最初にお知らせ
除草剤の成分グリホサート がペットフードから検出された件について思うところを「アメリカの犬たち」のブログに書きました。
ドッグフードの原材料を一つ一つ見ていく記事を、今まで合計10回書いてきました。
その中で亜麻仁が登場するたびに「オメガ3脂肪酸を多く含んでいますが
犬は植物性のオメガ3脂肪酸をうまく活用できない場合が多いので
フィッシュオイル などで補うことをお勧めします。」と書いていました。
この点について、一度詳しく書いておこうと思います。

「あら、久しぶりにオイルの話?」
そうだね、オイルの話はずいぶん前にも何度か書いてるけど、復習を兼ねてね。
犬でも人間でも、オイル=脂質は重要なエネルギー源であり、体内で様々な働きをする栄養素です。
脂質はモノグリセリドと様々な種類の脂肪酸によって構成されています。
脂肪酸には体内で合成できるものとできないものがあり、合成できないものは食物から摂取することが必須です。
これが必須脂肪酸です。必須脂肪酸にはオメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸の2つの系統があります。
オメガ6系脂肪酸の代表的なものはリノール酸とアラキドン酸です。
リノール酸はひまわり油、紅花油、ごま油、大豆油、コーン油、グレープシードオイルなど、
一般的に料理に使われるオイルに多く含まれています。
アラキドン酸は卵黄、レバー、肉類に多く含まれているので、市販のドッグフードを食べていて
オメガ6系脂肪酸が不足することはまずありません。

「ピーナッツバターはオメガ何?」
ピーナッツバターはオメガ6系脂肪酸だよ。プロテインも豊富だね。
さて、メインテーマのオメガ3系脂肪酸です。
代表的なものはアルファリノレン酸とドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)です。
アルファリノレン酸は亜麻仁油、シソ油、エゴマ油に多く含まれています。
DHAとEPAは魚の油の成分としてよく知られていますね。
犬でも人間でも、アルファリノレン酸を体内で活用するためには、EPAに変換する必要があります。
人間はこの変換のための酵素を分泌して、EPAを得ることができます。
犬ではこの酵素が少ない又は働きが弱いため、アルファリノレン酸から十分な量のEPAが得られない場合が多いのです。
(ちなみに猫はこの変換のための酵素を持ちません。
ですから猫にはオメガ3系脂肪酸は必ずDHAとEPAとして与える必要があります。)
上記がドッグフードの原材料に亜麻仁以外のオメガ3系脂肪酸の摂取源が見当たらない時に
「フィッシュオイル をお勧めします」と書いている理由です。
また、オメガ3を多く含むオイルはどれも皆、酸化しやすく熱に弱い性質があります。
フィッシュオイル を配合しているフードでも、高温調理された後にどれだけの効力があるかは疑問な面もあります。
原材料一覧にフィッシュオイル と書かれていても、サプリメントなどで補給することは意味があります。

(image via https://pixabay.com/users/stevepb-282134/ )
けれども魚にアレルギーがある犬では、フィッシュオイル が摂取できない場合があります。
魚以外ではオキアミの一種クリルオイルも良いDHAとEPA源ですが、乱獲により減少しているという背景があります。
他には関節炎に良いと言われる緑イ貝もDHAとEPAを多く含む食品です。
クリルも緑イ貝も含めてシーフード全般がアレルギーでダメという場合には
海藻由来のDHA&EPAというサプリメントも市販されています。
オメガ6系脂肪酸は皮膚のバリア機能や免疫系、各臓器、血液の機能を正常に保つ調整役として必要です。
けれど摂りすぎると、炎症反応を促進しアレルギーや関節炎を引き起こすという面もあります。
オメガ3系脂肪酸はオメガ6の暴走を引き止める抗炎症作用を持っています。
オメガ3には他に免疫機能の調整、脳や神経組織の機能維持など重要な働きがあります。
先にも書いたように、ドッグフードを食べている犬にオメガ6が不足することはまず無いのですが、
オメガ3は「酸化しやすい」「摂っても活用できない」などの理由で不足しがちです。
これが、ドッグフードの原材料を見た時に「このオメガ3は犬が活用できない!フィッシュオイル などで補給を!」と毎度のように書いている理由です。
オイルの話は奥が深くて、リノール酸とガンマリノレン酸の関係などもとても面白いのですが、
それはまた今度にします。
愛犬の皮膚の状態のことで悩んでいる方は、オイルの見直しをすることで改善する場合も多いんですよ。
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