獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

ケネディJr.が閣僚入りする本当のヤバさ

2024-12-07 01:26:35 | 反ワクチン・陰謀論

d-マガジンで、興味深い記事を読みました。

引用します。


ニューズウィーク日本版 11月26日号

ケネディJr.が閣僚入りする本当のヤバさ

トランプ次期大統領が11月14日、ロバート・ケネディJr.を保健福祉長官に起用すると発表した。トランプは6日の大統領選勝利演説でも既に、ケネディが「アメリカを再び健康にする」と述べていた。
本当に人々の健康は改善するのか。ケネディは、筋金入りの陰謀論者として知られている人物だ。1963年に伯父のジョン・F・ケネディ大統領(当時)を暗殺したのはCIAだと主張 するなどしてきたが、最も活発に訴えているのが医療関連の陰謀論だ。
現時点でワクチン接種を禁止する方針は打ち出していないが、新型コロナワクチンやその他のワクチン全般の安全性を疑うなど、陰謀論的な発言を繰り返してきた。
大統領選直前には、新政権で水道水へのフッ素(ムシ歯予防効果がある)の添加を取りやめるよう勧告したいと述べていた。陰謀論者たちは、フッ素が健康に悪影響を及ぼすと主張し続けている。
トランプ自身は、ワクチンやフッ素について公的に発言していない。おそらく大統領選でケネディの支持を得たかっただけで、アメリカ国民の健康には大して関心がないのだろう(ケネディは大統領選に無所属で出馬していたが、8月に撤退してトランプ支持に回った)。
大統領といえども全てを好き勝手に決める権限はない。国民のワクチン接種が阻まれたり、水道水へのフッ素の添加が禁止されたりすることはないだろう。それでも、ケネディの保健福祉長官就任は、アメリカ政府で客観的事実に基づいた意思決定がさらにないがしろにされることを意味する。
ケネディは、これまでさまざまな陰謀論を唱えてきた。一握りの大富豪が製薬会社と結託して、アメリカ国民をコントロールしようとしているという考え方を広めている。また、ワクチンが子供の自閉症に関連していると本気で信じていて、Wi-Fiが癌を引き起こす可能性があると根拠もなく決め付けている。
新型コロナワクチンをめぐる虚偽情報の拡散に関しては、トランプのさらに上を行く。新型コロナワクチンにより何百人もが死亡したと主張。アメリカの新型コロナ対策を主導したアンソニー・ファウチ元首席医療顧問を「欧米の民主政治に対する歴史的なクーデターの黒幕」と呼び、彼を刑事裁判にかけるべきだとも述べている。

荒唐無稽な主張はこれだけにとどまらない。起業家で大富豪のビル・ゲイツが新型コロナワクチンにより人々の体にマイクロチップを埋め込み、人々の行動を追跡しようと企てているとか、新型コロナが白人や黒人など「特定の民族攻撃」して、東欧系ユダヤ人と中国人を救うための「生物兵器」であるとも示唆してきた。
医学の分野での陰謀論は時に大きな危険をもたらす。2019年には南太平洋のサモアではしかが流行し、子供を中心に8人の命が失われた。ケネディにたきつけられた反ワクチン派の活動により、ワクチン接種率が低下した影響があったことは間違いない。ケネディは、医学界が長年の研究と膨大なデータにより到達した結論を否定しようとする。トランプがそのような陰謀論者を政府の要職に就けたことの意味は重い。
第2次トランプ政権の誕生は、個別の政策の変更だけでなく、人々の心に疑念を植え付け、混乱をあおることによっても社会に大きな脅威を及ぼすのかもしれない。


解説

日本の反ワクチン・陰謀論者の言説も、その多くはケネディJr.などのアメリカの複数の陰謀論者に源を求めることができると言われています。

そういえば、この記事にみられるいくつもの陰謀論は、私のよく知る毒舌ブロガー海さんが口にしていたものと同じですね。

このような人物が、トランプ次期大統領により保健福祉長官に起用されると知り、私はトランプ氏の不見識に驚きました。

かつてアメリカは日本にとって民主主義の先生の立場の国でしたが、今では呆れるばかりの国に成り下がったと思います。


獅子風蓮


総括:コロナワクチン その4 インフォデミックが広がる訳

2024-03-02 01:06:30 | 反ワクチン・陰謀論

新型コロナウイルスも度重なる変異を繰り返すことで弱毒化し、国民の多数が感染やワクチン接種による免疫を得ることで、新型コロナの感染者数も落ち着いてきました。

反ワクチンの人々はこの間、いろいろ無責任なことを言ってきましたが、ここらへんで一区切りですね。総括しておきましょう。

 

d-マガジンで興味深い記事を読みました。
何回かにわけて引用します。


ニューズウィーク日本版 2月20日号

Special Report
VACCINE
HERE ARE THE FACTS
あなたが打った
ワクチンの真実
医療
コロナワクチンのせいで過剰に人が死んでいる? 
国内外のデータを基に誤情報と陰謀論を検証する
國井 修
(元長崎大学熱帯医学研究所教授)

(つづきです)


