友岡さんが次の本を紹介していました。
『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)
出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。
さっそく図書館で借りて読んでみました。
一部、引用します。
■第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第1部「福祉との出合い」
□第2部「司法と福祉のはざまで」
□第3部「あるろうあ者の裁判」
□第4部「塀の向こう側」
□第5部「見放された人」
□第6部「更生への道」
□第7部「課題」
□第2章 変わる
□おわりに
第1部「福祉との出合い」
=2011年7月2日~8月2日掲載=
(つづきです)
4)出所
初めての支援に戸惑い
昨年の七夕の日。伊豆丸剛史(35)は、事務所に郵便で届いた封筒を開けた。「特別調整等依頼書」。差出人は長崎保護観察所だ。「調整」が必要な受刑者の氏名欄には「高村正吉」とある。同封の個人資料には「知的障害が疑われる」と記されていた。
常習累犯窃盗罪で懲役3年の実刑判決を受け、長崎刑務所に入所。服役中に母を亡くし、帰住先はなし。2ヵ月後に満期出所―。書類に目を通しながら、伊豆丸はため息をついた。
「2ヵ月しかないじゃないか。忙しくなるな」
伊豆丸は、県地域生活定着支援センターの職員。社会福祉士の資格も持つ福祉のスペシャリストだ。
センターは全国に先駆けて2年前にできた。「累犯障害者」の対策として、国が各都道府県に設置を進めている。手助けが必要な累犯障害者を、刑務所から福祉につなぐ「橋渡し役」を担っている。
「身寄りがない」「障害がありそうだ」―そんな受刑者が刑務所にいると、保護観察所を通じてセンターに「特別調整」という依頼が入る。対象者と刑務所で面談し、必要に応じて障害者手帳などを申請。出所後すぐに、福祉サービスを受けられるよう手配するのが伊豆丸の仕事だ。
関わった累犯障害者は40人を超える。ある受刑者の言葉が頭にこびり付いている。初老の男は「刑務所を出るのが怖かった。刑務所を出れば、罪を犯すか、死ぬしかないと思っていた」と言った。
自分が長年やってきた福祉とは何だったのか―と打ちのめされた気分だった。この仕事が「天命のようなもの」だと感じるようになったのは、それからだ。
高村正吉(60)=仮名=とは出所日までに数回面会した。刑務所内で行った知能テストの結果はIQ28。小学校低学年並みだった。質問に対して的外れな答えが返ってくるし、態度も落ち着きがない。「間違いない」と伊豆丸は確信した。
「高村さん、刑務所を出たら福祉の支援を受けてやり直しませんか?」
伊豆丸は尋ねた。
高村は不思議そうな顔をして聞き返した。
「福祉って何ですか。規則があるんですか?」
これまでの人生で福祉の恩恵はおろか、他者から手を差し伸べられたことさえなかったのかもしれない。伊豆丸は胸が熱くなった。
「大丈夫です。あなたを支えますから」
(つづく)
【解説】
知的・精神障害があるのに、福祉の支援を受けられず、結果的に犯罪を繰り返す人たち……
福祉の網からこぼれ落ちたこうした「障害者」たちの多くは、社会で孤立し、生活に困窮した挙げ句、罪を重ねている。
福祉の網からこぼれ落ちたこうした「障害者」を支えるのは、法律でしょうか。
制度や組織でしょうか。
ボランティア活動でしょうか。
宗教でしょうか。
友岡さんは、どういうアプローチができると考えていたのでしょう。
獅子風蓮