Sera の本棚

感動した本のことや映画を見たり、コンサートへ行ったりした感想、高槻の写真など記録できたらいいなあと思います。

扉の向う側ーヤマザキマリ作

2025-01-21 16:36:08 | 

ヤマザキマリ作「扉の向う側」を読みました。ヤマザキマリさんは14歳でヨーロッパ1人旅をしてから世界各地で暮らして来られました。札幌、フィレンツェ、ナポリ、シリア、パリ、キューバ、リオデジャネイロ、シカゴ、ブラジルなど新しい場所で新しい扉を開けるたびに、いろいろなドラマがありました。家族のこと、新しい発見、出会いなど感動することばかりです。そこにマリさんの挿絵がとてもよくはまって、生き生きしていて、川の絵では流れているように見えて、人物の絵ではそこに佇んでいるように見えて、海外を疑似体験出来て、登場人物とは昔からの友達のような感覚になりました。今までにもマリさんの本は何冊か読んでいるので、知っていることもありました。キューバにボランティアへ行かれた時は15人家族の家に居候されていました。その家にはお皿が3枚しかないので、5回に分けて食べるそうです。ベランダのテーブルに象の形をした可愛らしい陶器の灰皿があったそうです。マリさんが奥さんに「これかわいいですね」と伝えると、奥さんは「新婚旅行で行ったサンティアゴで買ったのよ」と愛おしそうな目を灰皿に向けたまま微笑んだそうです。「殺伐としたその家の中で、色といい形といい際立った存在感があった」そうです。マリさんが帰国の日、空港で子供たちが「大したものじゃないんだけど、これキューバと私たちの思い出に渡してくれって両親から」と新聞紙で包まれたものを差し出して「でも恥ずかしいから飛行機の中に入ってから見てほしいって」。それは「象の灰皿」だったのです。マリさんは飛行機の中で、体を屈めてしばらくの間誰にも気がつかれないように、黙って泣いたそうです。私も涙があふれてきました。これはオーヘンリー作「賢者の贈り物」だと思いました。このようなお話が28話掲載されています。お話と絵とどちらも心に響きました。

2025ー1ー21(火) 図書館資料 請求番号:913/E/ヤマ

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ムスコ物語ーヤマザキマリ作

2025-01-14 10:39:58 | 

「ムスコ物語」ヤマザキマリ作を読みました。「小説幻冬」連載に書き下ろしを加えて書籍化されたものなので、息子デルスの成長に合わせて順序良く書かれたものではありません。その時々の息子が登場します。ヤマザキマリさんは14歳でヨーロッパ一人旅、17歳で高校中退してイタリアへ留学、27歳でシングルマザーになりました。この本に「どんな苦労もしておくことでやがて役に立つ」と書かれています。集中力があってのめり込むタイプなので、様々な経験をされています。息子のデルスという名前は、極東ロシアの少数民族からつけられたそうです。「東シベリアの大地で、家族を失ったあとも大自然に守られながら生きる狩人の名前を彼につけようと決めたのは、人間社会が唯一の人間の生息場所だと思ってほしくなかったからだ。」と書かれています。デルスは親の都合で、日本、シリア、アメリカ、ポルトガル、イタリアなど点々としています。そしてとても優秀で数学もよくでき、もちろん言語も多数話せて、宗教にも興味を示して、スロヴェニアにある小乗仏教の寺を訪ねたほどです。ヤマザキマリさんは「私には子育てをしてきた自覚も一区切りついた達成感も何もない。本当になるようになっただけとしか思ってないし、これからもそうだ。」と書かれています。デルスの言葉にすかさず突っ込みを入れるマリさんが面白くて、それに返すデルスも面白くて、素晴らしい親子関係だと思いました。とにかく面白い。もう一度子育てをしてみたいと思わせる本でした。まだまだヤマザキマリさんの本を読みたいです。

