11月21日に県が記者提供した資料「新東名高速道路の開通効果は「年1,167億円」 ―経済波及効果は「年819億円」―」について、疑義があったため照会し、以下の回答を得たので報告するとともに、批評する。
<11月30日付け県回答>
日ごろは、県行政に御協力いただき大変ありがとうございます。
新東名高速道路の開通効果についての御質問に統計利用課から回答いたします。
SA・PAの売上については、東名高速の減少分はデータを把握できず、今回の推計には考慮しておりません。
また、観光交流客については、平成23年3月11日から31日の震災による減少分の補正は行っておりません。
なお、より詳細なデータの収集に努め、精度を高めた分析を行い、情報提供を行なっていきたいと考えておりますので、御意見、御質問等いただければ幸いです。
<11月27日付け県民のこえ宛照会>
「県統計利用課による新東名高速道路の開通効果について」
報道で、標記については「波及効果は「サービスエリア(SA)とパーキングエリア(PA)の売り上げ」「観光交流客の増加」「維持管理費」の3項目を対象にして、開通半年後までの実績を基に算出した」とありましたが、「サービスエリア(SA)とパーキングエリア(PA)の売り上げ」については、新ではない元の東名高速のサービスエリア(SA)とパーキングエリア(PA)の売り上げの減少分は効果算定に当たり考慮されているのでしょうか?
また、観光交流客の増加で比較対象として用いた平成22年度は3月に震災での減少がありましたが、この補正は行われていますか?
以上2点お答えください。
この照会の元になる県発表資料とは以下のものである。
県の回答について解説するならば、要するにAというスーパーマーケットの近くにBというスパーマーケットができて、A店の売り上げが1億円から0.5億円に減って、B店の売り上げが0.8億円だったとしても、B店ができたことによるこの地域の経済効果の元となる需要増加額は(実際は0.3億円であるにもかかわらず、)0.8億円にする、ということである。
(ちなみに、静岡空港ができたことによる経済波及効果でも、同様の論理でマイナスを考えずに経済波及効果が算出され発表されている。)
そもそも、この県の記者提供資料のタイトルからして静岡県が「経済波及効果」と費用対便益比でいう「便益評価」とを混同(まさにくそみそいっしょ)し、現実を歪曲しているていることが分かる。
もっとも、トップである知事からして同様の認識であるのだからその取り巻きがそのレベル以下であっても何の不思議もないのであるが、お粗末というより学問への冒涜、むしろ害悪ですらある。
例えば、資料中の「3 参考(便益評価額)」の④に「走行コスト低減(燃費)」とあるが、便益評価でいえば、金額換算で54億円の便益が生じたということになるのであるが、一方の経済波及効果でいえば、約76億円(54×波及効果倍率約1.4)のマイナスの経済波及効果が生じたということになり、同じ事実が正反対の評価を示すのである。
簡略にいうならば、これは、費用対便益比でいう「便益評価」が国民生活上の純粋な利得の向上(公共の利益)の評価であるのに対し、経済波及効果は、単にどれだけのお金が動いたかということに過ぎないからである。
その証拠に、資料中の「2 経済波及効果」の中に「維持管理費」とうものがあるが、経済波及効果を増やそうとするならば維持管理費を増やせばいいが、一方の便益評価を考えるなら「少ない方がいい」のである。
極端な話、1億円で穴を掘り、元どおりに埋め戻したとしたらどうだろう。
便益が増えることはないが、経済波及効果は約1.6倍(産業連関表34部門中の建設業の波及効果倍率1.6)の1億6千万円増という結果が生じるのである。
明らかに無駄と評されるべきこのような事業でさえ、役人はこういうのである、「確かに1億円投じましたが、無駄ではありません。工事の業者やその関連業種に1億6千万円もの経済効果があったのですから。」と。
では、も一度やりますかというとやらない。大型イベントが開催後に大きな経済効果を誇っても、二度と同じことをしないのも、この効果というものが公共の利益という視点からは眉唾と分かっているからである。
どれほど無駄な公共事業であってもその支出額以上に「効果」が表出され、誇張されるのが経済波及効果の浮ウなのである。
さて、行政は、政治は、今、どちらを見て治政を行うべきであろうか。
無駄な公共事業、イベント、そのたびに経済効果があったと吹聴しては反省もない。
その結果、国と地方の債務は右肩上がりに膨れ上がって国民に増税という形で尻拭いを求める。
いつになったら、この連鎖から断ち切れる誠実で賢明な政治に舵をきれるのか。
国民の選択の機会である総選挙は12月16日。
よくよく熟考して、投票に行こうではないか。
<11月30日付け県回答>
日ごろは、県行政に御協力いただき大変ありがとうございます。
新東名高速道路の開通効果についての御質問に統計利用課から回答いたします。
SA・PAの売上については、東名高速の減少分はデータを把握できず、今回の推計には考慮しておりません。
また、観光交流客については、平成23年3月11日から31日の震災による減少分の補正は行っておりません。
なお、より詳細なデータの収集に努め、精度を高めた分析を行い、情報提供を行なっていきたいと考えておりますので、御意見、御質問等いただければ幸いです。
<11月27日付け県民のこえ宛照会>
「県統計利用課による新東名高速道路の開通効果について」
報道で、標記については「波及効果は「サービスエリア(SA)とパーキングエリア(PA)の売り上げ」「観光交流客の増加」「維持管理費」の3項目を対象にして、開通半年後までの実績を基に算出した」とありましたが、「サービスエリア(SA)とパーキングエリア(PA)の売り上げ」については、新ではない元の東名高速のサービスエリア(SA)とパーキングエリア(PA)の売り上げの減少分は効果算定に当たり考慮されているのでしょうか?
