遊行記（２）/新雑句雑感（６９）～プロローグ５の始まり

猫の恋見てきたような嘘を言う**
小鳥来るやっぱりダメかと振り返る
ステロイド塗るまで春の禽（とり）でいる**
毛糸玉転がる前の祭りあり**
ウリウリはトロイの木馬かも知れず
裏側もやっぱり地球雛納
マントとマトンバントとバトン運動会
イライラのかさばる先の紙風船
玉音はなかったＩＳ志願兵
生命の木いたぶる九月のスーパームーン**
狭き門何度もくぐる神無月**
床山が最も好きな大焼野
深緑のバイバイララバイ桃井です**
晩秋の力うどんに溺れをり*
小島よしおの人生なのか夏鶯
遠紅葉ザッケローニはもういない**
青き踏む東京の鐘鳴り止まず
静電気握り潰してホトトギス**
衣被コインランドリー出奔す**
ホリエモンの特注Ｔシャツ春満月
電線マンいつもいたよね星月夜**
何のための乳首か人類滅亡教**
春着してウーパルーパにもの申す*
がらがらの乗り合いバスにむささび翔ぶ
だんじりの痛み消し飛ぶ終戦日*
清原に桑田が続くマリア月
踊る人また一人消え雪中花**
見る前に飛んでおります重信忌**
ババロアの秘密はババに文化の日
愛あればこその肉体寒つづく
秋彼岸ようやくヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
春鴨の大群ベンチに「突破せよ」**
逃げ水や抗ヒスタミン剤真っ二つ*
ヘッドギヤ想い出の渚逆流す
常楽会片肘つけば薄れけり**
花は葉にＬＥＤを買いに行く
春浅し玉音盤を知らないか**
金太郎飴たらりと食べて春惜しむ
新宿ピットインそこは違うと犬ふぐり
春塵や楽園追放まだこれから**
煮凝りの青さを極めボウイ逝く**
死ぬ前に愛とは何だ石鹸玉
猫の中の猫より貰う春画帳*
白菜に冷凍保存効かぬなり**
般若心経漫画で綴る朧の夜**
廃墟とは中空にあり木守柿

この国の地獄/新雑句雑感（６８）～プロローグ５の始まり

良き人は仏になれず涅槃西風　　中空に塵の止まる涅槃西風　　五十には見えぬ寂しさ涅槃西風　　読経こそニュートラルなれ涅槃西風　　渋谷とはすり鉢の底涅槃西風　　涅槃西風好きになっても会えぬひと　　この国の地獄は過去に涅槃西風　　赤ちゃんにいないいないバァ涅槃西風　　ハチいまや困り顔のハチ涅槃西風　　ダーツバーに怒号飛び交ふ涅槃西風　　蒼きもの辺野古に溢れ涅槃西風　　俳句誌の廃刊ブーム涅槃西風　　格納されし人間の業涅槃西風　　高層マンションどうにか売れて涅槃西風　　母死後の白紙をかさね涅槃西風　　肉野菜炒め大皿に盛る涅槃西風　　

残る鴨/新一人吟行記～プロローグ５の始まり

ここからは白帆が揚がる春の鴨　　尿りつつ餌をついばめる春の鴨　　水掻きの地を掻くちから鴨残る　　残る鴨薄暮の空に消えにけり　　ゆりかもめ餌遣りの姫の空と化す（中国人観光客カップル）　一本の杭支配せる春の鴨　　春の鴨でんぐり返る様を見し　　ゆりかもめ水面に春の浄土あり　　ダイサギの春の浄土に首もたげ　　ダイサギの三角地帯春浄土　　ゆりかもめ鯉の餌奪ふ春の湖　　巳成金（みなるかね）祀られ春の鴨泳ぐ（上野不忍池弁天堂）

鳩を撃つ/新雑句雑感（６７）～プロローグ５の始まり

春の夢ネヴァー・エンディング・ストーリー観て来たよ　　春愁や地球はやっぱり青かった　　春愁のジタバタしても橋の上　　ソドムにて首打たれたる春愁ひ　　ピラミッド地上に溢れ朝寝覚　　春眠と言へども川中島にゐる　　春眠の深さを競ひうすれけり　春の風邪派遣村より出でしとき　　光ファイバー百本の束春愁ひ　　凧の糸たどればポーの父とゐる（萩原望都「ポーの一族」）　　いかのぼり軍人恩給暮らしとか　　退路まだ絶たれてをらず猟名残　　鳩を撃つ痛みに猟期続きをり　　　野遊びやアスペルガーの友とゐて　　野遊びやマツコ・デラックスのいない空　　

もっと愛をくれ/新雑句雑感（６６）～プロローグ５の始まり

啓蟄や異種交配の果てしなく　　啓蟄や大腸カメラ突き当たる　　啓蟄の裏紙もっと愛をくれ　　啓蟄の果たしてエリ－ゼのためなのか　　啓蟄の空ならもっと空らしく　　啓蟄のペットボトルのへこむ音＊　　啓蟄や人生劇場二度三度　　啓蟄のマツコ・デラックスふわふわと　　啓蟄や人間五十年否百年　　啓蟄や高浜原発稼動せず　　啓蟄や人生捨てたもんじゃねぇ　　啓蟄やエデンの園はかくありき　　啓蟄や東京やさぐれ女って誰　　啓蟄や大震災まであと六日　　啓蟄やマンガ字で愛は告げぬもの　　啓蟄や新宿二丁目抜けて来る　　啓蟄や伯方の塩が１０年分　　生きながら死にゆく啓蟄日和なり　　啓蟄や俳句はいつか滅ぶもの