2025-1-14(火) 図書館資料 請求番号:726.1/ヤ

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虹を待つ(駆け込み寺の女たち)ー遠藤彩見作

2025-01-08 11:22:26 | 

「虹を待つ」遠藤彩見作を読みました。5編の連作時代小説ですが、私は1つの小説として読みました。江戸時代は女性からは簡単には離婚が出来ず、どうしても我慢ならない女性は「縁切寺」に駆け込みました。駆け込んでくる女性は本当に様々な人生模様です。昔の話としてだけではなく、今も同じように苦しんでいる人が多いのではと思います。夫婦のことはなかなか表には出てこないのでわかりません。最近は離婚率が高いので、離婚したければできると言う点は改善されました。縁切寺の上州満徳寺には尼住職慈白という徳川家のお姫様だったらしい方がおられます。上品で思慮深く、駆け込んだ女性に相応しい対応をされるのが、本当に知恵のある愛情深い女性だと思いました。日々の生活の中でその人にとって何が幸せかを考えさせられます。そうしていろいろなことに気づき、自分の道を歩む女性の姿は安心して見送ることができました。駆け込み寺を人生の雨宿りだとして、自分の行く末を考え、ゆっくり虹の出るのを待つ女性たちでした。面白かったです。

2025-1-8(水) 図書館資料 請求番号:913/B/エン

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CONTACT ARTー原田マハ作

2025-01-07 16:49:08 | 

「CONTACT ART」原田マハ作を読みました。日本の美術館のコレクションは奇跡の連続と書かれています。素晴らしいアートにコンタクトして次世代へ伝えてくださいとも書かれています。そしてCONTACTの心得も書かれています。

  1. 鑑賞前、荷物は預ける
  2. 美術館のライブラリーを利用してみる
  3. 鑑賞後、ミュージアムショップでポストカードを2枚買う
  4. 美術館の建築も楽しむー全容が見える場所に立つ
  5. 知識や解説を頼らないー心の窓を開ける
  6. コンタクトは1回限りではない

この次、美術館へ行くときはコンタクトの心得をしっかりと守って楽しく鑑賞したいと思いました。美術館へ足を運ぶことが次世代へ伝えていく手だてにもなるのだと思いました。この本には国内外の18人の画家の絵を紹介されています。絵を見るたびにこちらの解説を読んだら毎回違う視点があり、感想も変わりそうです。早く美術館へ行って絵に出合いたいと思いました。

2025-1-7(火) 図書館資料 請求番号:720.4/ハ

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トラットリア・ラファーノー上田早夕里作

2025-01-06 13:09:32 | 

兄弟で営むレストラン「ラファーノ」はJR元町駅の北側の雑居ビル5階にあります。兄がシェフ、妹がパティシエ、主人公がホール係。神戸のお洒落な街のレストランでの物語です。いろいろなお料理やデザートが出てくるので、BGMを聴きながらお料理をいただいている気分を味わえます。そこまではすごくいいのですが、主人公の同級生2人が表れて昔の思い出話から三角関係を匂わせる展開になり、ハッピーエンドですがちょっと物足りない感じがしました。

ー「僕の兄と妹は『お客様の人生に、ささやかな刺激と楽しみを添えられるように』という願いを込めて、店名を〈ラファーノ〉としました。僕たちは、その名の通りにサービスできたでしょうか。〈ラファーノ〉はおふたりにとって、人生における、よき添え物となってくれたでしょうか。」ー本文より抜粋

「ラファーノ」を調べたらワサビのことらしいです。「ちょっぴり辛くて、刺激的で、すべてのお料理を、これ以上なく引き立ててくれました。」と答えが返ってきたので、こちらの小説も大感動というほどではないけれど、ちょっぴり辛くて刺激的で良かったのだなと思いました。上野早夕里さんは他にも神戸のフランス菓子店のお話を書かれているようなので読んでみたいなと思いました。

