眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

2024-05-30 | 
逃避した錯誤
 予感を孕ませ
  云えずじまいの言葉を
   飲み込んでしまう

 おそらくは
  世界の困惑を余儀なくされた瞬間
   神経が磨耗されるのだろう
    歯車にも似た
   耐えず混乱を予期させた
  不都合な解釈
 原因を探るのは無意味な事
座禅を組んだ
 背中と腰に鈍痛が走り
  わずか十分かそこいらの修業
   畳に寝そべって
    自堕落な我に塗れた

  僕は
   折れて使い物に為らなくなった
    羽の毛先を撫で
     飛べない空を見上げる
    惜しむらくは
   まだ飛んでいた記憶が生々しい傷跡
  賛美した祝祭は
 祭壇の前で生贄として捧げることになる
実際は
 多分 そんな物だろう
  夢見 破れ ひれ伏す
   安易な理想郷が設定された
    情報の困惑の中
     マネキンみたいな実存の無い
      磨耗した存在
     幾ばくかの
    幸せの形をしたニュースを
   必死に探し
  美食と旅の話ばかりを繰り返す
 辟易して
仏壇の前で線香を焚き
 思わず溜息を促す
  沈黙のありか 
   精神性は
    網戸の隙間から入ってきた蚊の音に悩まされる

   明日はまた平穏を装うのだろうか?

  折れた羽というのは
 けっこうかさばるよ
  かといって
   むしり取って捨てるには
    そんな勇気は僕にはないね

     だから
  
    僕等は希望を観測する

   風が強い日

  もう一度試さなくっちゃ

   飛べるかもね

 
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青のシグナル

2024-05-22 | 
優しい哀しみが嘘でないなら
 じっと黙って海を見ている
  重く垂れ込めた雲の下
   深い青を見つめている
    僕は煙草に火をつけ
     少女は水筒に入った珈琲を飲んでいる
      青は青のままで
       だから僕たちは永遠の青の住人だった
        全てが哀しみの憂いを帯びた青の世界だった

         絶望と希望の成分が一緒なんだ

          君は厳かにそう告げ
           祭壇に捧げる様にグラスの葡萄酒の赤をかざした

            古びた教会のステンドグラスの窓から
             微力な光が差し込んでいる
              今にも霧散する大気の中
               僕らの魂もまた無力だった

               君の故郷の海は綺麗なんだろうね

                僕は黙りこくって葡萄酒を飲み干した

                 忘れたよ、そんな昔のこと

                  君は僕の返事に満足して微笑んだ

                   きっと綺麗な青のはずだよ

                    そう云って
                     手のひらに十字架を握った

                    ね

                   祈ろう

                  何をさ?

                 世界が永遠に青である様に。

                だがしかし
               僕の手のひらには何も存在しなかった
              哀しいけれど僕は何ひとつも持てなかった
             古ぼけたラジオから流れる音楽だけが
            僕に魂のありかを教えてくれた
           君は僕に魂の無限を伝えようとし
          僕は君にルーリードの詩を伝えようとした
         教会の静けさの中
        僕らはただ葡萄酒が無くなるまで
       永遠について考察した

      永遠

     優しい哀しさのことをそう呼ぶんだよ

    君はそう云って存在を現象から乖離させようとした
   そして僕は君の魔法を信じていたのだ
  緩やかな螺旋
 魂の邂逅
その儀式の為
 僕らは葡萄酒を飲み続けた
  ラジオからヴェルヴェト・アンダーグラウンドの曲が流れた
   
   哀しみ

    君のいない世界を羅列する夜

     僕には捧げるものが何も無かった
      
      だから深夜三時にバーボン三杯分祈るのだ

       少女がギターで「哀しみの礼拝堂」を弾いた

        哀しみ

         優しく密やかな熟れた果実のたくらみ

          試行錯誤する夜が

           夜が青であるといい

            青い世界が永遠に続く様

             祈るのだ

              ウイスキー三杯分の祈り

               決して届かぬ想い達

                

                青の緩衝




                優しく哀しい青
















    

        
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17歳

2024-05-06 | 
やがて風に舞うだろう
 桜が満開した石畳の坂道で
  花びらに邪魔されながら写真を撮った
   マリア像は不思議な微笑を湛え 
    思春期の僕らはただ夢を追いかけた
     17歳の春
      戻れない過去
       今でも呼吸する記憶たち

