眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

意義

2008-01-31 | 
「でも大丈夫。
 あなたはすぐわたしを忘れるから。」

  誰かが呟くささやきに
   こころが壊れそう
    やがて警告を発信し状況に喚起を促し
     僕は催眠により記憶を磨耗される
      椅子の形は時折見せた絶望的な事象
       声は消えたんだ
        やがて
         舞台の幕が下りる
        カーテンコールが鳴り止まない筈が
       観客なんていやし無かったのだ
      滑稽なほどの沈黙で細部を嘗め回す
     暗転した映写機の画像ほどには苦しくなかったろうに
    始まりから終わりまでが全てデタラメだったのさ
   しおどきだよ
  誰かが哀れみを口元に浮かべて僕の戯言を浮遊させたのだ
 根拠のない愛情には
得てして自己愛が潜んでいるのだからね
 おどけてみせる道化師の役回りだからさ
  どうしようもないね
   独りは緩やかな滑稽な道化
    僕はテープレコーダーに今は無い声のありかを模索する
     どうしていつだってこうなのだろう?
      誰も居なくなる

       金色のスプーンでコンソメスープをすくう
        地雷原に足を踏み入れる慎重さで
         氷を口に含んだ
          泥酔した昼間
           青い空が哀しげに迷う
            いつかと同じだ
           失い記憶を失くし
          それでもなお化石の在りかを凝視する
         線香花火
        蚊取り線香の仄かな香り
       万有引力の法則は僕を地上に叩きつける
      パンを齧る
     ちぎったかけらを鳩の為に撒き散らす
    問題点は
   僕の存在意義にある
  果たしてそんな大層なものがありえただろうか?
 僕は僕であり僕でなく
誰かにとっては過去の空虚さの類に分類されるのだ
 嗚咽をいくら繰り返しても
  僕の存在意義などかけらも存在しない

   野良猫がましさ
    生きるあつかましさを知っている
     その点
      捨てられた飼い猫の惨めさときたら
       永遠に飼い主を求めさ迷い歩く
        言い換えれば
         それは神なのかも知れない
          褒めて貰いたかったんだ
           ただそれだけだったんだ
            空間に求める君のテーゼ
             君という存在意義を確かめようとして

            「でも大丈夫。
            あなたは僕をすぐ忘れてしまうから。」




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かけら

2008-01-23 | 
割れた鏡のかけらに光が乱反射した
 磨耗した仲介人の役割は
  その瞬間意識の断絶を容易せしむ
   役割が終わったのだ
    光は四方八方に広がり
     アンテナハもはや情報を入手できない

     チベットのラサに行ったことがあるかい?
      いい所さ
       高山病が難点だけれども
        チベット鉄道も開通したし
         なんてったって
          ダライ・ラマがいる
           そういって同居人は旅立った
      
      家の瓶にジェリービーンズが残った
     赤 青 黄色
    手のひらで転がして庭先の猫にあげた
   残る物は
  結局のところ奇妙に歪んでみせる空虚な空間
 部屋の一室だけを根拠に揺らいでみせる意識のかけら
割れた鏡の暗示
 光が拡散する
  
  空がさ
   やけに綺麗なんだそうだ
    夢見る居心地でソファーに座り
     チベットの寺院に想いをはせる深夜の郷愁
      あんたの帰る場所は案外とこんな所なのかもね

       実際そうなのかも知れない
        現実界への仲介者が役割を失う夕刻の時間
         ラサへ行く君と部屋に残る僕
          日常が続き或いは非日常に精神を弛緩さす

          「界隈は危険でね
            酒をやるなら部屋のほうが良い
             もちろん鍵はかけてね
              葉っぱもあるがお薦めはできないね
               依存性が高いし
                第一祈りのほうが無難なところさ」

          鏡を割って行ったのは君で
         部屋に残された僕は
        破片に写る被写体の如く
       哀しみの虚像を幾重にも重ね
      上手く眠れない夜には人間という役割を放棄するのだ

       僕は瑣末な意識に縛られる存在

        好きなものを好きとも云えず

         青い空を夢見る
        魚の影が泳ぐ鏡のかけら


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夢の時間

2008-01-16 | 
古い友人に連絡をとった。
最後に彼に電話した日は、たしか彼の母親の葬式の翌日だったと憶えている。電話越しの彼の声は時折混じる呻くような泣き声と、あきらかに泥酔しているおぼつかない言葉で、全く会話にならなかった。彼は、ずっと音楽をやっていて、何よりも歌うことを大事にしていた。仕事も定職という訳ではなく、だから母親にたいする後悔の念も多分あったのだろう。その嗚咽は、僕も味わったことがあるから分かるような気がした。
バンドもギターが抜けて、結局のところ解散した。自主制作版のCDが一枚残った。
それから数年たって、彼の彼女から連絡があった。

 十一月に結婚式挙げるんですけど、先輩これますか?
  行きたいけどさ、おいらも親父亡くしたばっかりだしね・・・。
   そういえば、あいつどうしてる?
 今、法律事務所で働いてますよ、がんばってますよ

