あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 第6次瀬戸内カヤック横断隊_祝島~上関

2008年12月06日 | 旅するシーカヤック
2008年12月1日(月) 上関を出発し、祝島を一周してから、漁港の端っこにある小さな浜に静かにゴール。

祝島の方々が準備していただいた3カ所のお風呂に別れて順番に入らせていただき、潮を抜き、疲れた体を癒す。
風呂から上がり、乾いたウエアに着替えるとホッとする。 
***
夜は、祝島の方々がセットして下さった歓迎会。 本当にありがたいことである。 感謝、感謝。
近くで採れたイカやヤズの新鮮でおいしい刺身。 祝島豚のハンバーグ、旨い!
差し入れの牡蠣。 室津のてんぷら。 ご飯に豚汁。 いやあ、ビールが美味い!

途中からは席を移動し、神舞の時にお世話になった方々との宴。

『こんにちは。神舞ではお世話になりました』 『おう、来とったんか!』 どうやら顔を覚えておいて下さったようだ。 うれしい限り。
今年は、これで5回目の祝島訪問である。 ビワ狩りツアー、櫂伝馬の練習、入船神事、出船神事、そして今日の横断隊ゴール。 いやあ、我ながら良く通ったものだ。
『神舞の櫂伝馬は、本当に良い経験をさせてもらいました。 本当に楽しかったですよ』 『次もまた頼むよ』
『ええ、もし漕がせてもらえるんならぜひ』 『どんどん人が減っていくからのう。 次のときは、茅刈りから来てもらいたいの』 『そうですよね。 あれは大変そうですもんね。 お年寄りの方が多いのにスゴいと思いながら、ホームページを見よりました』

『それにしても、次はもっと練習して、櫂をきれいにそろえて漕ぎたいですねえ』 『ほうよのう』
『昔は櫂伝馬競漕もしよったんですか?』 『うん。 神舞の行事が終わって、港に戻る時に競漕しよった。 今年はやらんかったなあ』

『広島の大崎上島では、今でも櫂伝馬競漕をやっちょるそうですよ。 本格的な競漕で、若い人らが年に3回の大きな大会で競いよるそうです。 長い距離になると、1.2kmも漕ぐそうです』 『それは凄いな。 祝島じゃあ若い人も少ないし、なかなか難しいのう。 じゃが昔は、祝島でも10艘を越える櫂伝馬が出よった頃もあったんよ』
『それは凄かったでしょうねえ。 見てみたかった』 『そういやあ、櫂伝馬が足りずに木江いうところに借りに行ったこともあったよ』 『木江! そこが大崎上島ですよ!』 『ほうね。 わしが船を出して借りに行って、引っ張って帰りよったんよ』

いやあそうか、祝島と大崎上島が、こんなところで繋がっていたんだ。
なんだかうれしいな、今日は本当に来て良かった。 『あるくみるきく_旅するシーカヤック』

『大崎上島の人が、櫂伝馬好きの人を集めて競漕しようと企画しておられるんですよ。 練習して出られると好いですね』 『ほうじゃのう。 でもここの櫂伝馬は、神舞の時しか出しちゃいけんというきまりになっとるんよ。 だから競漕も、神舞が終わったあとなんじゃ』 『なるほど。 そういう難しさがあるんですね。 でもせっかくなんでしっかり練習して、神舞の後の競漕くらいは復活させたいですね』

祝島や神舞、櫂伝馬にまつわる楽しい会話を肴に、おいしい濁り酒を酌み交わし、楽しい夜の宴は続く。
***
2008年12月2日(火) 横断隊ゴールの翌朝。 祝島の美しい日の出。

9時過ぎ。 ウエアに着替え、荷物のパッキングを始める。 明日から仕事で朝も早い。
一足早く帰るため、午後からのイベントに参加する他の隊員達と離れ、独りで上関に漕ぎ戻ることにしている。

準備をしていると、一人のおばあちゃんがやってきた。 『あんたら、これで来たんね?』とシーカヤックを指差しながら隊員達に話しかけている。 『ええ、そうなんですよ』と一人の隊員が応える。

私も話の輪にまぜていただく。
『私ももうすぐ88歳になるんよ』 『じゃあ、米寿じゃないですか。 おばあちゃん、元気ですね』
『祝島は昔と変わりましたか?』 『いやあ、ここは田舎じゃもの。 そーんなには変わっとらんよ』
『え、そうなんですか』 『でもね、前は漁港がなかったから、この浜に船を揚げよったねえ』 『じゃあ、昔はここにずらっと船が揚がっとったんですね』
『そうよ。 ここに轆轤があるじゃろう。 これに木の棒を刺して、みんなで回して船を揚げよったんよ』 『なるほど』

『おばあちゃんも手伝いよったんですか?』 『ほうよ。 私もじいちゃんと一緒に漁に出よったからねえ。 昔は畑じゃ食べられんかったから、海に出てタコを捕ったり、鯛を釣ったり』
『今も息子が漁をやりよるけど、大分採れる数が減っとるねえ』 『活きとるタコは漁協に卸して、残ったタコは干物にして』
『今でも漁に出たいねえ』

もうすぐ88歳になるという祝島のおばあちゃん。 おじいちゃんと一緒に漁に出ていた頃の事は、良い想い出なんだろうな。

『じゃあ、気をつけて行きんさいよ』 『はい。 おばあちゃん、楽しい話を聞かせてもらってありがとう』
***
10時。 他の隊員に挨拶し、独り祝島の浜を漕ぎ出す。 今日はべた凪で、最高のコンディション。

のんびりツーリング気分で景色を楽しみながら、岸沿いを漕ぎ進む。

約2時間半で、クルマをデポしておいた中の浦へ到着。 私にとっては、第6次瀬戸内カヤック横断隊の本当のゴールである。

嵐の中を漕ぎ、蒲刈の方々に篤いサポートをいただき、高速道路を移動し、祝島の山道を登り、祝島の方々との楽しい宴を楽しんだ。 海抜0メートルの旅に加え、様々な想い出の詰まった今回の横断隊。
サポートを頂いた多くの方々、そして一緒に漕いだ隊員達へ。 本当にお世話になりました、ありがとうございました。

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