Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

桃のこと

2011-06-27 11:53:06 | その他
好きな現代詩人に安東次男という人がいる。この詩人が銅版画家
の駒井哲郎に捧げた詩集に「カランドリエ」という暦をイメージ
化した傑作があって今頃の季節を鮮やかに切り立てたフレーズを
呪文のように並べていて、俳句的視覚とモダニズム言語の恣意的
絢爛図が楽しめる詩集となっている。
施設から外出許可をもらって遊びにやってきた母親に食べさせよう
と冷しておいた桃を眺めていた時、ふと浮かんだのが安東次男の
「明日は 蝉 水密 入道雲」という一見ぶっきらぼうに放置され
たその中の詩句だ。たしか6月を謳った一節だったと思う。
夏の心を予感するイメージがピチピチと粒立つて来て懐古的な風景
と事象の幸福な至近距離を感じる。
今年は原発事故の影響で福島付近の桃などの果樹産地は、薄氷を
踏むような気苦労の日々だろうと思う。八百屋の店頭に山梨と福島
産の桃が売っていたら、心情的には福島産を買うことも応援の一つ
だと思っている。この桃がどちらの産地か?確かめ忘れてしまった
が、色づいたピンクの薄皮を覆う産毛の素地を眺めていて安東次男
への反歌みたいな句が浮かんできてしまった。

桃齧る ZEINてう語を 想いだし (新)