そうか、そうだな。時間が経つってこういうことなんだな。僕は奇妙に納得して、少しばかりやりきれない想いをウィスキーで飲み干した。
時間は流れるのだ。
それはレノンにも、ジャニスにもディランにも止められない。
やがて、十一月がやって来た。僕は風邪をこじらせ、病院で点滴をうち寒さがすこしばかり身に染みるようになった。ふと、思い出して僕は彼に電話をかけた。すぐに
懐かしい声が聴こえた。元気そうだった。
  
  sherbet元気かい?
    そっちこそ、結婚おめでとう
   アリガトな。俺、入場のときから大泣きだった。
  みんな来てたか?
 来てくれたよ。

仕事は?
 慣れてきたよ。バンドも忙しいしね。
   バンド?
  おう、あたらしいギター入れてやっとうよ。これがないとね、生きてる気がせんちゃね~
 
   僕は何故か嬉しくて嬉しくてしかたなかった。
  おいらもサ、まだギターかついでるよ
 暇ができたら出てこいよ、荷物なんかいらんけん、飲もう
  来たら、なんとかなるさ
    ギターかついできーよ

それからひとしきり音楽の話をして電話をきった。
 
   わずか15分間の夢の時間

    嬉しかった


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スコッチウィスキー

2008-01-14 | 
石畳の回廊
 螺旋の階段を上る
  最上階の部屋には白い机があった

   安ホテルのレストランには
    老夫婦と僕だけしかいない
     ピアニストがこざっぱりした演奏を終えた

      バーのカウンターでウイスキーを舐めていた
       スコッチを頼む

      飲みすぎですよ

     バーテンが呟く
    まだ昼ですよ

    何処かの国では真夜中さ

   バーテンは呆れてグラスを拭いている

  シーバスリーガルをグラスに注いでくれた

    ブルースかけてよ

     無言で彼はスティヴィー・レイ・ボーンをかけてくれた
      最高の音楽だ

     僕はバド・パウエルの方が断然好きですけどね
      バーテンが呟く

    急にフリーの「ウィシング・ウェル」が聴きたくなった
   しかしこれ以上我侭がすぎると
  店から追い出されるのは目に見えていた
 洒落たこじんまりとした店なのだ

   部屋にかえったら
    マイク・オールドフィールドを聞こう

     そんな夜

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行方

2008-01-13 | 
そう長くはないだろう
 群集にまみれたあの頃
  僕は目的意識も持たず
   あてどなく場所を浮浪した
    まるで青い空の雲のように風に流された

   流されることを恐れた暮らしは
    僕の
     精一杯の抵抗だった
      古臭い音楽を買いあさり
       安っぽいベースを悪戯していた

    根拠の無い自信は
     青臭い少年の特記事項
      黄昏時のデジャヴィウ
       此処はいつか見た風景だ
        記憶の列車の窓から眺めた
         あるいは深夜の高速バス

      ある種の事柄は薄れた光のさんざめく陽光

      世界はたったひとつなのかい?
       つまんないよ、そんなんじゃ。
     君の声が不意に頭の中を駆け巡る
    綱渡りの様な人間関係には飽き飽きさ
   唇をかみ締めた君
  手のひらを握り締めて拳を作った僕


 いつからか僕らは嫌いな大人にも愛想笑いを浮かべる

 いつからだろう流されることに嫌悪することが無くなったのは

   ベースをいじっていると
    先輩がやって来て
     ぬるい、全部ダウンピッキングで弾けと怒鳴られた
      トレブルを全開まで上げて
       バキバキした音にした

   たまにはさ
    酔っぱらって忘れろよ
     嫌なこと

    酔いの淵で想うこと

    流されてゆく日常が余りにも混沌とし

    ギターを手にして自分自身を取り戻す

    僕は抵抗を
 
    闘うことを放棄した

    

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蝉の声

2008-01-12 | 
真夏の静かな青さの中
 蝉たちの鳴き声がこだました
  たくさん汗をかいて飛び起きたのは
   安アパートのベットの上
    ベランダから
     蝉の声が止まない

    何故だろう?
     真冬に蝉の声が聴こえた

  貴方の記憶の中から
   僕の存在が薄れやがて擦り切れ
    フィルムが役に立たなくなった瞬間から
     僕は貴方に存在を抹消される
      消えてなくなる

    誰かになり誰かを忘れる
     忘却とは
      大切ななにかを失うこと

    全体どういうことなのだろう?
     時間の流れが
    出会いと別れを峻別する
   さよなら なんて云いたくなかった
  
   さよならは哀しい
    過ごした思い出は
     まるで在りもしなかったかの如く
      僕は
       この「世界」に存在を許されなかった

     何故だろう?
      真冬に蝉の声が聴こえる

       お日さまの下で眠る僕

        出来るなら

        さよならよりも

        またねと云いたい




  
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嘘の余韻

2008-01-11 | 
「信じている」
 青い月の下で幻想をまぶした
  誰かが誰かに抱きしめられ
   背中越しに軽く舌を出す
    あたりまえの余韻
     意識の空白
      嘘の余韻は長い夜の様だ
       僕は
        その光景を冷ややかに侮蔑し
         青い街灯の下で
          ポケットウイスキーを飲み干した

