眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

優しい月光

2023-10-16 | 
優しい月光
 満月の夜
  僕らは生きとし生ける者を祝福した
   青い街頭の様に
    月明かりは街路樹を青で染め上げる
     君の国
      君の街角
       あの記憶の場所
  
       壁に映された魚の影
        魚影は優美に世界を泳ぐ
   
         青の世界

         封印されたはずの憧憬

         どうか
          皆が祝福された者であります様に
           月の灯りの一滴
            闇の世界を暴き出す思索の光

             遠い国の君に届く様に
              ねえ
               世界は儚く美しい
                忘れないで
                 月明かりで路を探し
                  僕らは永遠の旅に出る

                  優しい月光

                  公園の池の水面には
                   貴女の存在が描写される

                    どうか影に怯えないで

                     優しい世界

                     万物は流転し
                    螺旋の階段を上り
                   僕らは展望台に達した
                  君に電報を打電する夜
                 月明かりの郷愁
                何時かの世界に封印されたはずの
               魔法の行方
              黒猫があくびをし
             髭をぴんとさせて歌うのだ

            集まりはいつものあの広場
           そこでまた始まる
          パレードの行列
         行こう
        彼の地平へ
       パレードに交わって
      赤い葡萄酒で乾杯する月夜の晩餐

     愛している

    いまだって
   いつだって
  ね
 連れて行って
あの月光の下の世界へ

 レコードを引っ張り出して再生する
  音の世界
   甘美な世界の再生
    僕らは眠り生まれ変わる
     そうして
      また巡り会えたなら
       約束をしようね

        月に誓う

         永遠の約束を

          届かない地平

           あの永遠の楽園

            トマス・モアが微笑んでいる

             何度も何度でも

              生まれ変わり

               君に出会う夢を見る

                君の出会う事に怯えている

                 哀しみの情景が

                  月の青で満たされます様に

                   皆が祝福されます様に


                たとえ額に消えない原罪の烙印があったとしても

               たとえもう帰れなくても

              僕らは生きてゆけるはずだね

             ね

            影に怯えないで

           生きよう

          旅を続けよう

         待ちわびた世界の約束を探しに

        旅を続けよう









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2023-10-08 | 
「なにか楽しいことがきっとあるはずなのよ。」
 少女がはっか煙草をくわえながらぶつぶつ呟く
  僕はグラスのワインをぼんやり眺めていた
   いまは楽しくないの?
    僕の問いかけに彼女ははげしく意義を唱えた
     違うわよ。もっと決定的に楽しいこと。
      まるで氷河期が終わりを告げた時くらい劇的な何かのことよ。
       たとえば?
        たとえば・・・。
       煙草のフィルターをくちびるで噛みながら少女は考え込む
      たとえば飛行船の遊覧飛行。
     思いついたように呟く。
    ゆうっくり空を泳ぐの、まるで太古の鯨のように。
   だって夏が終わって飛行船は飛ばなくなったでしょう?
  夏が終わるのが、
 少女ははっか煙草に灯をつけた
夏が終わるのが大体早すぎるのよ。時間はいつだってそうよ、
はやすぎるのが難点ね
 でも秋がくる。秋だってそう悪くない。
  秋は嫌いじゃないけれど、夏の海水浴ほどじゃないわ
   そうかい?僕は泳げないから秋のほうがすきだよ
    彼女は酔っ払いの僕のたわごとを完全に無視した
     とにかく何か楽しいことよ。
      好奇心で全身をいっぱいにしながら少女は手足をじたばたとさせた
       秋にはサーカスがくるよ
        サーカス?
         やっとまともに相手をしてもらった僕は話を続けた
          そう、サーカス。
           ブラッドベリの小説に出てきそうな
            とびっきり幻想的な奴。
           彼女は懐疑的な眼差しで僕の話を値踏みした
          双子のブランコ乗り。
         ピエロの玉乗り。
        猛獣使い。ライオンと熊が二本足で挨拶するんだ。
       それ、悪くない。
      めずらしく僕のグラスにワインを注ぎながら少女は目を輝かせた
     チケットはどうなっているの?
    焦らなくても知らせが来る。月夜の晩に窓から外に出ればいい。
   窓?玄関じゃなくて?
  違う。この場合どれだけ非日常的で馬鹿馬鹿しいかが問題なんだ
 そうして馬鹿馬鹿しいほど馬鹿馬鹿しい順にサーカスのテントに入れる。
なら問題ないわ。
 彼女は嬉しそうに答えた。
  昼間から酔いどれてるあなたの存在ほど馬鹿馬鹿しい人生はないもの。
   もっと馬鹿馬鹿しいことなんてもっとたくさんありそうだけど・・・。
    大丈夫。あなたほど馬鹿馬鹿しい動物なんてそうはいないわ、
     確信していいわよ。
      そんなに僕は馬鹿馬鹿しい存在なのだろうか?
       グラスの赤いワインを舐めながら
        だんだんと頭が痛くなってきた
         とにかく。
          サーカスが来るのね?
           そう、サーカスが来る。
            なら秋も悪くないわ。
             少女は満足げに微笑んだ

          ねえ、僕はそんなに馬鹿馬鹿しいのかな?
         心配しなくていいわよ、褒めてるんだから。
        ねえ。
       今は楽しくないのかい?
      僕の問いに彼女は笑いながらグラスで乾杯した
     悪くないわよ。あなたの馬鹿馬鹿しい話。
    月の夜ね?
   そう、青い月の夜。
  窓から出て行けばいいのね?
 窓からだよ。

すべての始まりは窓辺から。

 さあパレードだ
  あの夜の向こう
   そこでまた始まる
    野良猫たちが空き地に集いパレードを祝って
     すっとんきょうな声で云う

      秋だ






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