眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

フリスク

2015-02-11 | 
古着で身を覆った友人が
 時代遅れのロンドンブーツの踵で
  煙草の吸殻を揉み消してみせる
   ショットグラスのスコッチが
    皮肉な様相で僕らの運命を笑い飛ばす
     誰かが僕のカナダ産のアコーステックギターで
      ガンズ&ローゼスの曲を弾いていた
       
       赤いフェンダーを担いだ少女が
        ノイジーなエフェクトを噛ます
         トレースエリオットのトレブルをバキバキにして
          12フレットの音をチョーキングした
           懐かしい匂い
            久しぶりに触ったベースは
             なんだか焼け焦げた香りがする
              ペグに挟んだピースが燃え尽きていた

               音を模索する深夜の徘徊
              辿り着いた小島は
             安いスタジオの待合室
            引っ切り無しにフリスクを口に放り込んで
           少女はデタラメな詩を紡いだ
          そこさ、
         ティム・ボガードみたく弾いてよね
        カーマイン・アピスみたいなドラム探すから
       事も無げに呟いた
      じゃあ、君、ジェフ・ベックのつもりか?
     彼女は笑ってフリスクをまた口に放り込む
    まさか。あたし そんなおじさんじゃないし
   だいいち神さまになんてなれないわ。
  じゃあ誰なのさ?
 あたしはあたしよ。誰にも邪魔されないし物まねでもないわ。
僕は黙って借り物のベースでスケールを弾いていた
 どうせなら
  どうせならあの昔の仲間達を少女に会わせてあげたかった
   僕らがせっかちにステージをこなしていた頃
    彼女はまだ産まれてすらいなかった時代
     演奏する僕の顔の横にビールの空き缶が飛んできた
      
      お前さ
       タップとかスラップばかし練習して
        何処のパートで入れんの?
         ロカビリーバンドだぜ、俺ら。
          リーゼントで決めた仲間はバイクにまたがり
           僕は長髪をうっとおしく結び
            煙草を咥えて他のバンドの音を聴いていた

            ベースくれ。
           PAの髭のジェイソンさんが呟く
          開放弦をつまらなさそうに鳴らして
         冗談でビリー・シーンの
        NV43345を弾いた
       懐かしい壁にはチラシやらポスターが貼られている
      人込みがやって来る
     僕は店の外に出てハイネケンの瓶を飲んだ

    なに考えてるの?
   少女が僕の顔を不思議そうに覗き込む
  昔の話さ

 ふ~ん。

少女はアヴァンギャルドな歌詞を口ずさみながら
 飽きもせずフリスクを口に放り込む

  まずさ。

   この可笑しな二人に似合いの仲間集めないとね。

    おかしいのはあなただけでしょう?

     事も無げに云って

     口に放り込まれたフリスク

     僕はコーラを自動販売機で買った

      そりゃそうだ

     エデイー・コクランの代わりに

     レノンとガンジーのポスターを
     大切に部屋に貼り付けたロカビリー・ベーシストなんて
     聴いた事も無い

     ドラムさえ見つかればなんとかなるわ
      少女が瞳を輝かせる
       デニス・チェンバースみたいなドラム?
        彼女は舌を出した
         あんな上品なんじゃなく
          パンテラのヴィニー・ポールくらい
           汚くてバスドラムが重い奴がいい

            僕は呆れてコーラを飲み干した

             君のやりたい音楽ってなんなのさ?

              それは昔僕が云われた言葉だった

               フリスク食べる?

                ありがとう、
                 でも煙草のはっかで十分。






コメント (5)
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