あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 上島町連泊ツーリング_魚島訪問(2)

2008年12月16日 | 旅するシーカヤック
2008年12月14日(日) しまなみ連泊ツーリング、2日目。
午前5時。 生名島のキャンプ場のシュラフの中で目を覚ます。 外に出ると、少し風があり雲も多いようだ。
最新の天気予報を確認すると、昼前後から晴れてくるとの事。 ようし、この様子なら晴れて観光日和になるだろう。 予定通り魚島に行ってみるとしようか!
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ヘッドランプを点けて簡単な朝食を済ませ、着替えて、自転車で生名島の立石港へと向かう。 ここからフェリーに乗り、因島の土生港へ。 今日は人だけなので、片道60円。 安いものだ。
土生港から数分歩いて、しまなみ航路のハブ港である中央桟橋。
 
朝焼けの桟橋に独り佇み、定期船の到着を待つ。
定刻の約10分前、『ニューうおしま2』が到着。 比較的新しい船体がなんとも頼もしい。 同乗の乗客は、そのほとんどが本格的な釣り道具を持参した釣り客である。
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魚島へと向かう途中、豊島を経て高井神島へ寄港。 初めて見た高井神島は、印象的な風景であった。

ほとんど平地がない島の北側の斜面に、へばりつくように集落がある。 ここに、約50人の方が住んでおられるとの事。
学校はあるが、おそらく飲み屋さんも、スーパーも、その他の娯楽施設もないであろう。 ここでの生活は、どのようなものであろうか? 今回は魚島訪問だが、次回はぜひ時間を取ってこの高井神島を訪れてみたいものである。
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僅かな荷物を下ろすと、ニューうおしま2は高井神島を出航し、魚島へ。
警笛を鳴らし、魚島港へ入港。 港には人影は少なく、静かな離島のイメージそのままである。
今日は特に予定はない。 午後1時過ぎの帰りの便まで、のんびりまったりと島を散策するのみである。
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島の短いメインストリートをプラプラと歩いていると、あちらこちらに魚が干してある。 これは『デベラ』かな?
魚島漁協の建物の所に来ると、干した魚を吊り下げた木枠を運んでおられるおばちゃんが居た。
『おはようございます。 これは、デベラですか?』 『そうよ』 『あそこに干すんですか?』 『そうそう。 最近は、夜露がおりるじゃろう。 じゃから、毎朝ここに出して干すんよ』
 
『そりゃあ大変ですね』と、私もデベラを吊るした木枠を運ぶのを手伝いながら、お話を伺った。
『デベラは冬ですか?』 『そう、12月から3月までじゃね。 それから後は禁漁になる』 『じゃあ、季節によって漁は変わるんですか?』 『うん。 春は鯛やイカ巣漁。 夏はタコ。 そして冬はデベラ』
運んだ木枠を渡すと、『これはねえ、誰のかによって、干す場所が決まっとるんよ。 これはだれのじゃろうね』 『なるほど。 ここに名前が書いてありますよ』
 
『これはねえ、カラカラに乾くまで干さんといかん』 『大きいのはそのまま炙って食べるし、小さいのは衣を着けてテンプラにしたらおいしいよ。 衣には、少し砂糖を入れるんよね』 『ちいさいのはねえ、小さく切って佃にしてもええんよ』 『うちのデベラは、この小さいのでも内蔵を取ってあるん。 これは手間がかかるけど、やっぱりおしいいよ』

木枠を運び終わり、全部を吊るすと、今度は木枠どうしを縛っている。 『なんで縛るんですか?』 『そりゃあね、風が吹いたらぶつかるじゃろ。 そうならんように縛るんよ』

『漁は昔と変わりましたか?』 『私らが娘じゃったころは、魚は凄い採れよった。 今は、だいぶ少のうなったよね。 人も昔は多かった。 学校でも、今は生徒が5人くらいしかおらんけど、昔は1クラスに数十人おったよ』
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漁のお話を伺いながら、ふと建物の中を見ると、散髪屋さんのものらしい椅子が。

