引き続き高いアクセスをいただいておりますが、本日は監査請求とはまったくの別件です。
一昨日12日に県からの回答があったので紹介するとともに、問題提起しておきます。
8月4日の静岡新聞の報道で本県の耕作放棄地解消実績が素晴らしいかのように報道されたわけですが、この虚構のからくりを暴き、もって、ごまかしの実績ではなく、現下の耕作放棄地問題の本質に真摯に向き合って、その解決に取り組んでほしいというのが趣獅ナす。
<県への質問>
県が解消を目指す耕作放棄地の定義について
8月4日の静岡新聞において耕作放棄地の解消が報じられたが、これに先立つ昨年2月の県議会においても県は耕作放棄地の解消について解消実績を答弁しているところ、これらの中で県が解消したとする耕作放棄地の定義が農業センサスの定義「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽狽ケず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」と同じであるのか異なるものか、異なるとすればどのような定義で用いているか、県政運営の評価にかかわる重要な定義であるので御明示ください。
また、具体的に以下の場合を耕作放棄地の解消と考えているかお答えください。
1 センサスでいう耕作放棄地の草を1回刈り耕作可能な状態としたが具体的に耕作の意思ある者がなく耕作が見込まれない場合
2 センサスでいう耕作放棄地を耕作可能な状態に復さないまま肥矧ヌ理もしないで養蜂の蜜源として利用する場合
<県からの回答>
県政オンブズマン静岡 様
この度は、「県民のこえ」に御質問をいただき、ありがとうございました。
御質問をいただいた耕作放棄地の定義について、担当の農業振興課から回答いたします。
耕作放棄地の現地調査は、市町・農業委員会が行う農地利用状況調査と併せて実施することとされており、農地法第30条の「現に耕作の目的に供されておらず、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる土地」を耕作放棄地と位置付けております。
そして、農地法の運用に基づき、過去1年以上作物の栽狽ェ行われておらず、当該農地の所有者の農業経営に関する意向のほか、草刈や耕起等農地を常に耕作し得る状態に保つ行為が行われているかにより、市町・農業委員会が耕作放棄地であるか否か及び耕作放棄地が解消されているかを判断しております。
なお、地権者が行う草刈は、農業委員会などの指導により、所有者自らが維持管理する行為であり、農村景観の維持や不法投棄の未然防止など、農村の生活環境の保全につながることから、耕作放棄地の解消の1つである「保全管理」として扱っております。
また、一部地域において、養蜂農家が耕作放棄された柑橘園に一定の管理を施した上、蜜源として利用しておりますが、市町・農業委員会において耕作放棄地の現地調査結果を基に、解消として取り扱うか判断いただいております。
耕作放棄地の発生は、周辺農地の営農に支障を来たし、農村の生活環境の悪化につながることから、県は今後も関係機関と協力して、解消を進めてまいりますので、御理解と御協力をお願いいたします。
<当方が指摘する県回答の問題点>
①「耕作放棄地の現地調査は、市町・農業委員会が行う農地利用状況調査と併せて実施することとされており」
ここでいう「耕作放棄地の現地調査」は平成23年年度まで行われていた国の「耕作放棄地全体調査」のことをさしているが、国は平成24年度から「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」と名称を改めた。
理由は国の平成24年12月26日付けの「耕作放棄地全体調査要領の改訂について」によれば、国民から見て分かり難いとの指摘を受け、「本調査における「耕作放棄地」(不作付地を含まない)と農林業センサスにおける「耕作放棄地」(不作付地を含む)との違いについて明確化」を図るための名称変更である獅ェ示されている。
すなわち、県がこの「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」(旧名称「耕作放棄地全体調査」)の解消実績を耕作放棄地の解消と捉えているならば、まさに農林業センサスにおいては依然として「耕作放棄地」である「不作付地」のままにもかかわらず「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」(旧名称「耕作放棄地全体調査」)では荒廃農地から耕作可能な不作付地になれば、解消の扱いに変わってしまうと言うごまかしが引き起こされるのである。
②「農地法第30条の「現に耕作の目的に供されておらず、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる土地」を耕作放棄地と位置付けております。」
農地法に基づく農地利用状況調査の対象たる同法第30条に規定の状態にある農地は「遊休農地」と農地法上定義されているものであって、「耕作放棄地」と定義されるものではない。農地法には耕作放棄地の文言は使われていない。県がこのような定義で使っているとすれば、他県との比較など不可能なオリジナルの定義でしかないことになる。