インフォデミックが広がる訳

誤った情報が急速に拡散し、社会に影響を及ぼすインフォデミックや陰謀論を基にしたプランデミックは全くの嘘でなくとも、信頼できないデータや情報を基にしていたり、信頼できるデータや情報を使っていてもその解釈やそこからの推測が誤っていたりすることがある。 ここで重要なのは科学的な議論であり、それには普遍性(いつどこにでも妥当する)、論理性(主張が首尾一貫しており理論の構築や用語に至るまで一義的である)、客観性(物事の存在が主観によって左右されない)が必要だ。
ただし、インフォデミックやプランデミックがなぜ世界中で巻き起こるのかも考える必要がある。突如として現れて世界を席巻した新型コロナウイルスは未知のものであり、そこから1年以内にmRNAという新たな技術で作られたワクチンは未曽有のものだった。初めから全てのことを科学的に説明できたわけではなく、普遍性、論理性、客観性のある議論は簡単ではなかった。
そんな中でロックダウン(都市封鎖)やさまざまな活動の自粛など個人の自由が制限され、ワクチン接種を義務化する国もあった。そこには個人の自由や権利が奪われ、権力への不満や敵意まで感じる人もいた。
当時、筆者はヨーロッパに住んでいたが、周りにそのような感情を持つ人が少なからずいた。新たな技術に不安も募る。政府は大丈夫と言うが、接種した人の中には重篤な副反応を訴える人もいる。死者もいるらしい。それを報告しても、ワクチンとの因果関係は99%が「情報不足などで評価できない」と判断される。
そんな中で「ワクチンは危ない」「信用できない」という情報があったらそちらに耳を傾け、その情報を信じ込んでしまうかもしれない。その情報源が商売や金儲けを含む意図で嘘や誤った情報を流そうとしていたとしても。
ワクチン接種後に重篤な疾病にかかった人や、家族が死亡して取り残された人々にとって、 科学の普遍性、論理性、客観性を追い求めた議論や結論よりも、ワクチンに対する納得できない、やるせない思いに重きを置くのは当然かもしれない。
だからこそ、ワクチンの有効性と安全性をより迅速に正確に把握し、分かりやすく国民に伝えていくことが重要だ。特に安全性についてはリアルタイムでモニタリングし、シグナルを早期に検知して、健康問題とワクチン接種との因果関係をより明確にできるシステムを構築する必要がある。
ただし、こうしたデータがそろっているアメリカやイギリスでも、いざワクチン接種との因果関係を突き止め、健康被害として補償する段階になるとそううまくはいっていない。
アメリカでは今年1月1日時点で1万2854件の新型コロナワクチンに対する補償制度への申し立てがあったが、1万640件が審査中または審査保留となり、判決が出た2214件のうち補償対象となったのは40件のみで98%以上は却下されている。支払われても1人2900ドルで、痛みや苦しみを十分補償しておらず、判断に透明性がないとの批判がある。
イギリスでも、23年6月13日時点で5708件の申し立てがあり3889件が審査中。1614件が却下 され、96人が補償対象となったのみ である。


次のパンデミックは必ず来る

世界のどこの国でも、今まで健康だったのにワクチン接種後に重篤な健康問題が突然現れたならば、ワクチンのせいにしたくなる。それに対して補償も十分でなければ、その不満や不信はインフォデミックやプラデミックの火種にもなるかもしれない。
日本としても今後、ワクチンの安全性に関するより科学的なアプローチとともに、ワクチン接種後に重篤な副反応の疑いがあった人や家族には、個別の相談やカウンセリングなどでその痛みや苦しみに耳を傾け、できるだけ寄り添うことのできる制度や仕組みが必要だろう。
因果関係が否定できない場合には、日本には「健康被害救済制度」があるが、その申請や判断、手続きなども含めて、健康被害者にとって納得いくものかどうか、再検討も必要かもしれない。
次のパンデミックは「来るかどうか」ではなく、「いつ来るか」の間題である。そのための備えとして、国産ワクチンの研究開発だけでなくワクチンの安全性についてのモニタリングを強化し、国民の不安や懸念に向き合い、いざというときの相談や補償も強化していくことが重要である。それがワクチンに対する国民からの長期的な信頼を得ることにもつながるだろう。


(筆者はジュネーブにある国際機関「グローバルファンド〔世界エイズ・結核・マラリア対策基金〕」の前職略・投資・効果局長。元長崎大学熱帯医学研究所教授。これまで国立国際医療センターやユニセフなどを通じて感染症対策、母子保健、緊急援助などに従事し、110ヵ国以上で開発援助活動を行う。近著に『人類 vs 感染症:新型コロナウイルス 世界はどう闘っているのか」〔CCCメディアハウス〕がある)

 

 

 


