早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

定本宋斤句集  秋 5

2018-09-06 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集




定本宋斤句集  秋 5

秋の川    我が二階しづかと云はれ秋の川
      桟 庭
秋の水    秋の水膝で押しゆく板のうへ
       秋の水に金魚二つが戀をする
       
秋袷     川霧の朝より著たり秋袷
秋の燈    ほそみちの秋の燈の窓擦りゆけり
       病み居れば友にも甘え秋投下
鳩峰居
投下可親   燈下親し瓶の小魚の名を知らず
盆      ひとのように盆ゆく田舎ほしきかな
盆踊り    葛の葉はところの名にて盆おどり
花 火    旅ひとり欄にある花火かな
添 水    麓空雲のこづみも添水打つ
稲 舟    稲舟や娘も乗って夕日さし
秋 耕    秋耕や晴れて塩谷の遠き屋根
菊人形    あさましく動く手のあり菊人形
       菊人形顔かはいそう何処を視る
海贏うち   ふところに勝留め海贏と柿とかな
登 高    ふところにさし入る朝日登高す
夜 業    病んでゐてなによきものか夜業の燈
夜 学    星座仰いでしばらく遊ぶ夜学哉
砧      湖ひろく今宵の砧きこゑけり