ドッグフード原材料シリーズ 第10回目です。
今回はかなりお求めやすい価格のファーストチョイスです。色々種類があるのですがラム&ライスをピックアップしました。
ファーストチョイスはカナダの中規模のペットフードメーカーです。
興味深いのは、カナダ本国で売られているものと、原材料のレシピがけっこう違います。
同社の日本のサイトでは「日本の犬・猫の生活環境を考慮して調整」と書かれていますが
率直に言って、カナダ本国の方が品質が良さそうです。
アメリカではほとんど販売されていないようで、Amazon.USを始めとする通販サイトなどで検索しても出てきません。
小売店でも見たことがないです。
価格帯で言えば、ペディグリーや愛犬元気などのグループと、ニュートロの中間くらいで、
ちょうどこの辺りは競合商品が少ないんですね。
多分、競合の少ない価格帯をターゲットにして、それに見合うレシピに調整したのかなと推測します。
「前置き長くない?」
あ、そうですね。でもこの前置きは後の原材料の考察にも関係があります。
では本題に入ります。
ラム肉、米、コーン、全粒オート麦、全粒大麦、コーングルテンミール、鶏脂、
ビートパルプ、たん白加水分解物、大豆レシチン、魚油(DHA源)、酵母、
乾燥トマト(リコピン源)、全粒亜麻仁(オメガ3・6脂肪酸源)、マンナンオリゴ糖、
乾燥チコリ(イヌリン源)、ユッカ抽出エキス、L-カルニチン、
ビタミン類(A、D3、E、C、B1、B2、パントテン酸、ナイアシン、B6、葉酸、ビオチン、B12、コリン)
ミネラル類(カリウム、リン、ナトリウム、クロライド、カルシウム、鉄、亜鉛、マンガン、セレン、銅、ヨウ素)
酸化防止剤(ビタミンE)
海外メーカーのフードの多くは、原材料一覧はほぼ同じなので本国のものと日本のものを比べて書いているのですが
前述の通り、日本用に調整しているとのことですので、原材料に関していくつか推測が入ります。
まず一番最初のラム肉、これは生の肉ではなくラムミールだと思われます。
生のラム肉ではこの価格は無理ですし、カナダレシピでもラム肉ではなくラムミールが使用されています。
ラムミールは、枝肉から人間用の食肉を切り分けた後の残った肉と骨を加熱して脂肪を搾り、乾燥させて挽いたものです。
タンパク質が凝縮した形で含まれます。
2番目の米、これは多分ブリュワーズライス、日本語ではひきわり米と表記されることが多い、
精米や保管の際に割れたり欠けたりした米が使われていると思われます。
カナダレシピに使われる米は玄米またはブリュワーズライスのどちらかで、
玄米を使っているならそう表記されるだろうと思いますので。
コーンはドッグフードの原材料としては歓迎されないことが多いですね。
意外と栄養豊富で炭水化物の他にタンパク質も豊富です。
だから安価なフードでは多用されているわけですね。
タンパク源としては必須アミノ酸のトリプトファンが少ないので、犬にとって理想的なタンパク源ではありません。
全粒オート麦も、炭水化物とタンパク質の両方を含みます。
その他にビタミンB群やミネラルも多く含む栄養豊富な穀物です。
全粒大麦は炭水化物源ですが、食物繊維が豊富なため、血糖値の上昇が緩やかな低GIフードです。
次のコーングルテンミールもコーンですが、タンパク質だけを取り出したものです。
料理などに使うコーンスターチを取った後の残りの部分を乾燥させたもので、
犬にとっては意外と消化が良いと言われています。
ただ、先にも書いたようにトリプトファンの少ないタンパク源なので何らかの対策が必要です。
ラムミールの後に、4種類の穀類が使われており、不溶性の食物繊維も多めです。
さらにコーングルテンミールを含めると動物性タンパク質のラムよりも穀類が多く含まれると思われます。
