中心点
2022-09-16 | 詩
世界の中心点に向けて
右肩を傾けてゆく
物言わぬ顔は遥か記憶の後姿を
覗き見るかのように
向背筋がほぐれてゆく
記憶の顔が残像として点在し
万物が流転する夜のひと時に
猫が安穏とあくびをしじゃれつく
或る絵描きが云った
独房みたいな部屋に監禁されてさ
そこで絵を描きたいんだ
小さな食器口から食べ物が日に3度出てきて
そこから一歩も出ずに
ただひたすら絵を描いていたい
そうしてさ
ちょうど十年後に部屋を出たら
世界中に俺の作品が飾られているんだ
そんな夢をみる
豆腐に醤油とねぎをかけてつまみながら
僕らは酒を飲んだ
悪くない夢だろ?
僕はどう答えていいのやら数秒迷って
こう答えた
その場合
世界の中心点は何処になるのですか?
中心点?
彼は奇妙な物を見る眼差しで
僕の顔を覗き込んだ
中心点が無ければ
振り返る過去の基準点が曖昧になります
僕が呟くと
彼は優しく笑いながらこう云った
どうして過去を振り返らなければならない?
どうして?
ドウシテ?
言葉が輪廻し
気付くと緑の草原に立ち尽くしていた
澄んだ風が吹き抜ける
青空の下
僕は草笛を吹いてこう想った
家に帰ろう
猫が云った
でもさ、君。
家に帰るには世界の中心点を見付けなくちゃならない
決まりなんだ
しゃらん
と鈴の音が鳴った
僕と猫は草原の中旅に出る
可能性は微小だが
君には選択の余地が或る
猫はしっぽを立てて僕に忠告した
けして安穏としてはいけない
ましてやあくびなんてもっての他だ
云いかけて猫は大きくクシャミをした
僕は笑いながら水筒のワインを一口飲んだ
旅だ
草原は何処までも続く
緑のカーペット
右上に月が上がり左下で太陽が沈んだ
奇妙な世界
ストレンジデイズ
ジム・モリスンが云いかけて止めた
とにかく
世界の中心点を探すんだ
じゃないと君の世界へは帰れない 永遠に
猫が真剣な表情で云った
戻りたくないなら?
僕は思わず呟いてはっとした
僕は戻りたくなんてなかったのだ
しゃらん
鈴の音が鳴った
右肩を傾けてゆく
物言わぬ顔は遥か記憶の後姿を
覗き見るかのように
向背筋がほぐれてゆく
記憶の顔が残像として点在し
万物が流転する夜のひと時に
猫が安穏とあくびをしじゃれつく
或る絵描きが云った
独房みたいな部屋に監禁されてさ
そこで絵を描きたいんだ
小さな食器口から食べ物が日に3度出てきて
そこから一歩も出ずに
ただひたすら絵を描いていたい
そうしてさ
ちょうど十年後に部屋を出たら
世界中に俺の作品が飾られているんだ
そんな夢をみる
豆腐に醤油とねぎをかけてつまみながら
僕らは酒を飲んだ
悪くない夢だろ?
僕はどう答えていいのやら数秒迷って
こう答えた
その場合
世界の中心点は何処になるのですか?
中心点?
彼は奇妙な物を見る眼差しで
僕の顔を覗き込んだ
中心点が無ければ
振り返る過去の基準点が曖昧になります
僕が呟くと
彼は優しく笑いながらこう云った
どうして過去を振り返らなければならない?
どうして?
ドウシテ?
言葉が輪廻し
気付くと緑の草原に立ち尽くしていた
澄んだ風が吹き抜ける
青空の下
僕は草笛を吹いてこう想った
家に帰ろう
猫が云った
でもさ、君。
家に帰るには世界の中心点を見付けなくちゃならない
決まりなんだ
しゃらん
と鈴の音が鳴った
僕と猫は草原の中旅に出る
可能性は微小だが
君には選択の余地が或る
猫はしっぽを立てて僕に忠告した
けして安穏としてはいけない
ましてやあくびなんてもっての他だ
云いかけて猫は大きくクシャミをした
僕は笑いながら水筒のワインを一口飲んだ
旅だ
草原は何処までも続く
緑のカーペット
右上に月が上がり左下で太陽が沈んだ
奇妙な世界
ストレンジデイズ
ジム・モリスンが云いかけて止めた
とにかく
世界の中心点を探すんだ
じゃないと君の世界へは帰れない 永遠に
猫が真剣な表情で云った
戻りたくないなら?
僕は思わず呟いてはっとした
僕は戻りたくなんてなかったのだ
しゃらん
鈴の音が鳴った