眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

バームクーヘン

2010-09-17 | 
虚無の隙間は
 憂える魂の物
  置き去りにされた瞬間
   意識が
  ガードレールの向かい側
 昔かたぎなケーキ屋のぽつんとした灯り
  
  バームクーヘンが売れ筋の
   頑固な店
  酔いにまかせた僕は
 辛辣な情景を求め
小銭をかき集めて
 バームクーヘンの
  穴の空間に見とれ
   買ってしまうのであった
 
    甘い物なんてどうせ食べやしないのに

   そのまま眺めて
  冷蔵庫の隙間に埋めた
 一ヵ月後
萎びたバームクーヘンの表情は
 むしろコケットな様相を見せ
  ごみ箱に処分する前に
   三分ほど眺めてみた

    用意された月面のクレーター
     容赦なく降りしきる
      太陽
     大気圏への突入も
    全てが
   ケーキ屋の親父の策略
  バームクーヘンは偉大だ
 
 食う
  空

  やがて朝陽が昇った
 僕はグラスを放せない
だがしかし
 どうしてバームクーヘンなんだい?

   尋ねられると
    答えに困るね
     たとえばさ
      ジョージ・マクドナルドの
       「リリス」
      のようだね

      あるいは
     支離滅裂な
    シド・バレットのソロアルバム

  難解すぎてね
 バームクーヘン

  お菓子じゃないような気がするのさ

   ヘンゼルとグレーテルなら
    喜んで齧るのだろうか?

     今度は食べてみよう

      貰い物の
     バームクーヘン



  

 
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Rie a.k.a. Suzaku

2010-09-06 | 音楽
ホテルのチェックインにはまだ時間があった。
僕は煙草が吸える喫茶店を探してやっと冷房の効いた場所にたどり着いた。
喫茶店では喫煙席が用意されていて僕は座席に座ってアイス珈琲を注文した。それからポケットからくしゃくしゃになったはっか煙草を取り出し灯をつけ、深く深呼吸をするように煙を肺の奥まで吸い込んだ。二本目の煙草を手にとって、ふと辺りを見渡してみた。
六人がけの座席ではひそひそと何かの商談をする人々がいた。僕の横の席では難しい顔をしたビジネスマンが煙草を手にしながら資料に目を通している。
奇妙な違和感を憶えてぐるりと店内を見渡した。彼らは皆一様にぴしゃりとしたスーツを着ている。凄く大人な世界だった。
ニルヴァーナのTシャツを着ているのは僕だけだった。
大人の世界にはニルヴァーナは存在しないのだ。
僕はなんだかひどく自分自身が世界から拒絶されている感覚になった。
I love you とカート・コバーンが呟いた。
でももちろん彼の叫びは永遠に無視され続けた。

僕が街に出かけたのには理由があった。
或るLiveを見る為だ。

「Rie a.k.a. Suzaku 」

女性ギタリスト、RieさんのFirst CD Releasu Liveだ。

僕は奇妙な縁で彼女の存在を知った。あまりにも奇妙な縁だった。Rieさんが「Live来ませんか?」と云ってくれた。しばらく考えて僕は街に出る支度をした。仕事の調整をつけ、銀行から飛行機代を引き降ろした。
僕はいろいろなストレスに晒されていた。この思い付きのような小旅行が必要な予感がした。だいいち、僕はRieさんの演奏を生で見た事がないのだ。この絶好の機会を逃すわけにはいかなかった。
それでリュックサック一つで飛行機に飛び乗った。遠ざかる島にグット・バイ、と挨拶をした。そうして数時間後、僕は街の喫茶店で隠れるように煙草を吹かしアイス珈琲を飲んでいるのだ。

待ち合わせをしていた友人と目黒ライブステーションにたどり着き想い扉を開けて、初めにビールを収穫した。喉が渇いていたのでひどくビールが美味しかった。
ステージではバンドがへヴィーな演奏をしていた。ヴォーカルの激しいシャウトがまるで生きている証のように僕の身体に刻み込まれた。二杯目のビールを飲みながら僕は黙って爆音に心をゆだねた。心地良いグルーブが少しずつ心を開放してくれた。
嗚呼、音楽だ、と想った。
それからしばらくして「Rie a.k.a. Suzaku 」のステージが始まろうとしていた。
僕は友人と共に一番前の中央の場所を確保した。なんだか少しだけどきどきしていた。あれだけ聴きたいと想っていたRieさんのギターはどんな音がするのだろう?
そんなことを考えていた瞬間、ステージが始まった。
強烈なシャウトとへヴィーなリフが僕の耳をつんざいた。僕の後ろ側から人の波が押し寄せてきた。凄い。一発のヴォーカルの声だけでバンドは空間を完全に掌握した。後ろから肩を掴み掛かられた。気付くと僕も大声で叫んでいた。ギターソロだ。極めの細かい歪んだ音が泣き叫ぶように放たれた。僕は放心状態で彼女の指先に目をやった。まるで魔法だ。流れるような指使いでメロディーが歌った。
すぐに次の曲に入る。凄すぎるメンバーだった。ドラムが安定した高速リズムを叩き出しサイドギターがクールにリフを刻む。ベースが屋台骨のようにグルーブし続け圧倒的なヴォーカルが強烈に、だが繊細に歌った。Rieさんの指先が嬉しそうに指板を駆け巡った。
あり得ないくらいテクニカルな演奏だった。それでいて情感も失わない。
Tシャツのカート・コバーンがI love you と叫んだ。
それに答えるように音の世界が我々を激しく包み込んだ。激しいけれど優しい抱擁だった。
嗚呼、音楽だ。そう想った。本物の音楽。
僕の心が開放された。
爆音の中で。それはあの戦闘機の爆音とは質の違う音だった。世界の罪や不条理に対して音楽が激しく意義をとなえた。
メロディアスな旋律と激しいリフが優しく叫んだ。
誰の様でもなくそれはRieさんが創り上げた世界だった。

「音楽にはちからがある」

そう云いたかったのかも知れない。
素晴らしいメンバーに支えられ彼女の音楽はその場にいた人々に確かにそう伝えたかったのではないだろうか?

夢のような時間が終わった。
少しだけ彼女と話をすることが出来た。僕はRieさんにお会いしたら、いろいろと音楽について質問したかった。けれども、あんなパフォーマンスを見た後ではすべての言葉は無力だった。必要なかったのだ。言葉に出来ない感情を音に託す。
僕はジンベイザメやシャチの話を延々と繰り返した。そうして自分自身の音楽について考えていた。
Rieさんやメンバーや他のバンドの様に、魂を削り、歌い続ける自信。
彼女や彼らにはその覚悟が確かにあった。
音楽に身を捧げる覚悟。
そういう感情を、僕はとっくに過去の何処か遠い砂漠の記憶の井戸に忘れ去ってしまったのだ。そして彼ら彼女たちの演奏でその欠けらを拾い集めることができた。

「Rie a.k.a. Suzaku 」

こういう音楽は好きじゃないかも。そう想っている人にも耳にして欲しいと願う。

 Poppin records
http://www.poppin.jp

ミニアルバム 「Messiah」:Rie a.k.a. Suzaku

音楽はジャンルで区別されるものではないと、個人的にはそう想う。

僕は、少なくとも表現者Rieさんを応援する者の1人だ。
















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