解説
ワクチン接種後に重篤な疾病にかかった人や、家族が死亡して取り残された人々にとって、 科学の普遍性、論理性、客観性を追い求めた議論や結論よりも、ワクチンに対する納得できない、やるせない思いに重きを置くのは当然かもしれない。
だからこそ、ワクチンの有効性と安全性をより迅速に正確に把握し、分かりやすく国民に伝えていくことが重要だ。特に安全性についてはリアルタイムでモニタリングし、シグナルを早期に検知して、健康問題とワクチン接種との因果関係をより明確にできるシステムを構築する必要がある。
(中略)
次のパンデミックは「来るかどうか」ではなく、「いつ来るか」の間題である。そのための備えとして、国産ワクチンの研究開発だけでなくワクチンの安全性についてのモニタリングを強化し、国民の不安や懸念に向き合い、いざというときの相談や補償も強化していくことが重要である。それがワクチンに対する国民からの長期的な信頼を得ることにもつながるだろう。

同感です。

ワクチンに対する国民の不安を解消するため、いろいろな面で、科学的で迅速な情報を提供することが必要でしょう。

 


獅子風蓮


総括:コロナワクチン その3 ワクチン接種による死亡例は?

2024-03-01 01:52:47 | 反ワクチン・陰謀論

新型コロナウイルスも度重なる変異を繰り返すことで弱毒化し、国民の多数が感染やワクチン接種による免疫を得ることで、新型コロナの感染者数も落ち着いてきました。
反ワクチンの人々はこの間、いろいろ無責任なことを言ってきましたが、ここらへんで一区切りですね。総括しておきましょう。

 

d-マガジンで興味深い記事を読みました。
何回かにわけて引用します。


ニューズウィーク日本版 2月20日号

Special Report
VACCINE
HERE ARE THE FACTS
あなたが打った
ワクチンの真実
医療
コロナワクチンのせいで過剰に人が死んでいる? 
国内外のデータを基に誤情報と陰謀論を検証する
國井 修
(元長崎大学熱帯医学研究所教授)

(つづきです)


「ワクチンによる死亡」の実態

アストラゼネカ製とJ&J製のウイルスベクターワクチンでは、接種後の血小板減少を伴う血栓塞栓が報告されている。これはワクチン接種後4~28日に脳静脈や内臓静脈といった通常ではあまり発生しない場所に血栓症が生じるもので、発症メカニズムは明らかではないが、ワクチンに使用されているアデノウイルスが血小板に結合して活性化する可能性が疑われている。
アストラゼネカ製ワクチンは欧州では100万回接種当たり3.4件の発症が認められ、注意を喚起している。だがファイザー製とモデルナ製では、接種者と非接種者との比較で発生率の有意な増加は認められて いない。
ワクチンによる直接的な副反応とは言えないが、ワクチン接種によりウイルスに感染したときの症状が増強してしまうワクチン関連疾患増悪(VAED)という現象を懸念する人がいる。確かに、過去にはRSウイルスワクチンや不活化麻疹ワクチン導入時に観察され、またデング熱ワクチンでもワクチンによって誘導された抗体によって感染が増強する抗体依存性増強(ADE)の可能性 が疑われ、9歳未満では接種が中止されている。
ただし新型コロナについては、ファイザー製とモデルナ製ワクチンの動物実験によりVAEDやADEに関連する免疫誘導は見られず、実社会でもこの現象を裏付ける研究結果は認められていない。
これ以外にも脳卒中や認知症などワクチン接種による重篤な副反応ではないかと疑われた疾患はあるが、世界のさまざまな調査研究結果から、これらの疾患が自然発生率と比べてワクチン接種後に多く発生しているとのエビデンスはない。

ワクチン接種による最も重篤な副反応である死亡はどれだけあったのだろうか?
「ワクチンを打った時期に超過死亡が増えた」との言説が出回っているが、これはさまざまな研究で否定されている。
例えば日本では、ワクチン接種後でなく、接種前から死亡数は増えており、むしろ21年のデルタ株や22年のオミクロン株の流行による多くの超過死亡をワクチンによって防ぐことができたとも言える。アメリカでは政治的な影響もあり、ワクチン接種率の高い州と低い州の違いがあるが、ワクチン接種率の高い州で超過死亡は少なくなっている。
また欧州29カ国に関する研究では、初回および追加接種率をある時期までにそれぞれ70%、35%に達した早い国のグループとそのレベルに達しなかった遅い国のグループを比較すると、後者の新型コロナによる平均超過死亡は前者の約5倍だった。
では、実際にワクチンによる死亡はどの程度報告されているのだろう。
アメリカにはワクチン接種後に起こった健康問題を本人や家族、医療従事者など誰からでも自発的に報告できる「ワクチン有害事象報告システム(VAERS)」がある。今年1月25日時点で2万2225人の死者が報告されている。
このVAERSの死亡数を使って、実際のワクチン関連死は15万人以上だ、いや30万人だなどと勝手に臆測した数字がSNSなどで独り歩きした。このVAERSはワクチン接種によって何か問題が起きていないかのシグナルを検知するために広く一般や開業医などからも情報を吸い上げるもので、ワクチン接種との因果関係も情報の信頼性も不明である。何といっても、ワクチンの有無にかかわらずアメリカでは毎日2300人以上が心血管障害で死亡し、そ れを含む9400人以上が何らかの原因で命を落としている。それが起こる前にたまたまワクチン接種を受けていたということもあり得る。
ちなみにイギリスでは、医師の死亡診断書に新型コロナワクチンが死亡原因として記載されているものを集計して毎月報告している。23年7月30日時点で累計64例で、これをさらに精査した結果、ワクチンとの因果関係がありそうなものは56例となっている。当時、イギリスの人口のうち6000万人近くが少なくとも1回のワクチン接種をしていたと言われるので、新型コロナ流行中の約3年間で100万人当たり1人程度の死亡である。
また、ワクチン接種率がほぼ100%と高率であるカタールではワクチン接種後30日以内に死亡した例を全て登録している。その数は22年6月時点で138例であり、うちワクチンとの因果関係がある可能性が大および中程度と判断されたものは23例だった。当時約265万人がワクチンを接種していたので、100万人当たり10人未満の割合となる。


