記憶の歌
2016-10-06 | 詩
流行廃りに平然として見せる午後の時
すたれた歌を少女が口ずさみ
手にしていた糸を手放した瞬間
混濁した意識の虚構と共に
赤い風船が空へ舞った
とめどなく舞い散ったのだ
原型を留めぬ暮らしは
夢の残り香を懺悔させ
浮遊する幾千の音と共に時間が沈殿する
そう長くは無い
「左の手がしびれるのかい?」
男がふいに尋ねた
どうして知っているんですか?
男はかまわず言葉を続ける
委細かまわない
が、手のひらのほうかい、手の甲のほうかい?
指先に時々感覚が無くなるのです
確か
レントゲンでは頚椎の一部が磨耗していた筈だ
違うかい?
僕はため息をついて空に消えた赤い風船の記憶を想い出す
「しびれるのは左手だね。」
男が確認し満足そうにうなずいた
僕は肯定もしなければ否定もしなかった
まるである種の流行の歌が流れてきた空間の空虚な想い
友よ
歌っておくれ
その古びた歌を
酔いどれて哀しみが麻痺するまで
その瞬間だけ歌っていて
時間が濃密であれば長さは不釣合いかい?
君の歌は学級放送で流れた給食の三角パックの牛乳の様に
流行り廃りにはもううんざりなのが正直な所
少女が紡ぐ歌が甘美な柑橘系のエセンス
夏の終わりに見た夜景の寂しさ
午後四時に帰ろう
取りとめのない風景の描写
どうか
救っておくれ
記憶の歌の受戒に於いて
すたれた歌を少女が口ずさみ
手にしていた糸を手放した瞬間
混濁した意識の虚構と共に
赤い風船が空へ舞った
とめどなく舞い散ったのだ
原型を留めぬ暮らしは
夢の残り香を懺悔させ
浮遊する幾千の音と共に時間が沈殿する
そう長くは無い
「左の手がしびれるのかい?」
男がふいに尋ねた
どうして知っているんですか?
男はかまわず言葉を続ける
委細かまわない
が、手のひらのほうかい、手の甲のほうかい?
指先に時々感覚が無くなるのです
確か
レントゲンでは頚椎の一部が磨耗していた筈だ
違うかい?
僕はため息をついて空に消えた赤い風船の記憶を想い出す
「しびれるのは左手だね。」
男が確認し満足そうにうなずいた
僕は肯定もしなければ否定もしなかった
まるである種の流行の歌が流れてきた空間の空虚な想い
友よ
歌っておくれ
その古びた歌を
酔いどれて哀しみが麻痺するまで
その瞬間だけ歌っていて
時間が濃密であれば長さは不釣合いかい?
君の歌は学級放送で流れた給食の三角パックの牛乳の様に
流行り廃りにはもううんざりなのが正直な所
少女が紡ぐ歌が甘美な柑橘系のエセンス
夏の終わりに見た夜景の寂しさ
午後四時に帰ろう
取りとめのない風景の描写
どうか
救っておくれ
記憶の歌の受戒に於いて