2025-1-6(月) 図書館資料 請求番号:913/B/ウエ

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江戸大名庭園は挑むー菊池正芳作

2025-01-05 10:37:58 | 

喪中につき新年のご挨拶を控えさせていただきます。今年もどうぞよろしくお願いします。

新年最初の記事は本の記録です。「築地浴恩園を公園にする市民の会」の方とFacebookで友達になり、応援するには内容を詳しく知らないと無責任だと思ったのでいろいろな本を読んでいます。「江戸大名庭園は挑む」菊池正芳作を読みました。築地の浴恩園は松平定信公の下屋敷の庭園でした。「天下の名庭園」として世界遺産級の宝物だそうです。残念ながら現在は跡地が残るのみです。この本には浜離宮恩賜庭園の修復と復元のことが詳しく書かれています。修復・復元は大変な作業で、よくできたなと思いました。苦労されて復元したにもかかわらず、入園者が少なかったそうです。それから大名庭園の魅力を伝える取り組みを始められ、ライトアップ事業や庭園ガイドボランティア養成講座が出来ました。「維持存続は地域の人々に守られてこそ」とも書かれています。地域の人々に親しまれ愛され、理解と協力を得て次世代につないでいくことが大事だとも書かれています。築地浴恩園を公園にする市民の会に地元の方が沢山参加されて良い公園になればいいなと思います。

2025-1-5(日) 図書館資料 請求番号/629.2/キ

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京都ー黒川創作

2024-12-09 11:33:33 | 

友達のお薦めで黒川創作「京都」を読みました。4つのお話です。

  1. 「深草稲荷御前町」
  2. 「吉田泉殿町の蓮池」
  3. 「吉祥院、久世橋付近」
  4. 「旧柳原町、ドンツキ前」

高度経済成長期の頃の京都のことが描かれています。地理が詳しく書かれていて、地図が読めて京都に詳しい人はもっと面白いだろうと思いました。地図のわからない私は京都育ちなのでだいたい想像して読みました。前田良造の父親は小児科開業医で中学のPTA会長です。良造は競輪選手になりたいと高校を中退、アナトール・フランスの「いつの世も、幸福と不幸の絶対量は同じである」という考えに良造は共感しています。「同じ出来事が、ある者(もん)には幸福を、別の者には不幸をもたらしたりする。つまり、幸福とか不幸ていうのは、結局のところ、同じものごとの、それぞれの1面からの見え方で、その全体を考えたら、幸福と不幸は常に同量やとー」 高瀬川は細く長く汚い流れだったと書かれています。そんな時があったのかと驚きました。同じような名前が出てきてややこしかったりしたので、こちらに掲載する前に、もう一度ざっと読み返しました。深く考えさせられる小説でした。そういう歴史の上に今の京都があるのだなと思いました。現在京都で活躍されている「新洗組」というボランティアグループがあります。早朝から高瀬川をお掃除されています。そのおかげできれいな高瀬川を見られているのだなと思いました。京都が身近なだけにいろいろな思いを持ちました。

2024-12-9(月) 図書館資料 請求番号:913/クロ

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かみそり同心松平定信(上・下)ー藤村与一郎作

2024-11-30 16:04:56 | 

フェースブックで長屋しずこさんという女性と繋がり、友達になりました。その方は築地市場跡地を公園にしようと活動されています。その活動に私もZOOMで2回参加しました。築地市場跡地にはもとは松平定信公が作られた「浴恩園」というお庭があったそうです。私は知識がないので応援するには少しは松平定信公のことや浴恩園のことを知らなくてはと思い、まずは面白く書かれた小説を読み、松平定信公に興味を持てるようにと思いました。藤村与一郎作「かみそり同心松平定信上・下」を読みました。テレビで観る時代劇でした。読み始めるとすぐに浴恩園のことが出てきて、身近に感じられました。こちらの本は松平定信公が老中を辞められ、奉行所の同心になってからのことが書かれています。捕物帳です。題名に「かみそり」とあるだけに切れる人物で高潔な尊敬できる方でした。ちょっとだけわかって興味も出てきたのでもう少し違う本をいくつか読もうと思います。長屋しずこさんのお薦めの本もあるのでそちらを読もうと思います。浴恩園とは松平定信公の下屋敷の潮入りの庭園で「天下の名庭園」と言われています。春風の池、秋風の池がある池泉回遊式庭園です。今築地市場が移転し、そこにスタジアムや商業施設が建つ計画があります。まずは浴恩園の遺跡発掘をしてほしいと要望されています。
築地浴恩園を公園にする市民の会」のホームページを立ち上げられています。ご覧ください。

