大銀杏の膨らむ速さ夏来る 五月晴私も生かされているのだらう 早く気づけよ初夏の空ひとつかみ その塵は拾うな夏の夜のしじま 五月は終った六月の空生まれ さんざめく六月の雲私はポー 一気呵成に道路を奔る夏落葉 ペンペンペンその儚さに夏うぐいす つくづく思ふつくづく思へ真夏の死 火と空が重なり合ふて夏始 白南風や泥人形の溶け始む 父の死は殉死にあらず五月尽 成層圏発見の日の夏帽子 パラパラはパラパラとして夏の使者 バニシングポイントリメークす緑雨中 薄暑光いつか誰かが死んだのです
遠雷や老後の白さただならず 五月闇白をつきつめくれなゐに 梅雨晴やけふのあをさを疑はず 夕虹や地球の未来見て過ぎぬ はじかれて空遠ざかる雲の峰 お花畑地名と化せり夢真白 何もかも重なり合ふて青田かな 冷房車地球空洞説続く 子規と書きほととぎすと読む国滅ぶ 残鶯の鏡に映す日の陰り 蟾殺め一村闇の支配せり ででむしの壁に張り付く夢力 蛇衣を脱ぐまたの世に光差し 羽抜鶏誰かわたしを知らないか 物見柱垂直に立つ蟻の道
洗濯機の快音響くころもがへ 男物の半袖ばかり更衣 煩悩僧またも暴走更衣 バミューダーいつしか死語に更衣 師弟食堂完全消滅ころもがへ(明治大学) 第一ホテルのランチバイキング更衣 更衣我も母無き子となれり 白き腕に振り向くことも更衣 入墨者入湯禁止更衣 六本木ぽんぎと呼べる更衣 大阪のアベノハルカス更衣 プロテスタント東部教会更衣 週末婚むかし流行りし更衣 沢口靖子いまも独身更衣 ニンニク玉両手に提げて更衣 主宰とはまだ会はずゐる更衣 戻る子は我が子にあらず更衣(1週ぶりに無事発見) 衣更へて六本木交差点空ばかり ダルビッシュに勝ち負けつかず更衣
玉宝蓮開けば菖蒲の空ひらく 舞仙女螺旋を孕む菖蒲沼 白菖蒲太平洋の波打てり 白菖蒲故郷に人工島のあり 白菖蒲泥から泥へ空淡し 飄爽と菖蒲の空へ打って出る 藍草紙一枚めくれば菖蒲の世 めくるめく谷間の光花菖蒲 花物語の続編あまた夢菖蒲 追い風に止まる白さ花菖蒲 雪国の風を集めて花菖蒲 藍濤の中空にあり菖蒲園 小紫波打ち際に菖蒲佇つ 連休白菖蒲のこころ我が身にも 金冠と化して菖蒲の浅黄かな
梅雨に入る老ひたる者の手招きす 梅雨に入る私も青い空見上ぐ 走り梅雨ラジオ体操始まれり 老ゆるとはあな騒がしき梅雨に入る 飢えたる者の飢えたる証し梅雨に入る 御伽草紙の最終ページ梅雨茫茫 炊き出しの列に加はる梅雨の夢 ポッポとはあの鳩のこと梅雨晴間 プレーボールこれで三度目梅雨深し イージーイージー歓声めきて梅雨雀 老人クラブの笛の高鳴り梅雨に入る ぽつん猫私を目指す梅雨の入