日本における「ワクチン死」

日本においても医療機関や製造販売業者から新型コロナワクチンの副反応疑いが報告されている。
23年7月30日時点で新型コロナワクチンは約4億回接種され、死亡はファイザー製1878例、モデルナ製236例を含め2117例が報告された。これらについては性別、年齢 接種したワクチンの種類・回数・ロット番号、接種日と死亡日、基礎疾患・既往症、服薬状況、死因や死亡の状況、報告医が死因等の判断に至った検査、他の要因の可能性などが詳細に報告され、不明な部分は受診した医療機関などに問い合わせてできる限りの情報を調べている。それらの情報を基に外部専門家らが評価して、ワクチンと死亡との「因果関係が否定できない(α)」 「因果関係が認められない(β)」「情報不足等により因果関係が評価できない(γ)」の3つに分類して報告した。
その結果、2117例中「因果関係が否定できない」とされたのは、ファイザー製ワクチンを3回目接種した2日後に「心筋心膜炎」で亡くなったとされる14歳女性と、ファイザー製を4回目接種した当日に「アナフィラキシー」の疑いで緊急搬送されたが最終的に死因が特定できなかった42歳女性の2例だった。
「因果関係が認められない」は、ワクチン接種4日後に誤嚥性肺炎で死亡した全介助状態の65歳男性やワクチン接種前から腹部大動脈瘤が切迫した状況であった93歳男性など11例。残りの2104例は「情報不足などで評価できない」と判断された。
その詳細を見てみると、90歳以上、時には100歳以上で高血圧・心臓病からまでさまざまな基礎疾患を持っていて、突然死で死亡原因がよく分からないものから、20~40歳代でワクチン接種後に突然死したのが基礎疾患によるものか否か情報がない、なかには精神疾患を発症して自殺したのでワクチンとの因果関係はなさそうだが、完全に否定もできないものまでさまざまである。
これらの中で原因究明のために検死をしたものは、わずか1割程度だったという。私も医師として過去に多くの突然死や心肺停止後の方を診たが、検死もせずに、また検死をしたとしてもその原因を突き止めるのは簡単ではなかった。
いずれにせよ、死亡報告された2117例のうち99%以上は「情報不足などで評価できない」と分類された。1億人以上がワクチン接種を受けて、報告された死亡数2117人とすると100万人当り約20人、「因果関係が否定できない」と判断された2人とすると100万人当たり約0.02人の死亡確率となる。
これらの報告データだけではワクチンの安全性が十分につかめないため、日本を含め世界でさまざまな調査研究がなされてきた。
例えば、日本国内において20年9月から1年間、18歳以上の22万人以上をワクチン接種群(1回接種13.6万人と2回接種12.7万人)と非接種群18.3万人に分けて180日以上観察した結果、 死亡はそれぞれ65人、65人、2316人と非接種群で多く、接種群の死亡リスクは非接種群よりも26分の1も少ないことが示されている。この研究で示された死亡はワクチンとの因果関係は追究しておらず、あくまで観察された死亡数であることに注意したい。
世界では同様に、接種群と非接種群に分けたランダム化比較試験が数多くなされているが、ワクチン接種によって死亡が増えるという結果はなく、むしろ接種によって死亡を防いでいるとのエビデンスが示されている。
感染症が猛威を振るっていた時代であれば、有効性の高いワクチンが感染や重症化を防ぐ利点を感じる度合いが大きいが、感染症が減り、その影響もあまり感じなくなってくると、予防接種のリスクのほうにより意識が高まるのは当然だ。
特にワクチンは本来、健康な人に接種するため、その安全性には高い水準が求められ、リスクに対する国民の許容度は低くなる。まれな副反応であってもしっかり検討すべきであり、因果関係があるのかないのかについても、より明確な情報を入手できるシステムが必要である。
その意味では、副反応疑いで死亡している人のほとんどが「情報不足などで因果関係を評価できない」という日本の現状を改善する必要がある。ワクチンの安全性をチェックできるよりよいシステムとして参考になるのが、アメリカのワクチン安全性データリンク(VSD)である。
VSDとは米CDCが90年に創設したプロジェクトで、9つの民間の病院群と共同でワクチンの安全性をモニタリングする。ここでは約1200万人の医療情報を集積している。
先述のVAERSは予防接種後の有害事象の全国からの自発的報告として比較的迅速にシグナルを検知できるが、データが不完全で、報告バイアスがあり、比較群が欠如している。一方、VSDは医療機関でのさまざまな検査データを含めた電子カルテの情報と正確な予防接種に関するデータなどがつながっているため、ワクチン接種群と非接種群との比較、ワクチン接種前の健康問題や基礎疾患の有無などの分析により、ワクチン接種後の健康問題とワク チンとの因果関係も見えやすい。
さまざまなデータを自動解析し、統計的に有意な問題があればそれをほぼリアルタイムで検出でき、毎週データを更新できるので、未知であるとかまれな副反応疑いも見つけやすい。 ネットワーク内の各地域に医師、疫学者を含む専門家もいるため、これらのデータを基に新たな研究も計画・実施できる。

