枯蘆原わたしは誰か知らないか マツコ・デラックス蓮の枯るるは無駄なこと 逡巡をおそれず平成枯れ芒 師といえど宙に及ばず竜の玉 瓢々と去りゆく背中手毬唄 雑煮餅自分で搗いた記憶あり 猫までの一歩が遠し初日影 葉牡丹の路上にありて路上に死す 着ぶくれて宇宙にあれば帰らざる 子の視線絶えて真冬の造り滝
青い地球といふ句誌ありぬ久女の忌 青臭き師の人生や冬鴎 革命はなかったことに浮寝鳥 寒禽といふまい人類は滅びたり 海鼠の涯地上にありや砂うごく 地上に降りた天使と言われ酢牡蠣食ぶ 最上階にあるは佳きこと寒椿 何か終り何か始まる冬桜 山茶花の白さを讃え師を讃ふ 蓮の骨換骨奪胎といふことば
成人式どこかでやっているのだらう 成人の日のエスカレータは下りのみ 御下りやオノコロ島の揺れ続く 御下りや宇宙の欠片パラパラと 東京の山削られて淑気満つ 譲られて護るものなし初景色 矢立初めの地に川流れ淑気満つ 初霞引き込み線の行き止まり 初凪ぎや江ノ島電鉄極楽寺 初晴れや遊行の寺に人の列
寒月は出たかと徘徊強まれり 木枯紋次郎は地球が丸いと知っていた 絶版のブレヒト全集雪催い サイパンの万歳岬凍土と化す 3.11のホワイトタイガー雲ながれ 私は声だけだからとタクシードライバー 元朝の夢夢打刻怠らず 極月の塵積もること甚だし モーセの墓が地球にある暗澹 鍼灸師神と呼ばるる謂れなし
ダンスはうまく踊れず極月の桜坂 磔刑図両脇にゐるただの人 ワンコインランチ目玉焼き追加せり 葉牡丹の渦加速せり外宇宙 生き延びて抗ヒスタミン剤パラパラと 冬の蝿極小にして裸身なり 冬三日月放蕩自慢許されて 腹中にドーム千個分の更地 極寒の大腸カメラするすると この化石人間にも見え雪崩れをり