獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

石橋湛山の生涯(その76)

2024-10-02 01:41:56 | 石橋湛山

石橋湛山の政治思想に、私は賛同します。
湛山は日蓮宗の僧籍を持っていましたが、同じ日蓮仏法の信奉者として、そのリベラルな平和主義の背景に日蓮の教えが通底していたと思うと嬉しく思います。
公明党の議員も、おそらく政治思想的には共通点が多いと思うので、いっそのこと湛山議連に合流し、あらたな政治グループを作ったらいいのにと思ったりします。

湛山の人物に迫ってみたいと思います。

そこで、湛山の心の内面にまでつっこんだと思われるこの本を。

江宮隆之『政治的良心に従います__石橋湛山の生涯』(河出書房新社、1999.07)

□序 章
□第1章 オションボリ
□第2章 「ビー・ジェントルマン」
□第3章 プラグマティズム
□第4章 東洋経済新報
□第5章 小日本主義
□第6章 父と子
□第7章 政界
■第8章 悲劇の宰相
□終 章
□あとがき


第8章 悲劇の宰相

(つづきです)

選挙前の約束どおり、石田は会場の二列目に座っている湛山に、握り拳の人差し指を立てて「勝ちました」という合図を送った。湛山は、わずかに微笑んでそっと頷いた。
午後1時20分、開票結果が発表された。
「投票総数510票。石橋湛山君258票、岸信介君251票。無効1票。よって石橋……」
どよめきが会場内を揺るがして、拍手と歓声が上がった。管理委員長の声はかき消された。湛山が登壇すると、石井と岸が歩み寄り、握手を交わした。
僅か7票差の薄氷の逆転勝利であった。
この夜、岸は側近を集めて無念さをあからさまにした。何杯目かの酒をあおりながら、
「あの三木武吉さんが生きていてくれたら……」
もっと簡単に政権は転がり込んでいたはずなのに、という思いを言葉にした。

第二代自民党総裁としての記者会見でも、湛山はこれまでの持論を展開した。
「経済界には石橋総裁の誕生で、国の経済政策が大きく変わるのではないか、と見る向きもあります。総裁は根本の考えをどこに置きますか?」
「私は経済政策の目標を完全雇用の実現に置きます。まず仕事を増やし、経済規模を拡大させる。多分、経済5カ年計画の目標年度の35年度には今の3倍以上の生産に伸びているでしょう」
「経済の拡大とともに経済の安定も必要ではありませんか」
「私の顔にはインフレと書いてあると言う人もいるが、大丈夫です。物価とか国際収支の動きを見ながらその時に応じた手を打っていくよりないでしょう。私なりに経済を拡大させながらインフレを起こさずにすませる自信があります。私の政治生命はこの経済政策の達成にあるはずです。だから批判に対しても信念は曲げられません。それがいけないというのなら、私はいつでも辞める覚悟は持っています」
湛山は、記者と問答しながら遥かに若い日の自分を思い浮かべていた。
「対米政策は?」
遥かな過去に思いを馳せていると、突然アメリカとの関係を尋ねる声があった。
「一部には安保条約の改定なども言われているが、これは日本が自衛体制を確立するという義務を果たせるようになってから取り上げるべき問題だし、それに東南アジア地域の共同防衛体制をどうするかということにも絡むので、慎重に検討したいと考えています」
湛山の後に内閣を組織した岸信介とは、対米という点で大きな違いが湛山にはあった。アメリカ側からすれば、こうした湛山の言動や方針が、いちいち気に障ったのも無理はなかった。
長男の湛一も、以前に湛山のアメリカ観を尋ねたことがある。すると湛山は、
「なあ、湛一。お父さんはこんな考え方をしているんだよ。今日の自由主義国家群のリーダーはイギリスに代わってアメリカだから、アメリカをリーダーとして日本は東洋における自由主義国家群の一員として世界平和のために貢献すべきである。そこら辺をアメリカに分かってもらわなければね。日本がアメリカの言いなりになっていてはアジアにおける目的は達せられないから、アメリカと喧嘩するくらいの言い争いはあったっていいじゃないかな。議論をしっかりやって、その結果、お互いにもっと理解を深めて協力できる関係になれば、ということなんだ」
「分かったよ、お父さん。アメリカにもっと大人になってくれと?」
「大人になってくれよりも、自由主義国家群のリーダーなんだから、一番下の弟くらいの位置にいる日本をもっと分かってくれてもいいじゃあないか、ということなんだ」
湛山は、記者会見が終わった後で、今はイギリスのロンドンにいる湛一に国際電話を入れた。

(つづく)


解説

こうして湛山は第2代自民党総裁となります。

湛山は、対米追従とは一味違う、しっかり日本の立場を主張する外交姿勢を持っていました。

 

 

獅子風蓮



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