伊勢原近辺の田舎道を歩いていると救われる気持になることが
ある。梅雨まっさかりの野辺道は水滴を存分に吸い込んだ紫陽花
、紫つゆくさ、虫取り草が進む季節の里程を静かに刻んでいる。
亡妻が他界して三年半を経たが、一番の恩義は四苦八苦の資金繰
りを締めるところは敢然と締めたこと、そして草花の名称を持ち
前の和歌的頭脳収蔵庫から物静かに教えてくれたことの恩義が二
番目にくる。
ホタルブクロ、ホトトギス、エビネなどの存在を郊外の団地脇の
自然周遊路の散歩途中に教わったせいか、地味花のもつふくよか
なる可憐の価値を心に仕舞えたのも亡妻のおかげだと思っている。
日向薬師から七沢へ抜けていく曲がりくねった間道沿いは里山の
滋養が季節ごとに溢れている。
木陰の斜面には雑草に紛れて野あざみや蛇イチゴが顔をのぞかせて
いる。昨日もスクーターを走らせていたとき、ホタルブクロの釣鐘形状
が微風にそよいでいるのを見つけた。命の短い花だがいかにも梅雨
時の静謐を象徴する野草である。
土壌のもつ成分によって白っぽいもの、薄いモーブがかったものが
ある。心苦しいが、少しだけ失敬してこの花が好きだった亡妻と
親父の入る仏壇に供えてやることにした。
梅雨の空気はお香を低く滞留させるが、最近の愛用は鳩居堂で販売
している「みづほ」という本来の白檀にローズの香りを調合させた
ものに火をつける。あいにく供える和菓子がないから、あり合わせ
のビスケットを数枚添える。
居間の卓上にあるガラス瓶子にもホタルブクロを挿して、コーヒー
を飲みながら梅雨の静謐をしばし味わう。
ある。梅雨まっさかりの野辺道は水滴を存分に吸い込んだ紫陽花
、紫つゆくさ、虫取り草が進む季節の里程を静かに刻んでいる。
亡妻が他界して三年半を経たが、一番の恩義は四苦八苦の資金繰
りを締めるところは敢然と締めたこと、そして草花の名称を持ち
前の和歌的頭脳収蔵庫から物静かに教えてくれたことの恩義が二
番目にくる。
ホタルブクロ、ホトトギス、エビネなどの存在を郊外の団地脇の
自然周遊路の散歩途中に教わったせいか、地味花のもつふくよか
なる可憐の価値を心に仕舞えたのも亡妻のおかげだと思っている。
日向薬師から七沢へ抜けていく曲がりくねった間道沿いは里山の
滋養が季節ごとに溢れている。
木陰の斜面には雑草に紛れて野あざみや蛇イチゴが顔をのぞかせて
いる。昨日もスクーターを走らせていたとき、ホタルブクロの釣鐘形状
が微風にそよいでいるのを見つけた。命の短い花だがいかにも梅雨
時の静謐を象徴する野草である。
土壌のもつ成分によって白っぽいもの、薄いモーブがかったものが
ある。心苦しいが、少しだけ失敬してこの花が好きだった亡妻と
親父の入る仏壇に供えてやることにした。
梅雨の空気はお香を低く滞留させるが、最近の愛用は鳩居堂で販売
している「みづほ」という本来の白檀にローズの香りを調合させた
ものに火をつける。あいにく供える和菓子がないから、あり合わせ
のビスケットを数枚添える。
居間の卓上にあるガラス瓶子にもホタルブクロを挿して、コーヒー
を飲みながら梅雨の静謐をしばし味わう。