2010年4月23日 金曜日の夕方、ガラリと引き戸を開けて暖簾を潜る。 店内を見渡すと、まだ早いので数人のお客さん。
目の前に、いつもの常連さんが居られたので、ニコリと挨拶を交わし、『横、いいですか?』 『おお、ええよ』
椅子に座り、『キリン、大瓶で。 あと、皮ください』 『はいよ』
***
20年位前、結婚した当初は家でも瓶ビールだったが、十数年前から酒の安売り店が増え、そして発泡酒が主流になった今では、瓶ビールを家で飲む事が無くなった。 『瓶ビール』を持ち、コップに注ぐ。 久し振りの重みが心地良い。 『トクトクトクトク。 シュワワワワー』
いただきます! 『ゴクリ、ゴクゴク。 プハーッ』 うーん、美味い!
皿に、緩く溶かれたカラシを取る。 『あ、あと一味もらえますか』 『ほい』
『あわもり』名物、おでんの皮にはパラリと塩を振り、カラシをつけて口にいれる。 コラーゲンたっぷりで、独特の歯応えがたまらない。
皮は冷めるとまずくなるので、最初の注文は皮だけと決めている。 これを食べ終わるまでは、次の品は注文しないのが私の流儀。
***
『それにしても今年は変な天気ですね。 暖かくなったり、急に寒くなったり』 『ほんまよ。 この前テレビで言いよったで。 こんな寒いんは、六十数年ぶりじゃと』 『それによう雨が降りますね。 まるで梅雨みたいですよ』
横の常連さんと話しながら、ふとその方の皿を見ると、『たけのこ』が。
『おー、たけのこ、出たんですか!』 『ほうよ、入っとるで』
あわもりでは、春のごく限られた期間だけ、たけのこのおでんが供されるのである。 これが、ここ数年の楽しみの一つ。
そして、いつからいつまでと決まっているわけではないので、月に1~3回程度しか通わない私は、頃合いを見計らうのが難しいのだが、幸運な事にここ数年は、たけのこに会うことができている。 ラッキー!
***
そうこうしているうちに、おばちゃんも店に出て来られた。 いつものように笑顔で『あ、いらっしゃーい』
『今日はタケノコがあるんですね』 『ほうなんよ』 『一つもらえますか』 『先の方と根元の方、どっちがええ?』 『じゃあ、先の方を』
美味そうなタケノコのおでん。 溶きガラシに少し醤油を垂らして一口。 サクリとした歯応えと、独特の香ばしい味。
『いやあ、おいしいなあ。 これを食べると、春が来たって感じですよ』
『スジもらえますか。 脂スジを』 『こんにゃく下さい』 『お、ロールキャベツ、復活したんですか。 一つ下さい』
おばちゃんは、私の横の常連さんを見て、『あ、大瓶飲んどるね。 珍しい。 風呂にでも入ってきたん?』 『そうよ。 風呂上がりのビールは美味いわ』 『実はわしも銭湯に入ってきたんですよ。 地元の銭湯でサッパリしてからきました』と私。
『みんなええねえ。 風呂に入ってビールを飲んで。 仕事しよるのは私らだけじゃが』と、おばちゃんは笑う。
おっちゃんと俺は、顔を見合わせてニヤリ。 そしてビールをゴクリ。
***
ガラリと戸が開く。 見ると、これまた常連さんだ。
『こんにちは』 『おお、久し振りじゃのう。 どうしよったんか』 『いやあ、毎週海に行ったり、旅に出たりで忙しかったんですよ』
すると笑いながら、『他の店に浮気しよったんじゃないんか』 『いやいや。 わしゃあ、酒を飲むいうたら、家か浜か、この”あわもり”だけじゃけん』
『おっちゃんこそ、いろいろええ店に行きよってんじゃないんですか』とニヤリと笑うと、『呉の店か? わしゃあもう当分前に卒業したよ。 いっぱい授業料払うたけどのう』と笑う。
***
『あわもり、大で』 『氷水ももらえますか』 『平天ください』
『たまご一つ』 『あ、もう一回たけのこお願いします』
他愛のない四方山話をつまみに、泡盛を飲み、おいしいおでんを食べて、また泡盛。
店に入ってからちょうど1時間。 そろそろ引き揚げるとするか。 『すみませーん。 いくらですか』 『はーい、串何本?』 カチャカチャと算盤で計算された勘定を払い、『ごちそうさまでした』 『また来てね』
今年も幸運な事に、季節限定の”たけのこ”のおでんを楽しむことができた。 良い週末が始まる予感。
目の前に、いつもの常連さんが居られたので、ニコリと挨拶を交わし、『横、いいですか?』 『おお、ええよ』
椅子に座り、『キリン、大瓶で。 あと、皮ください』 『はいよ』
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20年位前、結婚した当初は家でも瓶ビールだったが、十数年前から酒の安売り店が増え、そして発泡酒が主流になった今では、瓶ビールを家で飲む事が無くなった。 『瓶ビール』を持ち、コップに注ぐ。 久し振りの重みが心地良い。 『トクトクトクトク。 シュワワワワー』
いただきます! 『ゴクリ、ゴクゴク。 プハーッ』 うーん、美味い!
