつくほーし 「法師蝉」
また物売りの声も面白かったです。
「天満名物 天神大こーん 皮のうすーい 甘い甘い大こーん」 美味しそうに聞こえるように知恵を働かせています。
「丙寅(ひのえとら) 大小柱暦 丙寅 巻暦い」 暦売りの声
「とんとん、とんがらし とんがらしの 根引きよぅ」 唐辛子売りの哀愁を帯びた売り声
「わかえびすぅ 、わかえびすぅ 新しい年、新しい札、 わかえびすぅ」 若戎の札売りの声
「しじみぃ しじみよっ しんじみ、しんじみよっ」 シジミ売りの子供の声
それからテレビで観たことのある「大阪締め」
「打ちまーしょ もひとつせ 祝うて三度」
このお話を読んでいるとやはり適材適所が大切だと痛感します。自分に与えられた長所、使命を存分に発揮することが大事です。高校の同級生で主人公「幸」に似ている友達がいます。気働きがあって優しく、きれいです。本を読んでいるとその友達が目の前に浮かんできます。年が明けたら会って話したいなと思いました。
幸の故郷「摂津国武庫郡津門村」の木綿、江州長浜中庄の羽二重、伊勢木綿など縁のある地方から上質の木綿や絹を仕入れて、「買うての幸い、売っての幸せ」を目指して奮闘します。私も「買うての幸い」を探して1月2日に福袋を買いに行きましょう。そしてまた「あきない世傳金と銀7、8、9と読み進めようと思います。
今年もつたないブログを読んでいただき、コメントをいただきありがとうございますm(_ _)m とても励みになりました。それと良書を薦めていただきありがとうございます。今年も沢山の本に出合うことが出来ました。
どうぞ皆様、良いお年をお迎えください。
2021-12-27(月) 図書館資料 請求番号:B/913/タカー3、タカ―4、タカー5、タカ―6