また、観光交流客の増加で比較対象として用いた平成22年度は3月に震災での減少がありましたが、この補正は行われていますか?
以上2点お答えください。
この照会の元になる県発表資料とは以下のものである。
県の回答について解説するならば、要するにAというスーパーマーケットの近くにBというスパーマーケットができて、A店の売り上げが1億円から0.5億円に減って、B店の売り上げが0.8億円だったとしても、B店ができたことによるこの地域の経済効果の元となる需要増加額は(実際は0.3億円であるにもかかわらず、)0.8億円にする、ということである。
(ちなみに、静岡空港ができたことによる経済波及効果でも、同様の論理でマイナスを考えずに経済波及効果が算出され発表されている。)
そもそも、この県の記者提供資料のタイトルからして静岡県が「経済波及効果」と費用対便益比でいう「便益評価」とを混同(まさにくそみそいっしょ)し、現実を歪曲しているていることが分かる。
もっとも、トップである知事からして同様の認識であるのだからその取り巻きがそのレベル以下であっても何の不思議もないのであるが、お粗末というより学問への冒涜、むしろ害悪ですらある。
例えば、資料中の「3 参考(便益評価額)」の④に「走行コスト低減(燃費)」とあるが、便益評価でいえば、金額換算で54億円の便益が生じたということになるのであるが、一方の経済波及効果でいえば、約76億円(54×波及効果倍率約1.4)のマイナスの経済波及効果が生じたということになり、同じ事実が正反対の評価を示すのである。
簡略にいうならば、これは、費用対便益比でいう「便益評価」が国民生活上の純粋な利得の向上(公共の利益)の評価であるのに対し、経済波及効果は、単にどれだけのお金が動いたかということに過ぎないからである。
その証拠に、資料中の「2 経済波及効果」の中に「維持管理費」とうものがあるが、経済波及効果を増やそうとするならば維持管理費を増やせばいいが、一方の便益評価を考えるなら「少ない方がいい」のである。
極端な話、1億円で穴を掘り、元どおりに埋め戻したとしたらどうだろう。
便益が増えることはないが、経済波及効果は約1.6倍(産業連関表34部門中の建設業の波及効果倍率1.6)の1億6千万円増という結果が生じるのである。
明らかに無駄と評されるべきこのような事業でさえ、役人はこういうのである、「確かに1億円投じましたが、無駄ではありません。工事の業者やその関連業種に1億6千万円もの経済効果があったのですから。」と。
では、も一度やりますかというとやらない。大型イベントが開催後に大きな経済効果を誇っても、二度と同じことをしないのも、この効果というものが公共の利益という視点からは眉唾と分かっているからである。
どれほど無駄な公共事業であってもその支出額以上に「効果」が表出され、誇張されるのが経済波及効果の浮ウなのである。
さて、行政は、政治は、今、どちらを見て治政を行うべきであろうか。
無駄な公共事業、イベント、そのたびに経済効果があったと吹聴しては反省もない。
その結果、国と地方の債務は右肩上がりに膨れ上がって国民に増税という形で尻拭いを求める。
いつになったら、この連鎖から断ち切れる誠実で賢明な政治に舵をきれるのか。
国民の選択の機会である総選挙は12月16日。
よくよく熟考して、投票に行こうではないか。
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