③「市町・農業委員会が耕作放棄地であるか否か及び耕作放棄地が解消されているかを判断しております」
現実には県の定義に基づく数字を県の要請で計上しているのであって、市町・農業委員会が耕作放棄地の定義を選択しているわけではない。本来の農林業センサスにおける「耕作放棄地」(不作付地を含む)の意味で計上しようにも、そういう数字は県から求められていないのであって責任転嫁に等しい。
④「地権者が行う草刈は、農業委員会などの指導により、所有者自らが維持管理する行為であり、農村景観の維持や不法投棄の未然防止など、農村の生活環境の保全につながることから、耕作放棄地の解消の1つである「保全管理」として扱っております。」
「保全管理」を耕作放棄地の解消と言っているが、農林業センサスにおける「耕作放棄地」が不作付地を含む概念であることから、耕作のためでない農村の生活環境の保全のための保全管理は耕作放棄地の解消たり得ない。
また、「耕作放棄地」を県が定義するとしている農地法第30条規定の「遊休農地」と見ても、「農業経営に関する意向」(「農地法の運用について」第3の2(1)(ィ))が引き続き耕作の目的に供されるか否かの判断の要素となっており、耕作のためでない農村の生活環境の保全のための保全管理は耕作放棄地の解消たり得ない。
まして、「荒廃農地」の定義を「耕作放棄地」として見たとしても、そもそも「地表部の草刈のみでは作物の栽狽ェ不可能な状態の農地」(「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査要領」2①)であるからこそ「荒廃農地」なので元々が耕作放棄地ですらないことになってしまい、解消も何もありえない。
ゆえに、県の見解は完全な誤りである。
⑤「柑橘園に一定の管理を施した」
そもそも農地の定義からして「土地に労費を加え肥矧ヌ理を行って作物を栽狽キる目的に供される土地をいう」(「農地法関係事務に係る処理基準について」第1①)のであって、単に下草を刈るだけの管理なら林地と変わらず、農地ですらない。農地に復元されていないのに耕作放棄地の解消とは到底言えない代物である。
⑥「耕作放棄地の発生は、周辺農地の営農に支障を来たし、農村の生活環境の悪化につながる」
それを言うなら、耕作放棄地というよりも荒廃農地のことであろう。そういう守勢的な姿勢で耕作放棄地問題に取り組むならば、国が耕作放棄地の解消のために目指す農地利用の集約化や効率化はもちろん、耕作再開という本来的問題解決と向き合うことなく済まされ(ごまかされ)、不耕作地(農林業センサスにおける「耕作放棄地」)は増えていく一方だ。
以上
なお、県にあっては再反論があれば掲載しますのでお寄せください。
一昨日12日に県からの回答があったので紹介するとともに、問題提起しておきます。
8月4日の静岡新聞の報道で本県の耕作放棄地解消実績が素晴らしいかのように報道されたわけですが、この虚構のからくりを暴き、もって、ごまかしの実績ではなく、現下の耕作放棄地問題の本質に真摯に向き合って、その解決に取り組んでほしいというのが趣獅ナす。
<県への質問>
県が解消を目指す耕作放棄地の定義について
8月4日の静岡新聞において耕作放棄地の解消が報じられたが、これに先立つ昨年2月の県議会においても県は耕作放棄地の解消について解消実績を答弁しているところ、これらの中で県が解消したとする耕作放棄地の定義が農業センサスの定義「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽狽ケず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」と同じであるのか異なるものか、異なるとすればどのような定義で用いているか、県政運営の評価にかかわる重要な定義であるので御明示ください。
また、具体的に以下の場合を耕作放棄地の解消と考えているかお答えください。
1 センサスでいう耕作放棄地の草を1回刈り耕作可能な状態としたが具体的に耕作の意思ある者がなく耕作が見込まれない場合
2 センサスでいう耕作放棄地を耕作可能な状態に復さないまま肥矧ヌ理もしないで養蜂の蜜源として利用する場合
<県からの回答>
県政オンブズマン静岡 様
この度は、「県民のこえ」に御質問をいただき、ありがとうございました。
御質問をいただいた耕作放棄地の定義について、担当の農業振興課から回答いたします。
耕作放棄地の現地調査は、市町・農業委員会が行う農地利用状況調査と併せて実施することとされており、農地法第30条の「現に耕作の目的に供されておらず、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる土地」を耕作放棄地と位置付けております。
そして、農地法の運用に基づき、過去1年以上作物の栽狽ェ行われておらず、当該農地の所有者の農業経営に関する意向のほか、草刈や耕起等農地を常に耕作し得る状態に保つ行為が行われているかにより、市町・農業委員会が耕作放棄地であるか否か及び耕作放棄地が解消されているかを判断しております。
なお、地権者が行う草刈は、農業委員会などの指導により、所有者自らが維持管理する行為であり、農村景観の維持や不法投棄の未然防止など、農村の生活環境の保全につながることから、耕作放棄地の解消の1つである「保全管理」として扱っております。