皿に、緩く溶かれたカラシを取る。 『あ、あと一味もらえますか』 『ほい』
『あわもり』名物、おでんの皮にはパラリと塩を振り、カラシをつけて口にいれる。 コラーゲンたっぷりで、独特の歯応えがたまらない。
皮は冷めるとまずくなるので、最初の注文は皮だけと決めている。 これを食べ終わるまでは、次の品は注文しないのが私の流儀。
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『それにしても今年は変な天気ですね。 暖かくなったり、急に寒くなったり』 『ほんまよ。 この前テレビで言いよったで。 こんな寒いんは、六十数年ぶりじゃと』 『それによう雨が降りますね。 まるで梅雨みたいですよ』
横の常連さんと話しながら、ふとその方の皿を見ると、『たけのこ』が。
『おー、たけのこ、出たんですか!』 『ほうよ、入っとるで』
あわもりでは、春のごく限られた期間だけ、たけのこのおでんが供されるのである。 これが、ここ数年の楽しみの一つ。
そして、いつからいつまでと決まっているわけではないので、月に1~3回程度しか通わない私は、頃合いを見計らうのが難しいのだが、幸運な事にここ数年は、たけのこに会うことができている。 ラッキー!
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そうこうしているうちに、おばちゃんも店に出て来られた。 いつものように笑顔で『あ、いらっしゃーい』
『今日はタケノコがあるんですね』 『ほうなんよ』 『一つもらえますか』 『先の方と根元の方、どっちがええ?』 『じゃあ、先の方を』
美味そうなタケノコのおでん。 溶きガラシに少し醤油を垂らして一口。 サクリとした歯応えと、独特の香ばしい味。
『いやあ、おいしいなあ。 これを食べると、春が来たって感じですよ』
『スジもらえますか。 脂スジを』 『こんにゃく下さい』 『お、ロールキャベツ、復活したんですか。 一つ下さい』
おばちゃんは、私の横の常連さんを見て、『あ、大瓶飲んどるね。 珍しい。 風呂にでも入ってきたん?』 『そうよ。 風呂上がりのビールは美味いわ』 『実はわしも銭湯に入ってきたんですよ。 地元の銭湯でサッパリしてからきました』と私。
『みんなええねえ。 風呂に入ってビールを飲んで。 仕事しよるのは私らだけじゃが』と、おばちゃんは笑う。
おっちゃんと俺は、顔を見合わせてニヤリ。 そしてビールをゴクリ。
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ガラリと戸が開く。 見ると、これまた常連さんだ。
『こんにちは』 『おお、久し振りじゃのう。 どうしよったんか』 『いやあ、毎週海に行ったり、旅に出たりで忙しかったんですよ』
すると笑いながら、『他の店に浮気しよったんじゃないんか』 『いやいや。 わしゃあ、酒を飲むいうたら、家か浜か、この”あわもり”だけじゃけん』
『おっちゃんこそ、いろいろええ店に行きよってんじゃないんですか』とニヤリと笑うと、『呉の店か? わしゃあもう当分前に卒業したよ。 いっぱい授業料払うたけどのう』と笑う。
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『あわもり、大で』 『氷水ももらえますか』 『平天ください』
『たまご一つ』 『あ、もう一回たけのこお願いします』
他愛のない四方山話をつまみに、泡盛を飲み、おいしいおでんを食べて、また泡盛。
店に入ってからちょうど1時間。 そろそろ引き揚げるとするか。 『すみませーん。 いくらですか』 『はーい、串何本?』 カチャカチャと算盤で計算された勘定を払い、『ごちそうさまでした』 『また来てね』
今年も幸運な事に、季節限定の”たけのこ”のおでんを楽しむことができた。 良い週末が始まる予感。