        長い石畳の坂道に慣れるには
         余りにも脆弱な精神だったはずだ
          僕らは寮の屋根に上って
           煙草を吹かし
            永遠に喋り続けた
             まるで熱病のように
   
             砕け散る破片
            それを記憶と名付けるのなら 
           指向性のハンドルマイクの如く
          注意して録音に望まなければならない
         かつて少年と呼ばれた
        君の饒舌なアナウンス
       昼休みにマイク・オールドフィールドを流した君は
      赤い舌を出した
     消えないで
    どうかお願いだ

   画面がちらつく視野
  薄れ行く記憶
 魚たちの世界
井戸の中の化石

 封印された刻印
  散髪屋で同じ髪型にされた
   春が来る
    同じように17歳の時間が
     国会で民主的に可決された
      「異議なし」
        深夜ラジオを毎晩聴いた
         電気信号が遊覧される
          気紛れな君の所作
           造作も無い事
            僕は空き部屋で
             ただひたすらに油絵を描いた
              どうして17歳だったのだろう?

               僕らは音楽だけを信じた

              ジャニス・ジョプリン
             シド・バレット
            キング・クリムゾン
           レッド・ツェッペリン

          そうして
         あなたの名前
        ジョン・レノン
       僕らは世界を手中に収めた
      「グレープフルーツ」と「スイミー」を読んだ
      君はだらしなく制服をはおり
     僕はヒトラーの「我が闘争」を暇つぶしにした
    ルドルフ・シュタイナーに傾倒した10代は
   入学と同時に保護者との対面を余儀なくされる
  
  どうして
 17歳だったのだろう?
 永遠を信じた

やがて

 やがて桜の花びらが舞うだろう

  祝福された

   懺悔のように

    木魂する

     一片の詩

      「呼吸しなさい」

       僕らは

        17歳だった




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旅路

2024-05-01 | 
酔っぱらってグラスを割る夢を見た
 赤いワインが大量出血した血液の様に赤い溜まりを作った
  僕はそんな光景を何の感情もなく眺めている
   そんな夢だ

    君と旅に出た汽車の中で
     僕等は緑の瓶のハートランドビールを飲んだ
      駅の売店で購入したシュウマイをつまみにして
       他愛の無い戯言で笑った
        全席禁煙なのを知ってたかい?
         10年前に禁煙した君が皮肉に微笑んだ
   
          そのくらいの情報は知っているよ。
           
           なら禁煙すれば?

            紙煙草が駄目なら葉巻を燻らせることにするよ。

             僕の返事に呆れて君はビールを飲み干した
              汽車は何度か停車し沢山の人々が乗り降りした
               ぼんやりとそんな後継を眺めていた

                何時かは何時かにしか訪れない
                 過去は美化されやがて痛みが増えたり消えたりする
                  ただこの瞬間だけが世界だった
                   容赦の無い世界だった

                   宙空の中に満開の桜を見た
                    ごらん、世界はこんなにも美しいんだよ。

                    一瞬、黒猫の言葉が聴こえた様な気がした
                     僕は昔の様にグラスを路上に叩きつけるのだろうか?
                      酔っ払った足取りで舞台に向かい
                       おぼつかない手つきでギターを弾くのだろうか?

                       あの頃
                        近くの山から見える街の夜景が好きだった
                         あの沢山の灯りのひとつひとつに
                          それぞれの暮らしがあり人生がある
                           そんな風に想うと頑張れそうな気がした

                            いなくなった友人たちを想った
                             草原の中で
                              何度も彼等彼女等の名前を呼んでいた
                               けれども返事は無かった
                                やがて僕は彼等彼女等の名前を忘れた
                                 ただ呼び続けることだけが残った
                                  それが人生の大半になった

                                  ビールを飲み干してシュウマイを食べ終わると
                                   終点で僕等は汽車を降りた
                                    喫煙室を見つけて急いで煙草に灯を点けた

                                    僕等は駅からそう遠くない宿に辿り着いた
                                   温泉に入り
                                  それからビールを飲み続けた
                                 君が酔っぱらって
                                ジャニス・ジョップリンの歌を口笛で吹いた

                               あの頃の僕等はただ楽しくて
                              終わりが来るなんて誰も信じない

                            いつかまた
                           グラスを路上に叩きつけて粉々に割るのだろうか?

                          もう会えない君との旅の夢を見たんだ

                         元気そうで良かったよ

                        昼頃目覚めると

                       不思議と泣いていた

                      不思議と嗚咽が止まらなかった






















                
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