定本宋斤句集 春 8
巨勢金岡が由緒の地
茶 山 金岡が別業の址や茶山晴れ
耕 島渡舟耕すなかへ陸りけり
野 火 野火止めて石工の足にふまれけり
入 学 ものゝみな春なり畔を入学児
卒 業 卒業證書しばし畳に日を吸へる
春の人 春の人來て詩仙堂の添水描く
挿 木 沈丁花雨中挿木す花のまゝ
踏 青 青き踏んで想ひ出すことみな遠し
目 刺 天井へいやしき煙目刺焼く
摘 草 摘草の背いま曇る水も帆も
春 愁 春愁の心をわれとさいなまん
春愁の眉に寒しや蝶の風
百合根堀 大百合根抱えて胸に山のつち
桜 漬 桜漬滂沈たるゝを遺しけり
種 痘 芽ぞろいを仰いで待つや植疱瘡
釈 尊 釈尊や堂後の李花に床を置く
天王寺
彼 岸 彼岸會や埃のみちの経木書き
中日の八丁鉦や急霰に
薪 能 芝能や葉さくらをちる夕日の斑
十三詣 十三詣りむすめをつくるこれよりよ
定本宋斤句集 早春社刊