早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十一年十二月 第二十二巻六号 近詠 

2021-12-02 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十一年十二月 第二十二巻六号 近詠 

冬ざれの野に焚く煙いくところ

冬凪やめぐるに池照り曇り

野の乾き冬の雲雀の低うゆく

積藁にもたれて耳に飛機の消ゆ

返り花その英の涼しさよ

北風の雲が生むなる雲白し

  久々知廣清寺の近松忌に参りて
掛稲に晝の挑燈近松忌

冬紅葉の平安堂忌墓どころ

夜は寺に浮瑠璃ありて近松忌

干菜垣に碑の手紙讀むことながし

こち向いて鳰浮くたび沈むたび

闇汁の闇とはならず川明かり

夜を更かし居れば時雨のきほひ降る

我かげの壁に伸びしは風邪の神

編むほどの毛絲いつまでも袂から

短日の雲龍柳風を着る

  河内四條畷にて
山下りて菊にたつなり冬の人

山茶花の咲きたゞれたるは冬ぬくし

かれ櫻直ぐなる枝はにぎやかに

苜蓿海より吹いて風ひろし

苜蓿このみち町へ女往く

水門へ少しなだれて苜蓿

濤の空の明るさ鶴來る

鶴來る空に夢とも晝の月

山中に盤石平ら鶴來る

一帆の空鶴來る遅速かな

   早春社十一月本句會
露枯野ちかちかと日の昇りけり

石に居て枯野の露に眸を落とす

そゞろ寒納豆を飯にぬりつける

そゞろ寒柳細木のたれにけり

障子ぬち燈の動き去りそゞろ寒

   早春社阪急九月例會
陶の冷むるが土に秋の聲

丘となくありて夜の砂澄める哉

   早春社立春十月例會
草を來て門の夜寒が南禅寺

   早春社六月十月例會
山茶花や風呂のけむりの遠くなる