(つづく)


解説
「ワクチンを打った時期に超過死亡が増えた」との言説が出回っているが、これはさまざまな研究で否定されている。
例えば日本では、ワクチン接種後でなく、接種前から死亡数は増えており、むしろ21年のデルタ株や22年のオミクロン株の流行による多くの超過死亡をワクチンによって防ぐことができたとも言える。アメリカでは政治的な影響もあり、ワクチン接種率の高い州と低い州の違いがあるが、ワクチン接種率の高い州で超過死亡は少なくなっている。

このことは、事実として押さえておきましょう。
その上で……

(日本では)死亡報告された2117例のうち99%以上は「情報不足などで評価できない」と分類された。(中略)

特にワクチンは本来、健康な人に接種するため、その安全性には高い水準が求められ、リスクに対する国民の許容度は低くなる。まれな副反応であってもしっかり検討すべきであり、因果関係があるのかないのかについても、より明確な情報を入手できるシステムが必要である。
その意味では、副反応疑いで死亡している人のほとんどが「情報不足などで因果関係を評価できない」という日本の現状を改善する必要がある。ワクチンの安全性をチェックできるよりよいシステムとして参考になるのが、アメリカのワクチン安全性データリンク(VSD)である。

これは、今後の課題として受け止める必要がありますね。

 

獅子風蓮


総括:コロナワクチン その2 安全性はどうだったのか?

2024-02-29 01:16:43 | 反ワクチン・陰謀論

新型コロナウイルスも度重なる変異を繰り返すことで弱毒化し、国民の多数が感染やワクチン接種による免疫を得ることで、新型コロナの感染者数も落ち着いてきました。

反ワクチンの人々はこの間、いろいろ無責任なことを言ってきましたが、ここらへんで一区切りですね。総括しておきましょう。

 

d-マガジンで興味深い記事を読みました。
何回かにわけて引用します。


ニューズウィーク日本版 2月20日号

Special Report
VACCINE
HERE ARE THE FACTS
あなたが打った
ワクチンの真実
医療
コロナワクチンのせいで過剰に人が死んでいる? 
国内外のデータを基に誤情報と陰謀論を検証する
國井 修
(元長崎大学熱帯医学研究所教授)

(つづきです)


ワクチンが実際に防いだもの

実社会においてはどうなのか。さまざまな研究が行われてきたが、なかでも世界に先駆けてワクチン接種を全国展開したイスラエルで実施された大規模研究では、ファイザー製ワクチンの接種群と非接種群それぞれ59万人を比較したところ、2回接種により感染率を94%、入院率を87%、重症化率を92%下げていたことが分かった。
米疾病対策センター(CDC)の報告ではモデルナ製でも似たような高い有効性が示され、イギリスからの報告ではアストラゼネカも1回接種の発症予防効果は73%と悪い結果ではなかった。
しかし、ワクチン接種が増えても流行が続き、接種しても新型コロナに感染した人の話を聞くと、「ワクチンは本当に効いているのか」と疑問に思った人も多いのではないか。
実際、新型コロナワクチンには2つの難しさがあった。1つはmRNAワクチンの免疫誘導力は強いが、その自然減衰も速いということ。ファイザー製ワクチンでは接種6カ月後に抗体価が約10分の1に低下してしまうとのデータもある。
2つ目は新型コロナウイルスの変異速度が速いため、変異株に対してはワクチンの有効性が下がる傾向にあることだ。特にオミクロン株には起源株で開発したワクチンを接種しても感染してしまう「ブレークスルー感染」を引き起こし、イギリスのデータではオミクロン株に対する発症予防効果がファイザー製で8.8% モデルナ製で14.9%と大きく下がっていた。
日本の調査でも発症予防効果はほぼ半減との結果だ。さらに最近では XBB1.5やEG.5、JN.1などオミクロン株の亜系統も出現し、起源株によるワクチンの効果が下がっているとの報告もある。
ではワクチン接種は意味がないのかというと、そうではない。3回目の追加接種をすることで2回接種に比べて発症率を75%、入院率を80%下げるとのイギリスの報告をはじめ、入院率を93%、重症化率を92%、死亡率を81%下げるとのイスラエルの研究結果もあり、追加接種の高い有効性を示している。
また、4回目の追加接種により、3回接種に比べてオミクロン株流行下のブレークスルー感染率を3分の1程度に抑え、発症や重症化も半分から3分の1に減少させるとのデータのほか、60歳以上では発症率を55%、入院率を68%、死亡率を74%下げる、という研究結果もある。これ らのエビデンスにより、多くの国で特にリスクの高い人々に対する追加接種が推奨されているのだ。
さらに起源株のワクチンだけでなく、BA.1やBA.4-5などオミクロン株に対応したワクチンの有効性も示され、アメリカの研究では発症予防とともに、73%の入院予防効果を示した。
オミクロン株の出現で30歳未満の若年層も多く感染し、さらに起源株ではあまり見られなかった5歳未満児の感染・重症化が目立つようになった。特にアメリカでは新型コロナによる子供の1日当たりの死亡数がオミクロン株流行後は10倍に増加し、子供へのワクチン接種も推奨されるようになった。5~11歳の子供を対象としたアメリカの研究では、ワクチン接種群は非接種群に比べ感染率を74%、重症化率を76%、集中治療を要する入院率を85%下げている。
ワクチン接種によるパンデミック収束を期待していた人々にとっては劇的な効果に見えなかったかもしれないが、世界のさまざまなデータを基に推計すると、20年12月からの1年間だけでワクチン接種によって世界で1980万人の命が救われたとの推計もある。
つまりワクチンがなければ今の5倍以上に死者が増えていた可能性がある。京都大学の西浦博教授らの研究でも、ワクチンがなければ日本国内の21年2~11月の死者は約36倍に増えていた可能性が指摘されている。
では安全性はどうだったのか? 
まずワクチン接種で留意すべき副反応はアナフィラキシーショックである。急性のアレルギー反応で、軽いものは蕁麻疹程度だが、くしゃみ、吐き気、下痢など複数の症状が現れ、重篤になると呼吸困難や動悸、さらに血圧と意識が低下して命に関わることもある。これらがわずか30分以内に起こることもあるのだ。