『あれって、散髪屋さんの椅子ですよね?』 『そうよ。 ここには月に一度、伯方島から散髪屋さんが来るんよ。 二階はパーマ屋さんになる』 見ると、2階にはパーマ用の懐かしい釜が見える。 いやあ、月に一度の出張散髪屋さん。
どんな光景が繰り広げられるのか、拝見してみたいものである。
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『いろいろなお話を聞けて楽しかったです。 ありがとうございました』 おばちゃんにお礼を述べ、島の散策に向かう。
おばちゃんによると、島の食堂は休業中と言う事で、唯一ある商店に寄り、パンを購入。 その商店で道を教えていただき、景色が良いという石鎚公園への道を登っていく。

『初めての土地では、高い所に登ってみよ』 宮本常一のお父さんの言葉をここでも実践。
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亀居八幡宮に参拝し、石鎚公園を通り、島をグルリと廻る道を歩く。 ここからの眺めは最高である。
 
南に開けた瀬戸内海の風景。 瓢箪島の眺め。 瀬戸内らしい雄大で静かな風景が、独り静かに堪能できる。

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約1時間半の散策で、港に戻って来た。
 
漁港らしく、あちらこちらに蛸壺や漁網が置かれている。 船の燃料は、給油した人がそれぞれ名前と給油量を記録するシステムになっているようだ。
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帰りの船までまだ2時間ほどある。 今度は集落の中を散策してみる。

狭くて急坂ばかりのこの島では、手押し車が必需品だ。 クルマなんて、ほんの僅かのメインストリートしか走ることはできない。 家と家との間になる狭い通りは、手押し車の独壇場である。

このあたりは、上島町のガイドブックによると石垣の町並みが有名だとの事。 坂を登るが、なかなか石垣が分からない。
たまたま出会った方に聞いてみた『あのう、このあたりは石垣が有名だと聞いたんですが?』 『ん、石垣? そういやあ、何日か前の新聞に出取ったなあ』

『あんた、どっから来たん?』 『はい、呉からです。 昨日は生名に泊まって、せっかくなんで今まで来たいと思っていた魚島に来てみたんです』
『ほうか。 石垣は、あっちの方よ』と、庭から出て道を先導していただいた。 歩きながら、魚島の事をいろいろと伺う。
40年程前は、魚がとてもたくさん採れていた事。 ここは、瀬戸内の東西の真ん中でもあり、南北の真ん中でもある、まさに瀬戸内の臍のような場所である事。 魚島というのは、魚が盛り上がるほど集まっていた事が名前の由来で、柳田邦男の著書にも出ている事などなど。
『じゃあ、ここも大分人が減ったんでしょうね。 空き家も多いんですか?』 『そうよ。 じゃけえ、空き家も増えとる。 関西からIターンして来た人も何人か居るよ。 釣りが好きな人にはええじゃろう。 あんたも、定年したら来てくれたらええんじゃけどなあ』
『新聞に出取った石垣は、もう一つ向こうの通りじゃ。 ここを上がって歩いてみたらええ』 『はい、ありがとうございました。 時間はあるんで、ゆっくりと歩いてみます』
短い時間ではあったが、様々なお話を伺えた。 ありがとうございました。 
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午後1時10分。 予定通り出航。 帰りは冬とは思えない暖かい日差し。 船のデッキに上がり、白い航跡が印象的な瀬戸内の船旅を楽しむ。
 
4時間ほどの滞在ではあったが、島のおばちゃんと、しんせつなおじさんに様々なお話を伺え、のんびりまったりの島時間と、瀬戸内らしい美しい景色を満喫。
今回の魚島訪問では、『あるくみるきく_旅するシーカヤック』を、たっぷりと堪能することができた。 いやあ、来て良かった!
魚島、いいなあ。 ぜひ次回はシーカヤックで訪問???

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