春の風邪人生いまも語りをり 夏石番矢はや五十八春の風邪 天皇の国が危うし春の風邪 春の風邪禁を破りてウオッカ飲む ミスター・マリックは宇宙人だった春の風邪 春の風邪川内原発は稼働せず 四国八十八箇所巡りめぐりて春の風邪 春の風邪能年玲奈のディナーショー シークレット・ドクトリンにもある春の風邪 電磁波に過敏になりぬ春の風邪
リヤカーは押しても動かず二月尽 二月果て何か焼かれて甦る 日本のレーニンと呼ばれ二月逝く ばっくれて日の暮れずゐる二月尽 レコーディングはただ一度だけ二月尽 モスコミュールください二月のジャズ跳ねる 二月尽いま取って置きの夢の中 愛されてゐると知らぬ女と二月終ふ これで最後の二月の新宿何かある 松田聖子の蒼いフォトグラフ二月果つ 電子手帳の電子の白さ二月尽 東京のどこか故郷に二月尽
未完なるもの昭和の維新春の雪 天皇の人間宣言春の雪 闇の向かうのただ静もれり春の雪 人を神であらしめたまえ春の雪 昭和十一年の私の未生春の雪 春雪にまみれて誰も彼もが死ぬ 慷慨の秘歌あり晩冬のケアハウス 大深雪「お前たちは赦された」のアドバルーン(2.26事件) 雪の2.26人撃たぬため銃積まれ 名残り雪歌われ人生はゆきのなか
薄氷を踏みて無明の渦中にあり 薄氷にふと蒼亡民のあをさ満つ 最初の人間は最後の人間薄氷 どうにもならぬ人世光もつ薄氷 薄氷やよもや胎内には帰るまい 薄氷まだ生きたしと空うごく 薄氷は動かず結氷の調べあり 生まれたからにはまだ生きている薄氷 うすごおりLET DO ITと叫びをり 薄氷のごとスカイツリーの空はあり
遠くまで行くんだ春一番つのる 大阪のどこか春一番コンサート 西岡恭三のプカプカ春一番吹くところ まるでオーケストラのよう春一番 どこかで笑いどこかで叫ぶ春一番 春一番東京下町百年展 春一番黙っていては伝わらぬ 吉田松陰が生きた時代の春一番 春一番天に吹く風人に吹く 春一番どこかどもって愛してる