現地視察会もあるそうです。

参考資料
水の都市 江戸・東京

ランドスケープデザイン No.157 マルモ出版 ネットショッピング

天下の名庭園、私も見たいです。

2024-11-30(土) 図書館資料 請求番号:913/B/フジ、フジー2

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秘密の花園ー朝井まかて作

2024-11-22 18:05:06 | 

以前「曲亭の家」西條奈加作を読みました。曲亭馬琴の家に嫁いだお路が主役の小説でした。今回読んだ「秘密の花園」朝井まかて作は曲亭馬琴が主役の小説です。武士の家に生まれついた滝沢馬琴が戯作者になっても武士としての心得がいつも心の中心にあり、芯は通っているのですが生きずらかっただろうなと思います。「南総里見八犬伝」を完成させるまでには人とのつながり、裏切りいろいろありました。挿画を葛飾北斎が担当したりその当時の有名人が沢山出てきて、このようなつながりがあったのかと「へぇ~!」と感心しました。
大作「南総里見八犬伝」を最後まで読んだ暁には

  1. 主客ー主人公と脇役
  2. 伏線ー後に出す趣向を数回以前に些か墨打ちしておくこと
  3. 襯染(しんせん)-眼目たる妙趣向を出そうとする時、数回前よりその事柄の基本来歴を仕込んでおく。
  4. 照応ー作者が意図的に前の趣向に対を取るもの
  5. 反対ー同じ人物の行動、その情態光景を太(いた)く変えて読者に見せること
  6. 省筆ー長い説明の必要な事柄を再び言わねばならぬ場合、たとえば他の者に立ち聞きさせて筆を省き、あるいは地の文章ではなく、その人物の口中より説き出す方法を取れば冗長にならず、読者もまた退屈しない。
  7. 隠微ー筆外の深意、秘したる真意

このような法則があることに気づくらしいです。曲亭馬琴が考え抜いて書いた大作であることがわかります。題名の「秘密の花園」とは息子の宗伯と共に世話した庭の花たち、庭の花園と小説の中にもちりばめられているものだと思いました。

「驕り高ぶって治める世は長続きしたことがない。これは宇宙の法則、理となる。満つれば虧く(かく)。だがわしはそれを賢(さか)しらに書いて警告などしない。筆の真意は、行間に咲く花に秘するもの」

と書いてあります。本当の秘密の花園は長い長い小説の中の行間にちりばめられていたのですね。難しい漢字が出てきました。それでも最後まで読んで曲亭馬琴の生きざまに感動しました。

2024-11-22(金) 図書館資料 請求番号:913/アサ

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グランドシャトーー高殿円作

2024-11-16 18:45:17 | 

「グランドシャトー」高殿円作を読みました。第11回大阪ほんま本大賞を受賞しています。1960年日本が高度経済成長期の時代からバブル時代を経ての大阪の下町、京橋にあったキャバレー「グランドシャトー」の人生模様です。母親に3度も捨てられることになる主人公「ルー」とルーが姉のように慕う「真珠」の物語。キャバレー「グランドシャトー」では真珠が圧倒的にNO.1で、ルーがNO.2にのし上がります。2人が住んでいるのは大阪梅田の中崎町の長屋でした。中崎町は奇跡的に戦火を逃れ、長屋や狭い路地が残っています。偶然、今日テレビを観ていたら、タレントのナジャさんが中崎町を歩いておられました。ナジャさんはこの近くにお住まいだったそうです。長屋もあり、狭い路地にお地蔵さんや祠があり、テレビの中に本の世界が映し出されました。これは奇跡?と思いました。想像してだいたいわかっていましたが、目の前に本物の世界が、本物の物語が、ルーと真珠の姿が見えて、息遣いも聞こえた気がしました。とても切ない物語です。苦労はしても決していじけない強さと人の気持ちに寄り添うやさしさを教えられました。

2024-11-16(土) 図書館資料 請求番号:B/913/タカ

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