早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十六年十一月 第三十二巻五号 近詠 俳句

2022-09-01 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十六年十一月 第三十二巻五号 近詠 俳句

    近詠
秋いまと定り東山雲しろし

征地より夜寒むとありぬ天の川

盤石に立てば秋聲水にあり

桟庭の出水ふかきを秋日南

川欄を客のよろこぶ秋の雨

   眞田山付近(三句)
さわやかや幼なじみの丘のうへ

青北風や街ぬちながら眞田山

秋気澄む陸軍墓地の區の通り

聴けば鳴る我家の時計旦寒

赤蜻蛉こそと傾ぎし竿のさき

菊剪れば花にあつまる勢ひあり

草相撲國民儀禮おごそかに

砧盤年輪断ちて干割れたる

蝙蝠に大阪の水秋冷やか

卓の上の柿のはだえに夜のしづか

狛犬に海羸うたぬ子の跨りし

採るほどもなき零餘子なり桐を巻く

征きし兄の座に父が居て夜業かな 

止止呂美の鹿火屋をしのぶ霧今宵

  二葉山羽黒山の相撲を観る
秋光の注いで二葉羽黒組む

ゆく秋の徑にて石の焦げてゐる

  女郎花
女郎花多ければまた淋しけれ

  柾の花 まさき
小町して柾の垣の咲きつゞき

一住へ柾の花の坂のぼる

棲みもらす聲と柾の花白く

   早春社十月本句會  兼題「秋光」 席題「水澄む」
澄む水に合歓の葉先きが實なりけり

澄む水の縁を跨いでひゞきけり

澄む水の遠さ點々鳰

秋光やひと降りの雨笹原に