「信じている」
 嘘は孕んだ胞子を何時か記憶の中に散りばめる
  穏やかな嘘が優しさなのだろうか?
   僕は困惑するのだ
    そんな嘘の要因はいらないから
     ねえ マスター
      あの頃の音楽を流してよ
       フィルターをちぎり
        煙草に灯をつける
         オイルサーディンの缶詰
          匂いのきついバーボン
           誰かの背中ごしに
           誰かの影が鬱ろい
             僕はギターを弾いた
              嘘の余韻

    嘘の余韻
     届かなかった想い
      店にジョンレノンの声が流れた

       「マザー」

       レノンが叫ぶ
        終末の夜

        ウイスキーで貴方の記憶を磨耗しよう


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ノスタルジー

2008-01-07 | 
ある日に
 電線から感情が伝染した
  作り笑いが割れた破片
   涙がこぼれる雫

   月は三日月

  ひとちがい
 いつも間違っている
今日も笑って見せた
 アルコールが欲しくって
  やたらと煙草をふかす
   風に舞った
    ちらほらと
     記憶と化石の魚たち

      歌声が不意に流れ
       僕は工事現場で
        立ち尽くす
         涙が零れる

         ちらほらと
          景色が舞う
           あの時のあの感覚

      ぴ ぴ ぴ

    解析不能な打診を望んでいる
   理解出来ない
  言葉のやりとりの中
 答えを探し模索する

   生きているからだろうか?

    ショパンのピアノ

     あのメロディーに似ているのさ




  
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交差点

2008-01-06 | 
握りしめた手を離さないで
 と 君は云った
  かたくなに繋いだ手のひらは
   いつかほどけて離れてしまうものなのに
    それを知っていて
     それでもたぶんそう呟いたのだろうか?

   下界を眺める眼差しで
    君は僕の暮らしを暴き
     静かに微笑んでいるのだろうね
      何処に行ったの?
       と少女が尋ねる
        遠い外国さ
       と僕は答えて
      苦し紛れにショットグラスをあおる
     緊張した筋肉が弛緩され
    精神が緩やかな飛行を始める

   教会の鐘の音が響く
  ジョン・レノンが「母さん」と叫ぶ
 小高い丘の上でサンドウィチを齧った記憶
無神経に蜂が空間の周辺を散策す
 ハムとトマトと卵とレタス
  サンドウィチの中身は決まっていたね
   いつだって
  
    僕らはまぶたを閉じた
     そうして控えめに未来を夢想した
      公園の芝生で自由に寝転がりたい
       ささやかな君の夢だった

        tunaida te o hanasanaide
            douka onegai

レンジで暖めるコンビニ弁当は
      奇妙に飽きない
     一人でいることすら忘れていった
    公園を歩く
   風が冷たいので珈琲店に身を隠した
  バッハの無伴奏チェロ組曲が流れる正午過ぎ
 いかなる祈りも無力だと想った
それでもなお
 祈らずにはいられないんだ
  握りしめた手を離さないで
   連続する日常の虚構と対峙する
    「蝶の僕が人の夢を見ているのか
      人の僕が蝶の夢を見ているのか・・・」

      肝心なことはね

       歯を磨き顔を洗いしっかりと
        朝ご飯を食べることさ
  
        握りしめた手を離さないで

         不安が入り混じった郷愁の中

          僕は交差点に立ち尽くす



 
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虚脱の午後

2008-01-05 | 
虚脱の午後
 夢さえ見る事を忘れ
  ただひたすらに
   優しさを望み縁側で煙草をふかす

        雲が流れる

    景色は封印されつつある記憶の残り香
    枕に染み付いた香り
    流れ行く
    ただ流れ行く
    怯えもしたのに

   たかが風邪だと馬鹿にしちゃいけない
    友人がわき目も振らず
     ビーカーで化学反応を確認しながら
      僕に警告を発す
       陽射しが眩しかった
        化学室の片隅
         アルコールランプで湯を沸かし
          珈琲をインスタントに飲んだ

            君に会いたい

          優しさを忘れるのは
         日々の暮らしが雑多な物なのだからだろうか?
        いらいらと不機嫌な素振りは
       風邪のせいなのだろうか?
      どちらにせよ
     想ったとうりにいかないのが当然な成り行き
    そうして

             ソウシテ
              マタ
             キミノ影ヲ見失ウ
             今日モキミヲ
             失ッテシマウ
             午後
             白イ彫刻ガ微笑ムノダ

    嘘だと云ってくれ
     お願いだ
      嘘だと 全てが

         呼吸を忘れた瞬間
          例え様もなく苦しくって
           何かに願う

           意識分解

         全てのありか

        それは

       僕の傍らで寝ていたはずの
      君の存在の喪失
     虚脱した意識の片隅で
    欺瞞に満ちた
   自己の馬鹿さ加減に呆れる

  虚脱の午後は夢さえ見ることを忘れさす

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