新型コロナウイルスも度重なる変異を繰り返すことで弱毒化し、国民の多数が感染やワクチン接種による免疫を得ることで、新型コロナの感染者数も落ち着いてきました。
反ワクチンの人々はこの間、いろいろ無責任なことを言ってきましたが、ここらへんで一区切りですね。総括しておきましょう。
d-マガジンで興味深い記事を読みました。
何回かにわけて引用します。
ニューズウィーク日本版 2月20日号
Special Report
VACCINE
HERE ARE THE FACTS
あなたが打った
ワクチンの真実
医療
コロナワクチンのせいで過剰に人が死んでいる?
国内外のデータを基に誤情報と陰謀論を検証する
國井 修
(元長崎大学熱帯医学研究所教授)
(つづきです)
インフォデミックが広がる訳
誤った情報が急速に拡散し、社会に影響を及ぼすインフォデミックや陰謀論を基にしたプランデミックは全くの嘘でなくとも、信頼できないデータや情報を基にしていたり、信頼できるデータや情報を使っていてもその解釈やそこからの推測が誤っていたりすることがある。 ここで重要なのは科学的な議論であり、それには普遍性(いつどこにでも妥当する)、論理性(主張が首尾一貫しており理論の構築や用語に至るまで一義的である)、客観性(物事の存在が主観によって左右されない)が必要だ。
ただし、インフォデミックやプランデミックがなぜ世界中で巻き起こるのかも考える必要がある。突如として現れて世界を席巻した新型コロナウイルスは未知のものであり、そこから1年以内にmRNAという新たな技術で作られたワクチンは未曽有のものだった。初めから全てのことを科学的に説明できたわけではなく、普遍性、論理性、客観性のある議論は簡単ではなかった。
そんな中でロックダウン(都市封鎖)やさまざまな活動の自粛など個人の自由が制限され、ワクチン接種を義務化する国もあった。そこには個人の自由や権利が奪われ、権力への不満や敵意まで感じる人もいた。
当時、筆者はヨーロッパに住んでいたが、周りにそのような感情を持つ人が少なからずいた。新たな技術に不安も募る。政府は大丈夫と言うが、接種した人の中には重篤な副反応を訴える人もいる。死者もいるらしい。それを報告しても、ワクチンとの因果関係は99%が「情報不足などで評価できない」と判断される。
そんな中で「ワクチンは危ない」「信用できない」という情報があったらそちらに耳を傾け、その情報を信じ込んでしまうかもしれない。その情報源が商売や金儲けを含む意図で嘘や誤った情報を流そうとしていたとしても。
ワクチン接種後に重篤な疾病にかかった人や、家族が死亡して取り残された人々にとって、 科学の普遍性、論理性、客観性を追い求めた議論や結論よりも、ワクチンに対する納得できない、やるせない思いに重きを置くのは当然かもしれない。
だからこそ、ワクチンの有効性と安全性をより迅速に正確に把握し、分かりやすく国民に伝えていくことが重要だ。特に安全性についてはリアルタイムでモニタリングし、シグナルを早期に検知して、健康問題とワクチン接種との因果関係をより明確にできるシステムを構築する必要がある。
ただし、こうしたデータがそろっているアメリカやイギリスでも、いざワクチン接種との因果関係を突き止め、健康被害として補償する段階になるとそううまくはいっていない。
アメリカでは今年1月1日時点で1万2854件の新型コロナワクチンに対する補償制度への申し立てがあったが、1万640件が審査中または審査保留となり、判決が出た2214件のうち補償対象となったのは40件のみで98%以上は却下されている。支払われても1人2900ドルで、痛みや苦しみを十分補償しておらず、判断に透明性がないとの批判がある。
イギリスでも、23年6月13日時点で5708件の申し立てがあり3889件が審査中。1614件が却下 され、96人が補償対象となったのみ である。
次のパンデミックは必ず来る
世界のどこの国でも、今まで健康だったのにワクチン接種後に重篤な健康問題が突然現れたならば、ワクチンのせいにしたくなる。それに対して補償も十分でなければ、その不満や不信はインフォデミックやプラデミックの火種にもなるかもしれない。
日本としても今後、ワクチンの安全性に関するより科学的なアプローチとともに、ワクチン接種後に重篤な副反応の疑いがあった人や家族には、個別の相談やカウンセリングなどでその痛みや苦しみに耳を傾け、できるだけ寄り添うことのできる制度や仕組みが必要だろう。
因果関係が否定できない場合には、日本には「健康被害救済制度」があるが、その申請や判断、手続きなども含めて、健康被害者にとって納得いくものかどうか、再検討も必要かもしれない。
次のパンデミックは「来るかどうか」ではなく、「いつ来るか」の間題である。そのための備えとして、国産ワクチンの研究開発だけでなくワクチンの安全性についてのモニタリングを強化し、国民の不安や懸念に向き合い、いざというときの相談や補償も強化していくことが重要である。それがワクチンに対する国民からの長期的な信頼を得ることにもつながるだろう。
(筆者はジュネーブにある国際機関「グローバルファンド〔世界エイズ・結核・マラリア対策基金〕」の前職略・投資・効果局長。元長崎大学熱帯医学研究所教授。これまで国立国際医療センターやユニセフなどを通じて感染症対策、母子保健、緊急援助などに従事し、110ヵ国以上で開発援助活動を行う。近著に『人類 vs 感染症:新型コロナウイルス 世界はどう闘っているのか」〔CCCメディアハウス〕がある)
【解説】
ワクチン接種後に重篤な疾病にかかった人や、家族が死亡して取り残された人々にとって、 科学の普遍性、論理性、客観性を追い求めた議論や結論よりも、ワクチンに対する納得できない、やるせない思いに重きを置くのは当然かもしれない。
だからこそ、ワクチンの有効性と安全性をより迅速に正確に把握し、分かりやすく国民に伝えていくことが重要だ。特に安全性についてはリアルタイムでモニタリングし、シグナルを早期に検知して、健康問題とワクチン接種との因果関係をより明確にできるシステムを構築する必要がある。
(中略)
次のパンデミックは「来るかどうか」ではなく、「いつ来るか」の間題である。そのための備えとして、国産ワクチンの研究開発だけでなくワクチンの安全性についてのモニタリングを強化し、国民の不安や懸念に向き合い、いざというときの相談や補償も強化していくことが重要である。それがワクチンに対する国民からの長期的な信頼を得ることにもつながるだろう。
同感です。
ワクチンに対する国民の不安を解消するため、いろいろな面で、科学的で迅速な情報を提供することが必要でしょう。
獅子風蓮