「重篤な副反応」疑いの例

CDCによると、ファイザー製ワクチンの初回接種によるアナフィラキシーの発生頻度は100万回接種して4.7例、モデルナ製では2.5例、日本ではファイザー製で100万回接種当たり3.6例、モデルナ製で1.6例が報告されている。
適切な問診と処置をすればアナフィラキシーによる死亡はめったに起こらないが、アメリカではカンザスシティーに住む68歳の女性などがアナフィラキシーの疑いで死亡している。世界14カ国にわたるの研究では新型コロナワクチンによるアナフィラキシーは7942例、うち死亡は43例だった。
インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーの発生頻度は接種100万回当たり1.3例で、それに比べるとやや多いが、食物によるアナフィラキシーを経験したことのある小中高生は日本で100万人当たり約6200人、食物によるアナフ ィラキシーで死亡する人が毎年3人ほどいることを考えると、新型コロナワクチンのアナフィラキシーが必ずしも多いとは言えない。
ワクチンに関連する重篤な副反応の疑いとして心筋炎や心膜炎もある。メカニズムは不明だが、ワクチン接種による発熱や免疫反応の活性化により心筋などの炎症が引き起こされる可能性が考えられている。世界中から報告があるが、日本ではワクチン接種後に10代男性で起こる心筋炎の発生頻度はファイザー製で100万人当たり3.69件、モデルナ製で28.8件である。
一方、新型コロナの感染自体による心筋炎の発生は100万人当たり220件、特に新型コロナに感染したアメリカの平均19歳のスポーツ選手では2.3%、100万人当たりにすると2万3000人に心筋炎が発生する計算になる調査結果もあり、心筋炎・心膜炎はワクチンによって起こるリスクよりも、ワクチンを接種せずに新型コロナに感染して心筋炎にかかる可能性のほうが圧倒的に高いことが示されている。
さらに、ワクチン接種によって起こる心筋炎や心膜炎のほとんどは回復するが、感染に伴う場合は「コロナ後遺症」として長期に症状が続くケースも多い。
顔面神経の機能不全で顔の片側の筋肉が突然動きにくくなったり動かなくなるベル麻痺も、特にmRNAワクチン接種後の発生が報告された。通常でも毎年100万人当たり150~300人の発生がある疾患だが、アメリカの600万人以上のデータを含む調査研究ではワクチン接種による過剰な発生は見られていない。
四肢の脱力、しびれ感が急速に全身に広がるギラン・バレー症候群(GBS)も、ワクチン接種後の副反応疑いとして報告されている。
GBSは一般的に風邪や下痢などの症状から発症するが、時にインフルエンザやポリオなどのワクチン接種や抗ウイルス薬、抗癌剤などの医薬品による副反応としても発症する。アメリカでの報告数は新型コロナ以前で年間100万人当たり10~20例で、インフルエンザワクチン接種によるGBS発生は100万回で1~2例であった。
新型コロナに対するファイザー製とモデルナ製ワクチン接種後のGBSの報告数は、アメリカで接種100万回当たり10例と自然発生率とほぼ同じだったが、ヒトのアデノウイルスをワクチン成分のベクター(運び手)に利用するジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)ワクチンではその15~30倍の発生率と高く、チンパンジー由来のアデノウイルスをベクターに利用するアストラゼネカ製ワクチンでも接種100万回当たり10例前後の超過発生が起こるとの研究結果もあり、注意が必要だ。
一方、新型コロナ感染によってもGBSは発症するが、イスラエルの研究ではその発症リスクが非感染者の6倍と高いため、mRNAワクチンで感染を予防したほうがGBSの発症リスクは低いと考えられた。
ウイルス感染後やワクチン接種1~4週間以内に起こる脳・脊髄の疾患に、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)がある。
人口100万人当たり8人ほどが罹患するまれな病気で、子供に多い。発熱や頭痛、吐き気などから始まり、意識障害やけいれん、手足が動かしにくい、目が見えにくい、しゃべりにくい、ふらつくなどの症状が現れる。多くは数日以内に回復し、6カ月以内にはほとんどの人が回復すると言われている。
新型コロナワクチン接種後の副反応疑いとして、世界で20件の研究報告から54症例が報告されたが、発生頻度は100万人当たり0.2例程度。これをワクチンによる副反応とするには頻度が低く、むしろ新型コロナ感染後に発生するADEMのほうが多いとの報告もある。

