早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十二年一月 第二十三巻一号 近詠

2021-12-03 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十二年一月 第二十三巻一号 近詠
  
   皇紀二千五百九十七年 元旦

 田家雪
田の家の初影とこそ雪に伸ぶ

住み足ろう雪の田家の松かざり

いねつみてふかふか雪の田家

元旦のみちに日南を失はず

百船の舳を艫を初日影

あめつちを支うる柱初東風の

全山の梢や迎ふ初光り

初凪の街廣うその眞中往く

門松を湖へゆくほど深雪かな

山岡を一途年賀に參るかな

年賀状に句もなくなりし彼等なれ

初句會酔っては居れど破せつけん

大ほぺん吹いて金箔ひらひらす

正月や遠見柳の枯れ林

初鴉一雲なきを渡りけり

鶯馴れて初餌やる手をつゝきけり

冬椿紅千々と畳みける

猪のどた場涸れたる霜しろし

アパートの燈の窗賞興みな入りき

極月に稀有のぬくさ夜の蝿

確信す落葉を踏みてゆくうちに


   かたばみ
星明りかたばみ草の石に咲く

小さき風かたばみの花ほの紅に

   春の夢
春の夢見のこしてゐる海の果

春の夢明眸海とひろがりぬ

雲の穴またぎまたぎて春の夢

春の夢朱唇の中にめざめたり

   秋祭
夜となりて山おほいなり在まつり

秋まつり宿場すたれて見て通る

山みづの溝に走りて秋祭

  早春社十二月本句會
煤降って雨やみにけり冬の夕

冬の夕厨焚くけむり草の地を

川の水鉛とありて冬の夕

さまざまの年の暮れ見て夜番哉

燈に出でゝ老いさらしてる夜番哉

川岸に下りてゐいる燈の夜番哉

  早春社十一月例會 六橋観
ちり紅葉西見て居るにいつ暮れて

ちり紅葉打ちひろがりて汀かな

野明りに塀の紅葉のちりゆけり

  早春社立春十一月例會
一庵や鹿垣づたひ露ふかく

  山崎冬尊氏記念句會
寒山が拳ひらけば栗一つ