つまりこの製品のタンパク質のうち、かなりの部分を植物性タンパク質が占めています。
鶏脂、チキンの脂ですね。チキンミールを作る際に搾った脂肪が使われることが多いです。
ビートパルプはビート(砂糖大根)から砂糖を取るために搾った後の繊維です。
水溶性と不溶性の食物繊維を含みます。
タンパク加水分解物、植物性または動物性のタンパク源を塩酸または酵素で分解してアミノ酸加工物にしたもので旨味の元です。
食いつきを良くするために最後の仕上げ工程で吹き付けられることが多いです。
大豆レシチン、これは今まで原材料シリーズを書いてきた中で初めての登場です。
レシチンは、大豆と卵黄に多く含まれることが知られているリン脂質(リンを含む資質)の一種で、細胞膜や神経組織を構成します。
レシチンにはビタミン様物質のコリンが含まれます。
コリンは脳の機能、細胞膜の構成と補修に不可欠な栄養素です。
大豆から作られているので、ドッグフードの原料としては非難されることも多いのですが
大豆アレルギーがない限り決して悪いものではありません。
ただ食品からレシチンを摂りたい場合、犬には卵黄の方が体に馴染むでしょう。
魚油、書いて字のごとく魚の油です。犬にとっては一番良いオメガ3脂肪酸の摂取源ですね。
この価格帯で魚油が配合されているのは立派です。
酵母は酵母菌、イースト菌など菌類です。ビタミンやアミノ酸を多く含みます。
乾燥トマトというのはトマトジュースなどを搾った後の繊維を乾燥させたものです。
リコピン源と書かれており、それも確かにそうなのですが、メインは食物繊維です。
全粒亜麻仁、フラックスシードですね。食物繊維やビタミン類も豊富ですが、オメガ3と6脂肪酸の良い摂取源です。
ただし植物性のオメガ3脂肪酸は犬では体内で活用できない個体も少なくありません。
マンナンオリゴ糖は酵母の細胞壁から取り出された糖類で、腸内の悪玉菌を吸着して排出し、
腸内環境を良好に保つ不消化性の食物繊維です。
乾燥チコリはハーブの一種ですが、水溶性食物繊維のイヌリンを多く含みます。
利尿作用と食物繊維の働きで、余分な水分や老廃物の排出をサポートするため肝臓や腎臓を緩やかにサポートします。
ガスを排出する働きもあるので、オナラが増える場合もあります。
ユッカ抽出エキスは、リュウゼツラン科の植物ユッカの根茎のエキス。
抗炎症作用や便のニオイを抑える働きがあります。
カルニチンはビタミン様物質で、脂質の代謝を助ける役目があります。
Lというのは合成の方法を示す記号です。
ビタミン類は見ての通りですね。
ミネラル類はカナダのサイトを見ると、全部タンパク質と結合させて吸収しやすい加工がされた良質なものです。
酸化防止剤にビタミンEが使われていることはプラス材料ですね。
「ふ〜ん、で?どうなの?いいフードなの?」
ギリギリまで原材料のコストを落としているけれど、合成保存料や着色料は使われていないし、
フィッシュオイルや酵母、ユッカエキスなど、プレミアムフード並みの添加物が配合されていたりと
価格の割にポテンシャルの高いフードだという印象です。
ただし、穀類が多過ぎるのは先にも書いた通り。
植物性のタンパク質が多く、動物性タンパクもミールのみなので、アミノ酸のバランスが良くないと思うのですが
タウリンやメチオニンなどのアミノ酸が添加されていないのもちょっと気になります。
アミノ酸を補うため、ゆで卵やヨーグルト、茹でたお肉や魚などの動物性のものをトッピングすることを強くお勧めします。
またすりおろしたニンジンやリンゴ、茹でたブロッコリーなどをトッピングすることで、抗酸化物質も補うことができます。
足りないものを家庭で補えば、意外と使い勝手の良いフードかもしれません。