(つづく)


解説
世界に先駆けてワクチン接種を全国展開したイスラエルで実施された大規模研究では、ファイザー製ワクチンの接種群と非接種群それぞれ59万人を比較したところ、2回接種により感染率を94%、入院率を87%、重症化率を92%下げていたことが分かった。

実社会においても、ファイザー製コロナワクチンは、きわめて高い有効性を示しました。


実際、新型コロナワクチンには2つの難しさがあった。1つはmRNAワクチンの免疫誘導力は強いが、その自然減衰も速いということ。ファイザー製ワクチンでは接種6カ月後に抗体価が約10分の1に低下してしまうとのデータもある。
2つ目は新型コロナウイルスの変異速度が速いため、変異株に対してはワクチンの有効性が下がる傾向にあることだ。

しかし実際には、このようにワクチンには、2つの難しさがありました。

 

ワクチン接種によるパンデミック収束を期待していた人々にとっては劇的な効果に見えなかったかもしれないが、世界のさまざまなデータを基に推計すると、20年12月からの1年間だけでワクチン接種によって世界で1980万人の命が救われたとの推計もある。
つまりワクチンがなければ今の5倍以上に死者が増えていた可能性がある。

このことは、了解しておく必要があります。

 

安全性はどうだったのか?
(中略)
心筋炎・心膜炎はワクチンによって起こるリスクよりも、ワクチンを接種せずに新型コロナに感染して心筋炎にかかる可能性のほうが圧倒的に高いことが示されている。

アナフィラキシーの発生頻度は他のワクチンに比べてやや高かったことは事実だが、ワクチン接種現場で適切な処置が行われればめったに死亡することはありません。
心筋炎や心膜炎は重篤な副作用ですが、ここに書いてあるように、ワクチン接種せずに新型コロナに感染した場合のリスクの方が高いのです。

ギラン・バレー症候群(GBS)についても、同じような考察がなされています。

 

獅子風蓮


総括:コロナワクチン その1 ワクチンは本当に効いていたのだろうか?

2024-02-28 01:42:20 | 反ワクチン・陰謀論

新型コロナウイルスも度重なる変異を繰り返すことで弱毒化し、国民の多数が感染やワクチン接種による免疫を得ることで、新型コロナの感染者数も落ち着いてきました。

反ワクチンの人々はこの間、いろいろ無責任なことを言ってきましたが、ここらへんで一区切りですね。総括しておきましょう。

 

d-マガジンで興味深い記事を読みました。
何回かにわけて引用します。


ニューズウィーク日本版 2月20日号

Special Report
VACCINE
HERE ARE THE FACTS
あなたが打った
ワクチンの真実
医療
コロナワクチンのせいで過剰に人が死んでいる? 
国内外のデータを基に誤情報と陰謀論を検証する
國井 修
(元長崎大学熱帯医学研究所教授)

超スピードで開発された新型コロナウイルスのワクチンは、2023年末までに世界で約136億回接種された。一方で、国内外の一部ではその危険性を訴える声が拡散し続けている。本当のところ、ワクチンの有効性と危険性はどうなのか。世界の感染症対策をリードしてきた医師の國井修氏が国内外のデータを基に検証した。そこから見えてきたコロナワクチンの真実とは?(本誌編集部)


