早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和六年九月 第十一巻三号 近詠 二

2021-06-14 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の 俳句「早春」昭和六年九月 第十一巻三号 近詠 二

   近詠
   花火を見る
ひと立ちて蛾を拂ひなど花火まつ

早打ちに三十玉や揚花火

大花火空を掴んで闇となる

山川にひろがる花火二尺玉

飲むものゝ瓶立て連れて花火筵

手花火にあそぶ花火の間かな

手花火に己れ照らされ歌妓のあり

卓に置く花火番付露しめり

旗亭の夜出て町ありく花火哉

花火の夜しまひになりぬ山と水

對岸や花火帰りの人の闇

古き書く隠の里の蚊火も夜   隠なばり

盆まへの夜は涼しや町飾る

天の川町見物のくたぶれし

   香落渓

宮涼し町出はなれの蝉の聲

夏川の次第にけはし杉たかし

かげ茂る辨天橋下鮎の水

青葉川乙鳥低くて岩奇なり

自転車に見過ぐむらさき露草歟

暴山に夏あらし見ゆ蝶の晝

秋近し渓瀬の夕の白さにも

淵水に合歓のおはりの花ほうけ

   小太郎落し巌
勝景が生む伝説や百合の花

網に賣る河鹿も渓の茶店かな

帰路の山せみせみ鳴いて雲暮れず