しらほぶろぐ

ブログタイトルはニックネームが由来。
日記代わりに身の回りの出来事を綴ります。

藤沢周平作品所感2

2006-03-07 20:12:25 | 08.山形探訪
今日の体重:98.6kg(-6.1kg)2006.02.01~減量開始:104.7kg

 【三屋清左衛門残日録】を語る 
江戸屋敷の用人を勤めた「三屋清左衛門」が隠居を始めてからのストーリー… 清左衛門は,藩からも絶大に信頼された男で,禄高も大きく伸ばした…現役時代の生活は満ち足りた成功者であった…まさしく出世人である… 「隠居とは社会から離れることで寂しいものだ」… と思うところから物語りは始まる…


清左衛門は,さまざまな事件に遭遇する…隠居の立場を利用し,幼馴染で現役の役人「佐伯熊太」の協力を得るなどして,事件や不祥事を見事に丸く収めていくのであった…

清左衛門の同輩で同じく隠居した人物も何人か登場する…さまざまな老いの姿があった…若き日の自らの行ないを悔いて割腹した同輩…禄を減らした自分の現在に納得できず,清左衛門を逆恨みする同輩など…清左衛門は,彼らとのかかわりを通じて「隠居とはいかにあるべきか」…を悟っていくのである…

物語の最後で,清左衛門は「中風(現在で言う脳卒中)」て倒れた同輩の「大塚平八」を見舞おうとするが,杖を頼りに必死に歩く平八の姿を見て,引き返してしまうシーンがある… 「そうか,平八。いよいよ歩く習練を始めたか…衰えて死がおとずれるその時は,おのれをそれまで生かしめたすべてのものに感謝を捧げて生を終われば良い…しかし,いよいよ死ぬるその時までは,人間はあたえられた命をいとおしみ,生き抜かねばならぬ」…これが清左衛門が達した老後の境地であった…

作中,少年たちの喧嘩に出会い,少年時代を思い出す…その頃の仲間たちのことが回想される…少年時代の記述は,そのまま「蝉しぐれ」の世界と重なってきた…「蝉しぐれ」が青春を中心に描いた作品であったのに対して,本書はその老後を描いた作品であるように思えた…

 

コメント
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