ワクチンにはデマや誤情報が付き物である。古くから「ポリオや麻疹などのワクチン接種で HIVに感染する/不妊になる/自閉症になる」などがあったが、現在でも「新型コロナウイルスやインフルエンザのワクチン接種で過剰に人が死んでいる/闇の政府が絡んでいる」などの言説がSNSなどで広がっている。パンデミックにちなんで、こうしたデマや誤情報が広がることをインフォデミック(infodemic)、陰謀論が広がることをプランデミック(plandemic)と言う。
私はこれまで30年以上、主に途上国の感染症対策や母子保健に従事し、現在は結核やマラリア、顧みられない熱帯病などの感染症の研究開発支援をしているが、さまざまなワクチンに関し、多くの国で同じようなデマや誤情報が広がるのを見聞きしてきた。そうして人々の間にワクチン忌避が広がり、感染や死者が増える現実も目の当たりにしてきた。
本稿では新型コロナパンデミックを振り返り、実際にワクチンは有効だったのか、それによるワクチン後遺症や死者はどれほどいたのか、今後、新型コロナに限らず、ワクチンに対してどのような情報を信じ、どのように対処したらいいのかを国際的データを使いながら考えてみたい。
新型コロナワクチンには、2020年12月2日にイギリスで世界初の緊急使用許可を得た米ファイザーとビオンテックが共同開発したmRNAワクチンを筆頭に、WHO(世界保健機関)が緊急使用リストに入れたものが16製品ある。世界で研究開発が進められたワクチン候補は240を超え、その臨床試験は80カ国800件以上実施された。そこから選ばれた16製品は、研究開発の方 法、製品の品質・安全性・有効性・免疫原性(抗原が免疫反応を引き起こす能力)・効能などの観点から厳しい審査を通過したものと言える。
新型コロナワクチンは23年末までに世界で約136億回接種され、初回ワクチン接種と追加接種はそれぞれ世界人口の7割、3割をカバーしたとされる。ただし、国民のほぼ100%が接種している国もあれば、5%に満たない国もあり、その格差は大きい。ちなみに日本は、24年2月6日時点で4億2200万回以上が接種され、1回目接種は人口の8割超、特に高齢者は9割超、3回目接種も人口の約7割をカバーし、接種率は世界のトップクラスだ。
この新型コロナワクチンは本当に効いていたのだろうか?
ワクチンの有効性は病原体やワクチンの種類によって大きく異なる。例えば天然痘や麻疹のワクチンであれば、1~2回の接種で100%に近い感染予防効果を示し、その効果は一生続くため、接種率を上げれば感染者や死者数を急速に減らすことができる。天然痘が根絶できたのも、麻疹による死亡が急減したのもワクチンの役割が大きい。
一方、新型コロナについては、世界でワクチン接種が広がりながらも、なかなか流行が止まらず、増加したように見える国もあった。そのため、有効性を疑問視する人が少なくない。


そもそも「有効性」とは何か

ここで有効性とは何か、いかにそれを測定するかを整理したい。有効性には大きく分けて、①感染・発症の予防 ②重症化・死亡の予防の2つがある。この有効性の評価方法には、①ワクチンで誘導される免疫力を血液で測る ②臨床試験で接種群と対照群に分け、発症率・重症化率・致命率などを比較する ③ワクチン普及後に目的の感染症の発症や死亡が実社会でどのくらい減少したかを測る、という3つがある。
まず免疫力は、ウイルスと闘う中和抗体などの物質がワクチン接種によってどれだけ増加するかを測るが、日本で承認されているワクチン全てで大幅な上昇を示し、なかにはこれらの抗体価が50倍以上に上昇したものもある。
次に臨床試験での有効性だが、20年11月に公表されたファイザー製ワクチンの臨床試験データの最終分析結果には世界が驚いた。発症予防の有効性が95%というのだ。
誤解しやすいので説明しておくと、これは100人がワクチンを受けて95人が感染しないというものではない。ワクチンを接種したグループと接種しないグループの間で感染・発症や重症化を比較して、どれだけ予防できたかを示すものだ。
例えば1000例にワクチン、1000例にプラセボ(有効成分や害のない偽薬)を接種し、プラセボ群で100例、接種群で5例が感染した場合、プラセボ群の感染リスクは 100/10000=0.1(10%)、接種群の感染リスクは5/1000=0.005(0.5%)となる。
接種群の感染リスクをプラセボ群の感染リスクで割ったもの(0.5/10=0.05)をリスク比と呼び、プラセボ群に比べてどれほど接種群に発症リスクがあるかを示し、1-リスク比(1 - 0.05=0.95)は逆にどれだけリスクを回避したかを示す。これが有効性95%となる。
ファイザーの臨床試験には接種群2万1720人、プラセボ群2万1728人が参加。新型コロナを発症したのは接種群で8人プラセボ群で162人であり、各群の発症リスクからリスク比を求めると4.9%、従って有効性は95%とされた。ちなみに重症患者はワクチン接種群で1人、プラセボ群が9人で重症化予防も約90%と高い有効性が示された。
同じmRNAのモデルナ製も似たように高い発症予防効果(94.1%)を示し、mRNAではなくベクターワクチンであるアストラゼネカ製も約70%の効果だった。ワクチン開発前、WHOや米食品医薬品局(FDA)では予防効果が50%以上であることをワクチン承認の条件としていただけに、いずれのワクチンも高い有効性を示したことになる。

(つづく)


解説
この新型コロナワクチンは本当に効いていたのだろうか?


一般的なワクチンの有効性の求め方について分かりやすい説明がありましたね。

初期の新型コロナの株については、mRNA型のワクチンに関していえば、90%以上の高い有効性を示していたことは事実です。


獅子風蓮