早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

定本宋斤句集 春 7

2018-02-21 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集


定本宋斤句集  春 7

 
        伏見にて
春 田   春の田にちるや伏見の陶の屑

        新羅三郎義光之墓
春の山   笹むらの斜日が墓や春山邊
      春山のいさゝか深し水の音    
     
        紀伊南部にて
春の砂   春の砂に漁家の姥たち脚投げて

        宇野
春の湾   朝宿に著いて欄前春の灣
春の徑   春の徑の失せたり墻を越し易し
春の堤   春の堤蕪村歩くとふと思ふ

        那波より赤穂へ
春の町   町春や海へひろがる峡どころ

二月禮者  橋南の小辻に二月 二月禮者かな
種 蒔   植うる蒔く猫額の土餘すなく
白 酒   白酒に愧なき舌をのばしけり
雛     雛の座のみなでも足らず祖母が歳
      雛店を人の父母覗きゐる
草 餅   妻が好き母が来て好き草の餅
桜 餅   さくら餅にみな指先をぬらしけり
椿 餅   くちびるに冷めたき葉なる椿もち
汐 干   常にして夕鳥低き汐干哉
      汐干宿に泊まってしまひ海黒き

定本宋斤句集 早春社刊