また、一部地域において、養蜂農家が耕作放棄された柑橘園に一定の管理を施した上、蜜源として利用しておりますが、市町・農業委員会において耕作放棄地の現地調査結果を基に、解消として取り扱うか判断いただいております。
耕作放棄地の発生は、周辺農地の営農に支障を来たし、農村の生活環境の悪化につながることから、県は今後も関係機関と協力して、解消を進めてまいりますので、御理解と御協力をお願いいたします。
<当方が指摘する県回答の問題点>
①「耕作放棄地の現地調査は、市町・農業委員会が行う農地利用状況調査と併せて実施することとされており」
ここでいう「耕作放棄地の現地調査」は平成23年年度まで行われていた国の「耕作放棄地全体調査」のことをさしているが、国は平成24年度から「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」と名称を改めた。
理由は国の平成24年12月26日付けの「耕作放棄地全体調査要領の改訂について」によれば、国民から見て分かり難いとの指摘を受け、「本調査における「耕作放棄地」(不作付地を含まない)と農林業センサスにおける「耕作放棄地」(不作付地を含む)との違いについて明確化」を図るための名称変更である獅ェ示されている。
すなわち、県がこの「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」(旧名称「耕作放棄地全体調査」)の解消実績を耕作放棄地の解消と捉えているならば、まさに農林業センサスにおいては依然として「耕作放棄地」である「不作付地」のままにもかかわらず「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」(旧名称「耕作放棄地全体調査」)では荒廃農地から耕作可能な不作付地になれば、解消の扱いに変わってしまうと言うごまかしが引き起こされるのである。
②「農地法第30条の「現に耕作の目的に供されておらず、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる土地」を耕作放棄地と位置付けております。」
農地法に基づく農地利用状況調査の対象たる同法第30条に規定の状態にある農地は「遊休農地」と農地法上定義されているものであって、「耕作放棄地」と定義されるものではない。農地法には耕作放棄地の文言は使われていない。県がこのような定義で使っているとすれば、他県との比較など不可能なオリジナルの定義でしかないことになる。
③「市町・農業委員会が耕作放棄地であるか否か及び耕作放棄地が解消されているかを判断しております」
現実には県の定義に基づく数字を県の要請で計上しているのであって、市町・農業委員会が耕作放棄地の定義を選択しているわけではない。本来の農林業センサスにおける「耕作放棄地」(不作付地を含む)の意味で計上しようにも、そういう数字は県から求められていないのであって責任転嫁に等しい。
④「地権者が行う草刈は、農業委員会などの指導により、所有者自らが維持管理する行為であり、農村景観の維持や不法投棄の未然防止など、農村の生活環境の保全につながることから、耕作放棄地の解消の1つである「保全管理」として扱っております。」
「保全管理」を耕作放棄地の解消と言っているが、農林業センサスにおける「耕作放棄地」が不作付地を含む概念であることから、耕作のためでない農村の生活環境の保全のための保全管理は耕作放棄地の解消たり得ない。
また、「耕作放棄地」を県が定義するとしている農地法第30条規定の「遊休農地」と見ても、「農業経営に関する意向」(「農地法の運用について」第3の2(1)(ィ))が引き続き耕作の目的に供されるか否かの判断の要素となっており、耕作のためでない農村の生活環境の保全のための保全管理は耕作放棄地の解消たり得ない。
まして、「荒廃農地」の定義を「耕作放棄地」として見たとしても、そもそも「地表部の草刈のみでは作物の栽狽ェ不可能な状態の農地」(「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査要領」2①)であるからこそ「荒廃農地」なので元々が耕作放棄地ですらないことになってしまい、解消も何もありえない。
ゆえに、県の見解は完全な誤りである。
⑤「柑橘園に一定の管理を施した」
そもそも農地の定義からして「土地に労費を加え肥矧ヌ理を行って作物を栽狽キる目的に供される土地をいう」(「農地法関係事務に係る処理基準について」第1①)のであって、単に下草を刈るだけの管理なら林地と変わらず、農地ですらない。農地に復元されていないのに耕作放棄地の解消とは到底言えない代物である。
⑥「耕作放棄地の発生は、周辺農地の営農に支障を来たし、農村の生活環境の悪化につながる」
それを言うなら、耕作放棄地というよりも荒廃農地のことであろう。そういう守勢的な姿勢で耕作放棄地問題に取り組むならば、国が耕作放棄地の解消のために目指す農地利用の集約化や効率化はもちろん、耕作再開という本来的問題解決と向き合うことなく済まされ(ごまかされ)、不耕作地(農林業センサスにおける「耕作放棄地」)は増えていく一方だ。
以上
なお、県にあっては再反論があれば掲載しますのでお寄せください。