早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十二年二月 第二十三巻二号 近詠

2021-12-20 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十二年二月 第二十三巻二号 近詠

松すぎし白南天のこぼれかな

寒鳥田舎の空の久振り

家内中達者でみなが風邪ひいて

煮凝や鍋の底なる鰈二枚

消防車の遠き警笛橋に出づ

  難波の網曳
冬あたたかに百貫の縄籠となる

九頭の龍いまは尾を綯ふよいよいよい

  天王寺のどやどや
    どやどやに就く若者等の紅陣は先づ茶臼山堀越神社前に集ひ神酒を戴き神印を捺して貰ふ
背に腹に朱印べたべたすまひ取

どやどやや判捺されゐる酔ふた腹

篝火の點いてどやどや今が今

冬麗ら丘をひと筋路わたる

冬の日の塵を掃き込む穴ふかし

煤降りて空冬の雲とゞまれる

芒枯れて道のあるなり何處ゆく

水仙のもつれ離せば葉の素直

露西亜が着るラッコの帽子着慣れけり

霜白く荷車に橋の高くなり

橋欄や左右の帆柱冬の夜

寒天に高き燈ありて星のほか

鶯飼えばある日の聲が春近き







  早春社初本句會

  若潮
若潮の花咲き寄せて大あした

若潮につばさをさめて鳥浮きぬ

松の奥若潮闇に聲ありぬ

初かど出松いにしへに雪の降る

初戸出の空ふかふかと一碧に

初戸出の着きて渡るや神の橋

冬曇り落葉地をゆくおびたゞし
 
  近松忌俳句大會
近松忌さくら散る葉でうつくしき

  早春社無月十二月例會
凧澄みて藁家々々の初日かな

東方の空のかがやき今年哉

  早春社立春十二月例會
枯草の霰をためて夜に入るや